Q136 相続税の申告が必要かどうかを確認する方法は?

【Question】

父の遺産について、相続手続きを進めています。
遺産の内容は、父が住んでいた自宅と預貯金が主で、ほかに生命保険金を受け取っています。

相続税は相続発生から10ヶ月以内に申告しなければならない、ということは承知しています。
でも、「遺産の額が相続税の基礎控除額に達していなければ、そもそも相続税の申告は必要ない」ことも知っています。

そこで、相続税の申告が必要かどうかを自分で確認したいのですが、何か良い方法はないでしょうか。

 

【Answer】

まずは税務署や税理士事務所に相談してみると良いと思いますが、国税庁のホームページに『相続税の申告要否判定コーナー』というページが開設されましたので、これを利用してみる方法もあります。

 

 

【Reference】

2015年から、相続税の基礎控除額が引き下げられました(詳しくはQ046)。
そのため、今までであれば相続税がかからなかったけれども今後は相続税の課税対象となるという方が、特に大都市部を中心に増加すると見込まれています。

相続税の申告が必要になるくらい遺産が多いと、相続発生から10ヶ月以内に相続税の申告をしなければなりません。もしも期限内に申告・納付をしないと延滞税がかかるだけではなく、配偶者控除や小規模宅地の特例のように納税者に有利な控除・特例が利用できなくなるおそれがあります。

そこで、相続税の申告漏れがないように、国税庁・税務署は積極的に注意をうながしています。その一環として、国税庁ホームページの中に「相続税の申告要否判定コーナー」が開設されました(2015年5月11日現在、なぜか直接リンクを貼れないので、入り口のページはこちらです。入り口が変わったらごめんなさい)。

相続税申告で遺産総額をはじき出す際、土地の路線価を計算するところがなかなか厄介ですが、このコーナーでは単純なものであれば土地の路線価も計算してくれます。また、死亡保険金・死亡退職金の控除も自動計算です。

 

利用上の注意

このコーナーですが、相続税の税額は計算してくれません
相続税の税額は、遺産総額がわかれば自動的に税額が決まる、というものではないからです。遺産の分け方や各種控除・特例の組み合わせによって税額が大きく変わるので、遺産総額だけでは税額まで計算することができないのです。

「税額がわからないのでは意味がない」と感じる方も多いかもしれません。しかし、申告期限を過ぎてしまうと納税者側がかなり不利な取り扱いを受けるのは間違いありませんから、まず「相続税の申告が必要かどうか」をチェックするということが重要です。

また、当然のことながら、入力したものしか計算の対象になりませんから、入力を漏らしてしまえばそれまでです。「名義預金」「定期金に関する権利」なども故人の遺産には違いがありませんから、このコーナーの利用はあくまでも自己責任です。
不安があるならば、やはり専門家の助けを受けたほうが良いでしょう。

 

ちなみに当事務所でも『相続税課税判定ブック』という冊子を、前に作ってお客様に配布していたことがあります。
これは冊子なので計算機を使わなければなりませんが、コンセプトそのものは国税庁の『相続税の申告要否判定コーナー』と同じです。
当事務所の『相続税課税判定ブック』をプログラム化して、自動計算できるようにしようと考えていたのですが、どうやら国税庁に先を越されてしまいました。

 

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2015年5月11日 | カテゴリー :

Q051 相続税の計算方法パート2 相続税額の計算 2015年改定版

【Question】

Q050で、課税遺産総額の計算については、だいたい理解できました。

その後の相続税額の計算方法はどうなるのでしょうか?

 

【Answer】

Q050 相続税の計算パート1 課税遺産総額の計算』の続きです。

 

【Reference】

2.相続税の計算

(1)課税遺産総額を法定相続分どおりに按分(あんぶん:比例配分のこと)したものとして、それに税率を適用して、各法定相続人別に仮の相続税額を計算します。

(2)(1)の税額を合計したものが相続税の総額です。

(3)(2)の相続税の総額を、各相続人・受遺者・相続時精算課税制度を適用した人が実際に取得した正味の遺産額の割合に応じて按分します。

(4)(3)から配偶者の税額軽減のほか、各種の税額控除を差し引いて、各人が実際に納める税額を計算します。

 

相続税速算表(改正前)相続税速算表2015年改正

 

相続税の計算例(改正前)

 

  3.税額から控除されるものの例

(1)配偶者の税額軽減(配偶者控除)
配偶者(故人の夫・妻)が、遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額のうち、1億6,000万円までか、または配偶者の法定相続分相当額まで、どちらか多いほうまで配偶者について相続税はかかりません。

(2)未成年者控除
相続人が未成年者の場合には、20歳に達するまでの年数1年につき6万円(2015年1月1日以後の相続の場合は、1年につき10万円)が控除されます。

(3)障害者控除
相続人が障害者の場合には、次の控除があります。
(a)2014年12月31日までに発生した相続:
85歳に達するまでの年数1年につき6万円(特別障害者の場合は12万円)が控除されます。
(b)2015年1月1日以降に発生した相続:
85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)が控除されます。

(4)暦年課税に係る贈与税額控除
”正味の遺産額”に加算された「相続開始前3年以内の贈与財産」については、その価額に対しすでに納付済みの贈与税額が控除されます。

(5)相続時精算課税制度に係る贈与税額控除
”遺産総額”に加算された「相続時精算課税制度の適用を受ける贈与財産」の価額に対する、納付済みの贈与税額が控除されます。 なお、控除しきれない金額がある場合には、申告をすることにより還付を受けることができます。

 

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2015年1月8日 | カテゴリー :

Q050 相続税の計算方法パート1 課税遺産総額の計算 2015年改定版

【Question】

相続税額の計算方法は、相続人がそれぞれ実際に取得した財産に直接税率をかけるというような、単純なものではないと聞きました。

具体的にどのように計算するのでしょうか?

