Q053 相続税がかからない財産とは(非課税財産)

【Question】

私の知り合いが「お墓や仏壇仏具には相続税がかからないから、相続税対策として純金製の仏像を買おうと思う」と話していました。本当に相続税対策になるのでしょうか。

 

【Answer】

墓地や墓石・仏壇仏具等は、相続税の非課税財産です。

墓地や墓石は、特に都市部では高額になることが多く、生前に購入しておくと相続税対策になります。
反対に、亡くなった後に『相続人が』墓地や仏壇などを購入すると、その相続人自身の財産となるため、相続税の計算ではまったく考慮してもらえません。

ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるようなもの(お金に替えられるようなもの)は、相続税の課税対象となります。
純金製の仏像などはお金に替えられますから、相続税対策にはならないと考えられます。

 

【Reference】

相続税は、原則として、相続人が被相続人から相続または遺贈(死因贈与を含む)により取得したすべての財産に対してかかります。
しかし、中には国民感情や政策的な配慮から、一定の財産については相続税の課税対象から除外されることになっています。

たとえば墓地や仏壇などには相続税がかかりません。これらは祖先を敬うために必要な財産であってお金に替えることができるものではありませんから、これに課税するとなれば大きな反発が予想されます。そこで、たとえ高額なものであっても相続税は課税されません。

ただし、商品として売るために購入したものや、投資の対象として持っていた場合には、相続税の課税対象になります。これらは祖先を敬うためのものではなくお金に替えることも可能だからです。

 

1.非課税財産の具体例

相続税がかからない財産のうち主なものは次のとおりです。

(1)墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。

(2)宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの

(3)地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利

(4)相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分(詳細別途)

(5)相続や遺贈によってもらったとみなされる退職手当金等のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分(詳細別途)

(6)個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
(相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります)

(7)相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によってもらった金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

 

2.庭内神し(ていないしんし・庭内神祠)の敷地について

相続税の非課税財産について、比較的最近話題になったのが、『庭内神し』の敷地についての平成24年6月21日東京地裁判決です。

『庭内神し』とは、屋敷内にある神の社や祠などでご神体を祀り、日常的に礼拝されているものをいいます。
時折、自宅の庭や敷地の一部でお地蔵さんやお稲荷さんをお祀りしているのを見かけますが、そのことです。
広く地域に根付いているものばかりではなく、特定の者・家族だけがお祀りしている場合も含まれます。

庭内神しそれ自体は、以前から相続税の非課税財産でした(相続税基本通達12-2)。
しかし移動可能な庭内神しも少なくありませんので、庭内神しの”敷地”については原則として相続税は非課税になりませんでした。

これが上記の東京地裁判決で国側が敗訴して控訴せず確定したため、税務上の取り扱いが変更されました。
つまり、一定の条件下で、庭内神しの敷地や附属設備も相続税の非課税財産とされました。

一定の条件とは、以下のとおりです。
1.『庭内神し』の設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形
2.その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的
3.現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能の面
上記3点を踏まえた上で、その設備及び附属設備等の機能の面から、その設備と社会通念上一体のものとして日常礼拝の対象とされているといってよい程度の密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備である場合

この場合に初めて、庭内神しの敷地や附属設備も非課税になります。
今後、相続税対策として流行するかもしれません?が、適用は限定的ですのでご注意ください。

 
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2014年1月21日 | カテゴリー :