Q061 保険金を年金形式で受給した場合の税金(収入保障保険を例として)

【Question】

父が亡くなり、父が加入していた収入保障保険の死亡保険金を受け取ることになりました(保険料負担者=被保険者:父)。

保険会社の説明では、収入保障保険の保険金は保険期間が満了するまで年金形式で受け取るのが通常ですが、一括受け取りにすることもでき、ただし一括受け取りの場合には、年金受け取りの場合よりも受取総額が少なくなるということでした。

年金受け取りと一括受け取りと、どちらが得なのでしょうか。

 

【Answer】

収入保障保険も生命保険契約のひとつに違いはありません。
あなたの場合は、保険料負担者=被保険者:父、保険金受取人:子、ということですから、受け取った保険金は相続税の対象となり、一定の非課税枠があります(Q054)。これは年金受け取りでも一括受け取りでも、違いはありません。

収入保障保険の保険金を一括で受け取る場合、課税については相続税だけで済みますが、受け取ることができる保険金総額は年金形式の場合よりも少なくなります。

反対に、収入保障保険の保険金を年金形式で受け取る場合、将来受け取ることになる年金については相続開始時点での年金受給権評価に対し相続税がかかる他、毎年受け取る年金は雑所得となり、一定のルールに従って所得税がかかります。雑所得は総合課税ですから、受取人の住民税や国民健康保険料等に影響が及びます。
いっぽう、受け取ることができる保険金総額は、一括受け取りの場合よりも増えます(利息相当額が上乗せされるので)。

一括で受け取るか年金で受け取るかについては、どちらが得かはケース・バイ・ケースです。 また、どちらがより望ましいかという点についても、お考え方は人それぞれだと思います。 ただし一般的には、受取人の方が他にも所得があって所得税率が高い等、受取人の所得を増やすことが望ましくない場合には、一括受け取りを選択することが有利にはなります。

 

【Reference】

 

収入保障保険の特徴

収入保障保険は、毎年、保障金額が自動的に減少していくタイプの生命保険商品です。

一般の家庭では、子供が小さいうちは万一に備えて大きな保障が必要ですが、子供が成長していくにつれ、保障金額は少なくても済むようになっていきます。

生命保険の代表的な商品である定期保険だと、保険期間中は保障金額が変わりません。定期保険では、保障金額をライフステージにあわせて引き下げるには、そのための手続きが必要です。 その点で、ライフステージにあわせて保障金額が自動的に下がっていく収入保障保険は、とても合理的な保険であるといえます。

収入保障保険は定期保険の進化型であると言われ、原則として掛け捨てである点など、定期保険との共通点が多くあります。

しかし保険金を受け取る際には、大きく違いが出ます。 定期保険では原則として一括受け取りであり、特約がある場合など保険会社によっては例外的に年金受け取りにすることができます。
これに対し収入保障保険では、家庭の収入減を補うという意味が強いため年金受け取りが基本です。もっとも受取人が望めば一括受け取りにすることも可能です。

 

収入保障保険の死亡保険金を一括受け取りにした場合の課税

収入保障保険の保険金を一括で受給した場合は、一般の生命保険とまったく変わりありませんので、受給した一時金に対し、契約形態によって相続税または所得税(一時所得)もしくは贈与税がかかります。詳しくは「Q054 死亡保険金にかかる税とは?」をご覧ください。

 

収入保障保険の死亡保険金を年金受け取りにした場合の課税

死亡時の課税と年金受給時の課税を別々に考えます。

第1 死亡時の課税

(1)契約者と被保険者が同一人の場合

相続税がかかる、という点は一括受け取りの場合と同じ。
受取人が相続人であれば「500万円×法定相続人の数」を限度として非課税となる点も同じ。
ただし、年金として受け取る保険金については、死亡時における年金受給権評価額Q060 定期金に関する権利の評価方法)で評価します。

 

(2)契約者と受取人が同一人の場合(被保険者が違う)

被保険者の死亡によって保険金支払い事由が発生しただけで、年金受給権に関する権利は誰にも移動しませんから、被保険者の死亡時には何も課税はありません。

 

(3)契約者・被保険者・受取人がそれぞれ別人の場合

贈与税がかかる、という点は一括受け取りの場合と同じ。
ただし、年金として受け取る保険金については、死亡時における年金受給権評価額Q060 定期金に関する権利の評価方法)で評価します。

 

第2 年金受給時の課税

雑所得として所得税の対象になります。
(注:国民年金・厚生年金・共済年金など公的年金の遺族年金は非課税です)

以前は年金形式で受け取った保険金について、各年の年金収入全額が所得税の課税対象でした。
しかし、平成22年7月6日の最高裁で「相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象とならない」という判決が出て大きなニュースとなり、これを受けて平成22年10月から国税庁も取り扱いを変更しました。すなわち、相続税または贈与税と、所得税は「二重に課税の対象としない」ということになったのです。

この取り扱い変更により、年金形式で受け取る保険金については、所得税の課税部分と非課税部分に振り分けたうえで、課税部分の所得金額だけが所得税・住民税の課税対象となります。

年金受け取りの1年目は全額非課税とし、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法によって計算しますが、具体的には国税庁のホームページをご参照ください(国税庁 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係)。

 

一般の死亡保険金を年金受け取りにする場合の注意

定期保険や終身保険については、ここまで述べてきた収入保障保険と異なり、一括受け取りが原則です。
もしも契約者が生前に年金受け取り特約を申し込んでおけば、課税形態は上記の収入保障保険と同じです。

しかし、死亡日以降になってから受取人側から年金受け取りにしたいと申し出た場合には、死亡日にいったん死亡保険金が支給されたのと同じ扱いになり、「死亡保険金額」に対して相続税または贈与税が課される(定期金による評価減を受けることができない)ので、ご注意ください。
年金受給時にも雑所得として所得税の対象になりますが、所得税を計算する際の必要経費は、死亡保険金をもとに計算します。

 

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2014年2月10日 | カテゴリー :