 

【Answer】

遺産相続で、実際に相続税の申告が必要になる方は決して多くはありませんし、申告するほどの相続財産があるような場合には、税理士に依頼するケースも多いでしょう。

しかし、相続税申告を税理士に依頼する場合でも、相続税の基本的な仕組みは理解しておく必要があるでしょう。
そこで、こちらでは”相続税”についての基本的な計算の方法を説明します。

一度にまとめて説明すると長くなるので、説明を2回に分けます。
このQ050で『課税遺産総額の計算』について、次のQ051で『相続税の計算』について説明します。

 

【Reference】

1.相続税の課税対象となる課税遺産総額の計算

(1)相続や遺贈(死因贈与を含む)によって取得した財産(遺産総額)の価額と、相続時精算課税の適用を受ける 財産の価額を合計します。
(宅地や建物の評価方法は、後日あらためて説明します)

(2)(1)から債務・葬式費用・非課税財産を差し引いて、遺産額を算出します。

(3)遺産額に相続開始前3年以内に暦年課税に係る贈与財産の価額を加算して、”正味の遺産額”を算出します。

(4)(3)の”正味の遺産額”から基礎控除額を差し引いて、”課税遺産総額”を算出します。
※”正味の遺産額”が基礎控除額を下回るなら、相続税はかかりません!

 

課税遺産総額の計算2015

課税遺産総額が計算できたら、相続税の計算をします。
計算方法については、『Q051 相続税の計算方法パート2 相続税額の計算』にお進みください。

 

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2015年1月8日 | カテゴリー :

Q046 どれくらい遺産があると相続税がかかるのか(基礎控除額)2015年改定版

【Question】

亡父の遺産を、私(長女)と弟の二人が相続します。
父の遺産は、預金800万円のほかに自宅(土地と建物)があるだけです。
自宅(土地建物)の時価は、不動産屋さんに聞いてみたら3,000万円くらいだろうと言われました。

不動産屋さんから、たぶん相続税はかからないだろうとも言われましたが、本当に税金はかからないのでしょうか。
また、税金がかからないとしても何か手続きをする必要はあるのでしょうか。

 

【Answer】

亡くなったお父様の遺産があなたのおっしゃるとおりだとすれば、相続税の基礎控除額の範囲内に納まっていると考えられますので、相続税はかかりません。
相続税の基礎控除額に納まっている場合には、手続きは何も必要ありません。

ただし、相続税の手続きが必要かどうかを確実に判断するためには、きちんと土地建物を評価する必要があります。
また、他に遺産がないかどうか(受け取った生命保険金などや生前贈与を受けた財産なども相続税の対象になることがあります)を確認し、あるならばその内容をきちんと確認することが大切です。

 

【Reference】

 

相続財産が基礎控除額以下なら、相続税は0円で手続きも不要

『相続税』の手続き(申告)が必要になるのは、故人が残した相続財産が、一定の金額(基礎控除額)を超える場合だけです。
逆の言い方をすれば、故人が残した相続財産が基礎控除額以下だと、相続税は0円であり、相続税の手続きは何もする必要がありません

相続税申告が必要なのは

さて、相続税の基礎控除額は以下のとおりです。
相続税の基礎控除額(改正前)相続税の基礎控除額(改正後)

2015年1月1日以降に発生した相続については、基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

 

ご相談の事例でいえば、法定相続人が姉弟お2人ということですから、基礎控除額は、

3,000万円プラス(600万円×2人)= 4,200万円

となります(2015年1月1日以降に亡くなった場合)。

遺産が預金800万円と自宅土地建物3,000万円のみならば、相続税の基礎控除額には届きませんので、相続税はかからず、相続税の手続き(申告)も不要です。
(相続税申告では、土地を路線価等の相続税評価額で評価します。相続税評価は普通は時価より低くなりますから、自宅土地建物が時価で3,000万円ならば、相続税評価はもっと低いでしょう)。

 

相続税の基礎控除額は、法定相続人が多いほど大きくなります。
そのため、故Aさんと故Bさんとで相続財産の価格が同じだったとしても、法定相続人が多い故Aさんのほうでは相続税がかからないのに、法定相続人が少ない故Bさんのほうでは相続税がかかる、ということが起こります。

 

『法定相続人の数』を数える場合の注意(養子縁組)

法定相続人とは、民法上、相続する権利がある人のことを指します。

法定相続人の数が多ければ多いほど相続税の基礎控除額が大きくなりますから、養子を増やせば相続税が節税できそうにも思えてしまいます(民法上、養子は実子と同じなので)。

