Q015 借金も相続財産になるのか

Q 2ヶ月前に父が亡くなりました。
父にはこれといった遺産もなく、特に相続のことは気にしていなかったのですが、昨夜兄から電話があり、カードローンの残高が300万円あるので兄弟2人で150万円ずつ支払わなければならない、と言われました。これは本当ですか?

 

A お兄様が話したことは本当です。借金も相続財産になり、ご兄弟でそれぞれ150万円ずつ支払う義務があります。
もっとも、あなた方の場合は家庭裁判所で『相続放棄』の手続きをすることによって支払いを免れることができそうです。

借金も相続財産になる

遺産のことを相続財産ともいいますが、相続”財産”という言葉からは現金や不動産、預貯金などが連想され、借金のようなものは含まれないと思われるかもしれません。
しかし、日本の民法では、『相続』とは被相続人の財産に属する一切の権利義務を承継することをいいます(被相続人の一身に専属するものは除きます)。つまり、故人が借金や未払い金を残して亡くなった場合には、他の遺産もひっくるめて相続財産となるのです。

それでは、被相続人が借入金を残していた場合など、金銭債務を負ったまま亡くなった場合、この金銭債務は相続人にどのように引き継がれるのでしょうか?

債務というものは、計算すれば分けられる『可分債務』と、計算しても分けられない『不可分債務』に分類できます。
借入金のような金銭債務は、計算すれば分けることができるので『可分債務』です。
金銭債務は可分債務であることから、相続開始とともに法律上当然分割され、各共同相続人がその法定相続分に応じて承継するというのが、一貫した判例の考え方です(昭和34年6月19日最高裁判決)。

従いましてご相談者の場合、相続人はご兄弟お二人だけで、相続分は各2分の1ですから、被相続人であるお父様が遺した300万円のカードローンについても2分の1の150万円ずつを分割して承継することになります。

(債務の相続は結構複雑です。『相続債務は遺産分割の対象になるのか』や『相続債務と遺言書の関係』など、しばしばいただくご質問については、最近の判例も交えてあらためて別記します)

家庭裁判所で『相続放棄』の手続きをすると

ご相談者の事例のように遺産が借金しかない場合や、プラスの相続財産よりマイナスの相続財産が多い場合には、相続開始地(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所で『相続放棄』の手続きをし、これを受理する審判を得ることによって、その相続については始めから相続人とならなかったものとみなされ、支払い義務を免れることができます。
(債権者に『相続放棄します』という内容証明を送っても効果はありません。必ず家庭裁判所の手続きが必要です)

ただし、相続放棄は相手方である債権者(本事例ではカードローン会社)に与える影響が大きいので、手続きをすることができる期間に制限があり、自己のために相続があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続を承認するのかそれとも相続放棄するのかを決めなければなりません(この3ヶ月の期間を『熟慮期間』といいます)。
ご相談者の事例ではお父様が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内、ということになります。
もし3ヶ月以内に決断できない事情があれば期間延長の申立てをする方法があり、また3ヶ月経過してしまっても事情によっては相続放棄を受理される可能性もありますので、司法書士に相談してみてください。

注意点としては、相続放棄の手続きをする場合は、他の相続財産には手をつけないようにしてください。
相続放棄をする前に遺産の一部を処分すると相続を承認したことになり、相続放棄ができなくなります(法定単純承認、民法921条1項)。

なお、『死亡保険金』『死亡退職金』『遺族年金』『香典』は相続人固有の財産ですので、相続放棄しても受け取ることができます。

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