しかし、このような節税を防ぐため、被相続人に養子がある場合には、『法定相続人の数』に含めることができる養子の数については、次のような制限が定めれれています。

被相続人に実子がある場合・・・1人だけ
被相続人に実子が無い場合・・・2人まで

たとえば、法定相続人が実子1名・養子2名の場合には、法定相続人は3名ですが、相続税の基礎控除額を計算するために『法定相続人の数』を数える場合には、「2人」と計算することになります。

 

『法定相続人の数』を数える場合の注意(家庭裁判所の相続放棄)

家庭裁判所で手続きをすることによって、相続手続きから完全に離脱できる制度があります(相続発生後の一定の期間に限ります)。
『(家庭裁判所の)相続放棄』と呼ばれる制度で、故人に財産より借金が多い場合などに多く使われますが、単に関わりを持ちたくないというような場合にも利用することができます。

この『相続放棄』をすると、「はじめから相続人ではなかったものとみなされる」ため、相続税の基礎控除額を計算するときに不利になってしまうのではないか、という心配があります。

この点について、結論的には心配は無用です。

相続税の基礎控除額を出す場合の『法定相続人の数』とは、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数のことをいいます(タックス・アンサーNo.4152)。そのため、相続人の中に相続放棄した人がいる場合でも、他の相続人が税法上不利になることはありませんので、ご安心ください。

 

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2015年1月8日 | カテゴリー :

Q124 相続税が2割加算される場合とは

【Question】

祖父が亡くなりましたが、本来ならば相続人となるはずであった父のほうが先に亡くなっているため、孫である私が父を代襲して相続人になりました。

孫は相続税が2割増しだと聞いたことがあるのですが、私のようなケースでも2割増しになってしまうのでしょうか。

 

【Answer】

孫や曾孫のことを直系卑属(ちょっけいひぞく)と言います。
被相続人の孫や曾孫、つまり直系卑属が代襲相続によって相続人となる場合には、2割加算の対象ではありません。

 

【Reference】

代襲相続人でない孫は、相続税が2割増し

相続や遺贈死因贈与を含む)によって被相続人の遺産を取得した人が、次のような人に該当しない場合には、その人の相続税額(各種税額控除前の税額)に2割増しした額が相続税額となります(相続税法18条)。

1)一親等の血族・・・子、父母

2)代襲して相続人となった被相続人の直系卑属・・・代襲相続人となった孫・曾孫

3)配偶者

 

通常、孫は相続人に当たりません。
しかし、本来は相続人であったはずの子のほうが被相続人よりも先に亡くなっている場合には、孫が相続人として登場します。つまり代襲相続人です。

孫が代襲相続人になるのは、親が先に亡くなってしまったという特殊事情によるわけですから、相続税額の割増しをしたら気の毒です。そこで、孫が親を代襲して相続人となる場合には、2割加算する必要はありません。

 

孫が相続税を2割加算されるケースとは

代襲相続以外にも、孫に相続税がかかりうるケースがあります。それは次のようなケースです。

a)孫が、被相続人から遺贈や死因贈与を受けた場合(Q047

b)孫が祖父母から生前贈与を受けていたが、その後3年以内に贈与者である祖父母が死亡した場合(Q058

c)孫が祖父母から相続時精算課税制度による生前贈与を受けていた場合(2015年1月1日以降は孫への贈与に適用拡大)

d)孫が被相続人の養子になっている場合(孫養子

 

このようなケースは、先に述べた代襲相続のケースと違って「やむを得ず相続税を納める立場になった」わけではありません。そのため、残念ながらお目こぼしは無く、相続税額を2割加算して納付しなければなりません。

なお、d)の孫養子は、縁組によって法律上は「一親等の血族」に当たるので2割加算にならないと誤解しがちです。
しかし、相続税法18条2項という条文で、「一親等の血族」には、被相続人の直系卑属である者であって、その被相続人の養子となっている者は含まない、とされています。相続税の基礎控除を増やすために孫を養子にするケースがある(Q046)ので、このような場合には2割加算を免除しない、とされているのです。

 

きょうだい、おい・めいは、2割加算される

被相続人に子がおらず、直系尊属もいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が第三順位の相続人として、被相続人の配偶者とともに相続人になります(Q003)。兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡している場合には、その子(被相続人から見て、おい・めい)が相続人の地位を代襲します。

この場合には、兄弟姉妹・おい・めいの相続税は、必ず2割加算になります。

 

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2014年9月12日 | カテゴリー :

Q065 相続財産から控除できる葬式費用とは

【Question】

私は、長男ということもあって、父の葬儀に際し喪主を務め、初七日忌・四十九日の法要も執り行いました。
これらに要した費用は、相続税の計算にあたっては相続財産から控除できますか。

 

【Answer】

基本的な考え方としては、お葬式に関する費用は控除できますが、法要に関する費用は控除できません。
また、香典返しの費用は控除できません。

 

【Reference】

葬式費用は、被相続人の債務ではありません(ご参考 Q036 葬儀費用は誰が負担するのか)。そのため、相続費用が遺産分割の対象となることはなく、遺留分を計算するときに債務として控除することもできません。

しかし、相続税の計算ではお目こぼしがあります。葬式費用は人が亡くなった場合には必ず発生する費用ですので、相続人が葬式費用を負担する場合には、債務控除と同様に相続財産から控除できるようになっています(注)。

(注)適用対象者が制限納税義務者の場合は、葬式費用の控除は認められない(相続税法13条2項)。

葬式の方法は地域の慣習や宗教によって大きな違いがあり、どこまで葬式費用と認められて相続財産から控除の対象になるかという線引きは難しいものがあります。そこで、以下のような取り扱いがなされています。

 

葬式費用となり控除できるもの

(1) 葬式もしくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい・遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式との両方を行うケースでは、その両方の費用)

(2) 葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用

(3) (1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの(御布施や戒名料などを指します)

(4) 死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用

※これらを控除するためには領収書があることが望ましいのですが、御布施にように領収書を発行してもらえないものについては、誰にいくら渡したのかを記したメモを残しておけば大丈夫です。

 

葬式費用とならず、控除できないもの

(1) 香典返戻費用

(2) 墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料

(3) 法会(初七日忌や四十九日など)に要する費用

(4) 医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用

なお、香典については課税されません。
(ご参考 Q035 お香典は遺産に含まれるの?

 

相続放棄者や相続欠格者が葬儀費用を負担した場合

債務控除の適用を受けることができるのは『相続人』と『包括受遺者』に限られています。 なぜなら、これらの人は相続分または包括遺贈の割合で被相続人の債務を負担することになるからです。

家庭裁判所で相続放棄の申述をした人や相続欠格者などは、はじめから相続人ではなかったという扱いになるので、被相続人の債務を承継することはなく、債務控除もありえません。

しかし、このような人たちも葬式費用を負担する可能性はあります。葬式費用は被相続人の債務ではないからです。

そこで、家庭裁判所で相続放棄の申述をした人等が葬儀費用を負担した場合には、その人が遺贈によって取得した財産があれば、その財産価額から債務控除することができます(相続税基本通達13-1)

 

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2014年2月20日 | カテゴリー :

Q064 相続財産から控除できる債務とは

【Question】

亡くなった父が死亡した年の所得について、先日、準確定申告を済ませて所得税を納付しました。
現在、父の遺産について遺産分割協議の準備をしているのですが、どうやら相続税の申告が必要になりそうです。

準確定申告によって納めた所得税が、生前の父の収入に対して納めるべきものであるとすれば、納めた所得税額は相続税の課税対象から控除されるような気がするのですが、どうなのでしょうか。

 

【Answer】

そのとおりです。準確定申告によって納付した所得税額は、相続財産から控除できます。

 

【Reference】

第1 相続財産から控除できる債務とは

1.原則

借入金や未払い金などのことを『債務』といいます。
日本の相続制度では、プラスの相続財産だけでなく、債務のようなマイナスの相続財産も相続人に承継されます(Q015)。

そうなると、相続税を計算するうえでも、その点を考慮しなければ釣り合わなくなります。
そこで、相続人等が相続や遺贈で取得した財産の価額から、負担する債務の額を控除することになっています。これが『債務控除』です。

一般的な相続の場合、相続財産から控除できる債務や葬式費用の範囲は下記の2つです(相続税法13条)。

(a)被相続人の債務で相続開始時において存在するもの(公租公課を含む。)
(b)被相続人の葬儀に係る費用

今回は(a)の相続債務について触れます。

ご参考:Q016 ローンなどの金銭債務は遺産分割協議で分けられる?

 

2.未納の税金(公租公課)

被相続人の死亡の時点で納めなければならないことが確定している税(公租公課)は、相続財産から控除されます。
さらに、被相続人の死亡後に相続人が納付したり徴収されたりすることとなった被相続人の公租公課も、控除対象になります(相続税法14条2項、相続税法施行令3条)。

そのため、今回のご質問のように、被相続人の死亡した年の所得について行う準確定申告によって納付する所得税は、相続税の債務控除の対象になります。

また、住民税や固定資産税・自動車税等は、1月1日時点(賦課期日という)での住民登録がある方や所有者を対象として課せられますので、納税義務者がその後に死亡して相続が発生した場合、その年の住民税等は、未納の公租公課として相続税の債務控除の対象になりますのでご注意ください。

 

3.金額がはっきりしない被相続人の債務は?

相続開始時において存在する被相続人の債務は控除できますが、それは確実と認められるものに限ります(相続税法14条1項)。

ただし、債務が確実かどうかについては、必ずしも書面の証拠は必要ありません。
また、債務の金額が確定していない場合には、相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額についてだけ控除することができます(相続税基本通達14-1)

 

4.連帯債務について

連帯債務とは、たとえば、1,000万円の連帯債務をAとBの2名が負っていたとします。
この場合、債権者はAにもBにも1,000万円全額を請求することができ、AまたはBのどちらかが1,000万円支払えば債務は消滅します。
ここでAが1,000万円支払った場合、AはBに一定の金額を支払うよう求めることができ、これを『負担部分』と言います。負担部分は、AとBの間で取り決めが無ければ平等の割合になりますので、AはBに対し「1,000万円払っておいたから、君の負担部分である500万円をよこしなさい」と言えるわけです(『求償』と言います)。

もしも相続財産に連帯債務がある場合、まずはこの『負担部分』が債務控除の対象になります。
1,000万円の連帯債務をAとBの2名が負っていて、Aが死亡した場合には、相続人はAの負担部分500万円を相続財産から控除することができます。

しかし、Bに資力が無く支払い不能の状態で、Bに求償しても支払いを受ける見込みがなく、Aが事実上Bの負担部分をも負担しなければならないと認められる場合に限っては、Bの負担部分500万円についても控除することができます。

なお、連帯『債務』と言葉は似ていますが、連帯『保証』の場合は保証債務ですので、次の第2の1の取り扱いになります。

 

第2 相続財産から控除できない債務とは

1.保証債務

保証債務は、原則として控除できません。支払うことが確定していないからです。

ただし、主たる債務者が弁済不能であるために保証債務者が代わって債務を履行し、主たる債務者に求償しても返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額については控除することができます(同通達14-3)

ご参考:Q018 保証人の立場は相続されるのか(保証債務と相続)

 

2.消滅時効の完成した債務

相続開始時点(被相続人の死亡時点)で、すでに消滅時効の完成(時効期間経過)した債務は、控除できません(同通達14-4)。
消滅時効が「完成」した債務については、債務者が時効を「援用」することによって消滅させることができるためです(民法145条)。債務者が死亡していればその相続人が時効を 援用します。

 

3.非課税財産を取得するための借入金や未払い金について

被相続人が生前に墓碑を買い入れ、その代金が未払いであるような場合の未払い金債務や、被相続人が生前に墓地や仏壇・仏具を購入するため、金銭を借りた場合の借入金債務については、相続税の債務控除の対象にはなりません(相続税法13条3項、相続税基本通達13-6)。
墓碑や墓地、仏壇・仏具が非課税財産(Q053)として課税されないのに、それを購入するための借入金等が債務として控除されるのでは、おかしくなってしまうからです。

 

4.相続財産に関する費用

被相続人の死亡から、遺産分割協議等によって財産を引き継ぐ人が決まるまでの間、相続財産を維持・管理するにはさまざまな費用がかかります。たとえば、不動産なら固定資産税や火災保険料がかかります。

相続財産の維持・管理に関する費用は、法律上は遺産の中から支出することになっています(民法885条。ご参考 Q034 遺産の管理や清算のためにかかった諸費用はどうするか)。

しかし、この費用は、相続開始時に存在していた債務ではなく、相続が開始した後に発生するものです。そのため、相続財産の維持・管理に関する費用は、相続税の控除対象にはなりません(相続税基本通達13-2)。
遺言の執行に関する費用(民法1021条)についても同様に考えられます。

 

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2014年2月18日 | カテゴリー :

Q063 退職金を年金形式で受給中に、相続が発生したら?

【Question】

夫が会社を退職するときに、退職金2,000万円のうち半分の1,000万円を一時金で受けとり、残りの半分の1,000万円を10年間の年金形式で受けとることにしていました。

夫はこの年金を5年間受けとりましたが、先日死亡しました。
残りの5年分の年金は遺族である私が受け取ることになりますが、これは相続税の対象になるのでしょうか。
なお、一時金は退職所得として、受け取り済みの年金は雑所得として、それぞれ申告済みです。

 

【Answer】

あなたが受け取ることになる退職年金は『契約に基づかない定期金に関する権利』であり、みなし相続財産として相続税の課税対象になります(相続税法3条1項6号)。

なお、今後あなたに支給される退職年金は、所得税が非課税になります(所得税法9条1項3号ロ、所得税基本通達9-2)。

 

【Reference】

退職年金も相続税の課税対象

企業年金制度のある会社では、退職金の一部を年金形式にして受け取ることができます(いわゆる『退職年金』)。
また、公務員の共済年金の職域部分は、現行では公的年金たる共済年金の一角として支給されていますが、今後は職域部分が廃止され『年金払い退職給付』への移行が予定されており、こちらは退職金の一部を年金形式で受け取るという点で企業年金と似た制度になっていくようです。

さて、このような退職年金を受け取っている人が亡くなった場合、遺族(継続受取人)がこれを引き継ぐことになります。
退職年金を受給する権利は財産的価値がありますから、みなし相続財産として相続税の課税対象になるのです。

 

退職年金は定期金に関する権利として評価される

退職年金を受けている人が死亡したら、故人の相続人等が退職年金を継続して受けることとなり、その年金を受給する権利は、その継続受取人となった遺族が相続又は遺贈により取得したものとみなされます(相続税基本通達3-29、相続税法3条1項6号『契約に基づかない定期金に関する権利』)。

そして、この退職年金を受給する権利は、『定期金に関する権利』として評価します。
具体的には、その評価方法はQ060 定期金に関する権利の評価方法となります。今回のご相談では有期定期金として評価することになります。

このようにして定期金として評価した額と、その他の相続財産の価額を合算した結果、相続税の基礎控除を上回る場合には相続税申告が必要になります。

なお、死亡退職金にある「500万円×法定相続人」の非課税枠は適用されませんのでご注意ください。

 

遺族に支給される退職年金は雑所得にはならない

なお、遺族に支給される退職年金は、雑所得とならず、所得税が非課税になります(所得税法9条1項3号ロ、所得税基本通達9-2)。

 

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2014年2月14日 | カテゴリー :

Q062 個人年金の受給開始後に、被保険者や受取人が死亡した場合の課税は?

【Question】

個人年金保険の年金を受給していた夫が亡くなりました。

65歳から年金支給が開始される10年確定年金で、3年分を受け取った時点で死亡しました。
保険契約者=被保険者=年金受取人はいずれも夫でした。なお、継続受取人は妻である私に指定されています。

この年金についての税金はどうなるのでしょうか。
また、年金形式で受け取る場合と一時金で受け取る場合とで、違いはあるのでしょうか?

 

【Answer】

10年確定年金とのことですので、あなたはあと7年間分の年金を受け取る権利を得たことになります。

まず、継続受取人の指定があれば、民法上は、一般の死亡保険と同じく本来の相続財産には含まれず、遺産分割の対象にならないと考えられます。

 

次に税金の点ですが、年金形式で受け取るか一時金で受け取るかによって違いがあります。

年金で受け取る場合には、最初にご主人が亡くなった時点で、「年金受給権の評価額」が相続財産とみなされて、他の相続財産とともに相続税の対象になります(Q060 定期金に関する権利の評価方法)。ただし、死亡保険金にある「500万円×法定相続人」の非課税枠は適用されません
さらに、年金形式で受け取ると、毎年受け取る年金の一部が雑所得として所得税の課税対象になります。雑所得は総合課税ですから、受取人の住民税や国民健康保険料等に影響が及びます。
いっぽう、受け取ることができる総額は、一時金受け取りの場合よりも増えます(利息相当額が上乗せされるので)。

これに対し一時金で受け取った場合には、受け取った一時金が相続財産とみなされて、他の相続財産とともに相続税の対象になります。こちらの場合も、死亡保険金にある「500万円×法定相続人」の非課税枠は適用されません。
課税については相続税だけで完結しますが、受け取ることができる総額は年金形式の場合よりも少なくなります。

 

 

【Reference】

 

個人年金保険の特徴

個人年金保険は、公的年金に加えて老後の生活資金を確保するために利用され、被保険者が契約時に定めた年齢に到達すると年金を受け取ることができる生命保険商品です。

運用の成果にかかわらず支給される「基本年金」に加え、支給開始前の積立配当金によって増額される「増額年金」を受け取ります。支給開始後にも配当金がある場合には、「増加年金」を受け取ることができる場合もあります。

個人年金保険には、保険金を受け取ることができる期間によって、以下のようなものがあります。

(a)終身年金

年金受給開始後、被保険者が生存している限り受給できる年金。
被保険者が死亡した場合には契約は終了し、遺族等に対し支給されるものは無い。

(b)保証期間付き終身年金

基本的には終身年金fだが、年金受給開始後の一定期間は、被保険者が死亡しても年金を受け取れることを保証した年金。
被保険者が死亡した場合、契約で定めていた継続受取人が年金形式または一時金で受け取るものが多い。

(c)確定年金

被保険者の生死にかかわらず、一定期間受給できる年金。
被保険者が死亡した場合、契約で定めていた継続受取人が年金形式または一時金で受け取るものが多い。

(d)有期年金

年金受給開始後、被保険者が生存していることを条件に、一定期間受給できる年金。
被保険者が死亡した場合には契約は終了し、遺族等に対し支給されるものは無い。

(e)保証期間付き有期年金

基本的には有期年金だが、年金受給開始後の一定期間は、被保険者が死亡しても年金を受け取れることを保証した年金。
被保険者が死亡した場合、契約で定めていた継続受取人が年金形式または一時金で受け取るものが多い。

 

(派生商品として「変額個人年金保険」という商品もあり、これは保険会社が保険金を株式や債券などで運用し、その運用結果によって年金額が決まる商品です。投資リスクがあり、保険料も通常は一時払いになっています。)

ここから、代表的な事例で課税関係を見ていきます。
贈与税がかかってくるようなパターンもありますが、事例としては少ないと思いますので割愛しています。

 

 

第1 『契約者=被保険者=受取人』が死亡した場合の課税関係

年金保険と相続1

今回のご質問のケースです。夫Aが契約者となって保険料を負担し、被保険者である夫Aが受給年齢に達したため年金を受給していたところ、亡くなってしまったという場合です。

この場合、上記(a)~(e)のうち、(a)終身保険と(d)有期保険は、被保険者である夫Aの死亡によって終了してしまいます。
そこで、課税の問題が生じるのは(b)保証期間付き終身年金、(c)確定年金、(e)保証期間付き有期年金で、期間が完了していないものが課税の対象になります。

 

1.年金形式で受け取る場合

(1)相続時

妻Bが残りの期間にわたって年金を受給することができます。
「妻Bが残りの期間、年金を受け取る権利」、すなわち夫Aが亡くなった時点での「年金受給権の評価額」が相続財産とみなされて、他の相続財産とともに相続税の対象になります(相続税法3条1項5号)。
(b)(c)(e)のどの商品でも残りの期間は確定していますので、Q060 定期金に関する権利の評価方法のうち、第1(1)の「有期定期金の場合」で評価します。

ただし、死亡保険金にある「500万円×法定相続人」の非課税枠は適用されません(相続税法3条1項1号の死亡保険金は、同法12条1項5号によって一定額が非課税とされている。これに対し個人年金保険の年金受給権は同法3条1項5号の定期金に関する権利であり、これに対応する非課税規定は存在しない)。

 

(2)年金受給時

雑所得として所得税の対象になります。
(注:国民年金・厚生年金・共済年金など公的年金の遺族年金は非課税です)

以前は年金形式で受け取った保険金について、各年の年金収入全額が所得税の課税対象でした。 しかし、平成22年7月6日の最高裁で「相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象とならない」という判決が出て大きなニュースとなり、これを受けて平成22年10月から国税庁も取り扱いを変更しました。すなわち、相続税または贈与税と、所得税は「二重に課税の対象としない」ということになったのです。

この取り扱い変更により、年金形式で受け取る保険金については、所得税の課税部分と非課税部分に振り分けたうえで、課税部分の所得金額だけが所得税・住民税の課税対象となります。

年金受け取りの1年目は全額非課税とし、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法によって計算しますが、具体的には国税庁のホームページをご参照ください(国税庁 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係)。

 

2.一時金で受け取る場合

一時金で受け取った場合には、受け取った一時金が相続財産とみなされて、他の相続財産とともに相続税の対象になります(相続税法3条1項5号)。こちらの場合も、死亡保険金にある「500万円×法定相続人」の非課税枠は適用されません。

 

 

第2 『契約者=受取人(被保険者が異なる)』で、被保険者が死亡したとき

年金保険と相続2

こちらも、(a)終身保険と(d)有期保険は、被保険者である妻Bの死亡によって終了してしまいます。
前記第1と同様に、課税の問題が生じるのは(b)保証期間付き終身年金、(c)確定年金、(e)保証期間付き有期年金で、期間が完了していないものが課税の対象になります。

 

1.年金形式で受け取る場合

(1)相続時

妻Bが亡くなっても、夫Aの年金受給に関する権利は誰にも移動しませんから、被保険者Bの死亡時には何も課税はありません。

(2)年金受給時

雑所得として所得税の対象になります (注:国民年金・厚生年金・共済年金など公的年金の遺族年金は非課税です).

 

2.一時金で受け取る場合

一時金で受け取った場合、一時所得として所得税の対象になります。

 

 

第3 『契約者=受取人(被保険者が異なる)』で、受取人が死亡したとき

年金保険と相続3

たとえばAさんが「妻Bさんが65歳になったら年金を受け取れる」という個人年金保険に加入していて、それをAさんが受給していたところ、Aさんが亡くなってしまい、妻Bさんが継続受取人になっていたというケースです。

被保険者である妻のBさんは健在ですから、支給期間中ならば、(a)~(e)すべてのタイプにおいて課税の問題が生じます。

 

1.年金形式で受け取る場合

(1)相続時

妻Bが引き続き年金を受給することができます。
「妻Bが年金を受け取る権利」、すなわち夫Aが亡くなった時点での「年金受給権の評価額」が相続財産とみなされて、他の相続財産とともに相続税の対象になります(相続税法3条1項5号)。Q060 定期金に関する権利の評価方法のうち、各商品にあてはまる評価方法で評価します。

ただし、死亡保険金にある「500万円×法定相続人」の非課税枠は適用されません(相続税法3条1項1号の死亡保険金は、同法12条1項5号によって一定額が非課税とされている。これに対し個人年金保険の年金受給権は同法3条1項5号の定期金に関する権利であり、これに対応する非課税規定は存在しない)。

 

(2)年金受給時

雑所得として所得税の対象になります。
(注:国民年金・厚生年金・共済年金など公的年金の遺族年金は非課税です)

以前は年金形式で受け取った保険金について、各年の年金収入全額が所得税の課税対象でした。 しかし、平成22年7月6日の最高裁で「相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象とならない」という判決が出て大きなニュースとなり、これを受けて平成22年10月から国税庁も取り扱いを変更しました。すなわち、相続税または贈与税と、所得税は「二重に課税の対象としない」ということになったのです。

この取り扱い変更により、年金形式で受け取る保険金については、所得税の課税部分と非課税部分に振り分けたうえで、課税部分の所得金額だけが所得税・住民税の課税対象となります。

年金受け取りの1年目は全額非課税とし、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法によって計算しますが、具体的には国税庁のホームページをご参照ください(国税庁 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係)。

 

2.一時金で受け取る場合

一時金で受け取った場合には、受け取った一時金が相続財産とみなされて、他の相続財産とともに相続税の対象になります(相続税法3条1項5号)。こちらの場合も、死亡保険金にある「500万円×法定相続人」の非課税枠は適用されません。

 

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2014年2月12日 | カテゴリー :

Q061 保険金を年金形式で受給した場合の税金(収入保障保険を例として)

【Question】

父が亡くなり、父が加入していた収入保障保険の死亡保険金を受け取ることになりました(保険料負担者=被保険者:父)。

保険会社の説明では、収入保障保険の保険金は保険期間が満了するまで年金形式で受け取るのが通常ですが、一括受け取りにすることもでき、ただし一括受け取りの場合には、年金受け取りの場合よりも受取総額が少なくなるということでした。

年金受け取りと一括受け取りと、どちらが得なのでしょうか。

 

【Answer】

収入保障保険も生命保険契約のひとつに違いはありません。
あなたの場合は、保険料負担者=被保険者:父、保険金受取人:子、ということですから、受け取った保険金は相続税の対象となり、一定の非課税枠があります(Q054)。これは年金受け取りでも一括受け取りでも、違いはありません。

収入保障保険の保険金を一括で受け取る場合、課税については相続税だけで済みますが、受け取ることができる保険金総額は年金形式の場合よりも少なくなります。

反対に、収入保障保険の保険金を年金形式で受け取る場合、将来受け取ることになる年金については相続開始時点での年金受給権評価に対し相続税がかかる他、毎年受け取る年金は雑所得となり、一定のルールに従って所得税がかかります。雑所得は総合課税ですから、受取人の住民税や国民健康保険料等に影響が及びます。
いっぽう、受け取ることができる保険金総額は、一括受け取りの場合よりも増えます(利息相当額が上乗せされるので)。

一括で受け取るか年金で受け取るかについては、どちらが得かはケース・バイ・ケースです。 また、どちらがより望ましいかという点についても、お考え方は人それぞれだと思います。 ただし一般的には、受取人の方が他にも所得があって所得税率が高い等、受取人の所得を増やすことが望ましくない場合には、一括受け取りを選択することが有利にはなります。

 

【Reference】

 

収入保障保険の特徴

収入保障保険は、毎年、保障金額が自動的に減少していくタイプの生命保険商品です。

一般の家庭では、子供が小さいうちは万一に備えて大きな保障が必要ですが、子供が成長していくにつれ、保障金額は少なくても済むようになっていきます。

生命保険の代表的な商品である定期保険だと、保険期間中は保障金額が変わりません。定期保険では、保障金額をライフステージにあわせて引き下げるには、そのための手続きが必要です。 その点で、ライフステージにあわせて保障金額が自動的に下がっていく収入保障保険は、とても合理的な保険であるといえます。

収入保障保険は定期保険の進化型であると言われ、原則として掛け捨てである点など、定期保険との共通点が多くあります。

しかし保険金を受け取る際には、大きく違いが出ます。 定期保険では原則として一括受け取りであり、特約がある場合など保険会社によっては例外的に年金受け取りにすることができます。
これに対し収入保障保険では、家庭の収入減を補うという意味が強いため年金受け取りが基本です。もっとも受取人が望めば一括受け取りにすることも可能です。

 

収入保障保険の死亡保険金を一括受け取りにした場合の課税

収入保障保険の保険金を一括で受給した場合は、一般の生命保険とまったく変わりありませんので、受給した一時金に対し、契約形態によって相続税または所得税(一時所得)もしくは贈与税がかかります。詳しくは「Q054 死亡保険金にかかる税とは?」をご覧ください。

 

収入保障保険の死亡保険金を年金受け取りにした場合の課税

死亡時の課税と年金受給時の課税を別々に考えます。

第1 死亡時の課税

(1)契約者と被保険者が同一人の場合

相続税がかかる、という点は一括受け取りの場合と同じ。
受取人が相続人であれば「500万円×法定相続人の数」を限度として非課税となる点も同じ。
ただし、年金として受け取る保険金については、死亡時における年金受給権評価額Q060 定期金に関する権利の評価方法)で評価します。

 

(2)契約者と受取人が同一人の場合(被保険者が違う)

被保険者の死亡によって保険金支払い事由が発生しただけで、年金受給権に関する権利は誰にも移動しませんから、被保険者の死亡時には何も課税はありません。

 

(3)契約者・被保険者・受取人がそれぞれ別人の場合

贈与税がかかる、という点は一括受け取りの場合と同じ。
ただし、年金として受け取る保険金については、死亡時における年金受給権評価額Q060 定期金に関する権利の評価方法)で評価します。

 

第2 年金受給時の課税

雑所得として所得税の対象になります。
(注:国民年金・厚生年金・共済年金など公的年金の遺族年金は非課税です)

以前は年金形式で受け取った保険金について、各年の年金収入全額が所得税の課税対象でした。
しかし、平成22年7月6日の最高裁で「相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象とならない」という判決が出て大きなニュースとなり、これを受けて平成22年10月から国税庁も取り扱いを変更しました。すなわち、相続税または贈与税と、所得税は「二重に課税の対象としない」ということになったのです。

この取り扱い変更により、年金形式で受け取る保険金については、所得税の課税部分と非課税部分に振り分けたうえで、課税部分の所得金額だけが所得税・住民税の課税対象となります。

年金受け取りの1年目は全額非課税とし、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法によって計算しますが、具体的には国税庁のホームページをご参照ください(国税庁 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係)。

 

一般の死亡保険金を年金受け取りにする場合の注意

定期保険や終身保険については、ここまで述べてきた収入保障保険と異なり、一括受け取りが原則です。
もしも契約者が生前に年金受け取り特約を申し込んでおけば、課税形態は上記の収入保障保険と同じです。

しかし、死亡日以降になってから受取人側から年金受け取りにしたいと申し出た場合には、死亡日にいったん死亡保険金が支給されたのと同じ扱いになり、「死亡保険金額」に対して相続税または贈与税が課される(定期金による評価減を受けることができない)ので、ご注意ください。
年金受給時にも雑所得として所得税の対象になりますが、所得税を計算する際の必要経費は、死亡保険金をもとに計算します。

 

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2014年2月10日 | カテゴリー :