Q059 亡くなった後に振り込まれた年金は相続財産?(未支給年金)

【Question】

父が6月3日に亡くなりました。遺族年金等の遺族給付には該当しません。

年金事務所に年金受給権者死亡届を提出せずにいたら、6月15日になって、父の口座に年金が振り込まれてきました。

そこで、
(1)この年金は、相続財産として遺産分割の対象になりますか?
(2)この年金は、相続税の課税対象になりますか?

 

【Answer】

(1)6月15日に振り込まれた年金は、お父様が健在だった4、5月分の年金ですから、相続財産にあたるように誤解してしまいがちですが、結論的から言えば相続財産ではなく、各年金法所定の受取人固有の財産であり、遺産分割の対象になりません

なお、年金受給権者死亡届をこのまま提出しないでいれば、6、7月分の年金が8月15日に振り込まれてしまいます。お父様は6月3日までご存命でしたから6月分は受け取れますが、7月分以降は返さなければならなくなりますので、ご注意ください。

(2)結論からいえば、相続税の対象にはなりませんが、受取人の一時所得として所得税がかかります(翌年の確定申告で納付)

 

【Reference】

公的年金をもらっている人が亡くなったら

公的年金の受給者が亡くなった場合、年金事務所に「年金受給者死亡届」を提出して、年金の受給をストップします。
そうしないと故人の口座に年金が振り込まれ続け、後で返すハメになるからです。

ところでこの死亡届は、年金事務所にある様式では複写式になっており、「未支給年金請求届」を兼ねるようになっています。
さて、この『未支給年金』とは何でしょうか?

 

未支給年金とは

国民年金や厚生年金などの公的年金は、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の15日に受け取ります。
受け取る年金は『後払い』です。たとえば、6月15日に受け取る年金は、前月4月と前々月5月のあわせて2ヶ月分です。

今回のご相談者のお父様は6月3日に亡くなったということですから、一見すると「4、5月の時点では健在だったのだから、これはお父様の財産であり、相続財産である」と勘違いしそうになります。

しかし、あくまでも6月15日まで待たなければ、4月分と5月分の年金をもらう権利は発生しないのです。
6月15日の時点でお父様は亡くなっていますから、この2ヶ月分の年金をもらう権利は、支給されないまま宙に浮いてしまいます。ついでに言えば、6月分の年金をもらう権利も同じです(年金は、年金を受けていた方が亡くなられた月分まで支払われるので)。

このように年金が後払いであるため、年金を受給している人が亡くなると、「支給されていない年金を誰が受け取るか」という問題が必ず発生します。これが『未支給年金』の問題です。

 

未支給年金請求権は相続財産になるのか?

このような未支給年金については、請求できる人が法律(国民年金法、厚生年金保険法等)で決まっています

未支給年金を請求できるのは、年金を受けていた方が亡くなった当時、その方と生計を同じくしていた(注1)方で、次の方々です。
(1)配偶者
(2)子
(3)父母
(4)孫
(5)祖父母
(6)兄弟姉妹
未支給年金を受け取れる順位もこのとおりと定められています(同順位者複数ならば等分)。

上記のような規定がありながらも、亡くなられた方の未支給年金が相続財産として遺産分割の対象となるのかならないのか(遺産分割の対象になるのかならないのか)については、長らく議論されていました。
しかし、平成7年11月7日最高裁判決によって明確に相続性が否定され、未支給年金請求権は受取人固有の財産であるとされました(注2)。

そのため、遺産分割協議書で未支給年金を分割対象としているケースがありますが、現在では間違いです

(注1)共済年金では、生計同一という要件は無い
(注2)判決要旨「右の規定は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでないことは明らかである。」

 

故人の口座に支給されても『未支給年金』!?

年金受給者死亡届の提出が遅れ、被相続人の口座に年金が振り込まれてしまうことも珍しくありません。

これは、単に「未支給年金がたまたま支給されてしまった」というだけの話ですから、本来それを受け取る権利があるのは、あくまでも法律で決められている上記の順番の受取人です。相続財産ではなく、遺産分割の対象にもなりません
受取人ではない人がこれを引き出したならば、本来の受取人に返す義務があります。

 

未支給年金は相続税の対象にはならない。しかし!

未支給年金については明確に相続性が否定されました。
相続性が否定されても、死亡保険金のように受取人が相続や遺贈によって取得したものとみなされると相続税の対象になる可能性があります(税法上のみなし相続財産)が、相続税法上でもこれに対応する規定はなく、相続税が課されることはありません(国税庁ホームページ質疑応答:未支給の国民年金に係る相続税の課税関係)。

しかし、受取人個人の一時所得として、所得税の対象にはなります(所得税基本通達34-2)。

一時所得は年間50万円まで非課税であり、未支給年金単独で50万円を超えることは少ないと思われます。しかし、生命保険金の満期金を受け取る等、他に一時所得に該当する所得がある場合には、これらを合算して申告をしなければなりません。

 

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Q058 生前贈与なのに相続税?

【Question】

相続税対策になるからという理由で、父は私に、贈与税の基礎控除額以内で毎年財産を贈与してきました。
ところが、父に相続が起きた場合に、生前贈与された財産も相続税がかかることがあると聞きました。これはどのような意味ですか?

 

【Answer】

相続税対策をする上で、連年贈与の活用はとても有効です。

ただし、相続開始前3年以内の贈与については、贈与税を払っていても払っていなくても、相続税の課税対象として加算することになっています。逆にいえば、3年より前の生前贈与は相続税の対象に加算しません。

従いまして、連年贈与で相続税対策をするならば、早ければ早いほど効果が大きくなります。

 

【Reference】

死亡前3年以内に贈与されていた財産は、贈与税でなく相続税

被相続人が亡くなった時点ですでに生前贈与されていた財産は、当然、もらいうけた人の財産であって故人の遺産(相続財産)ではありません。

ところが、亡くなる前の3年以内に被相続人が贈与した財産については、”相続税”がかかる場合があります。 どのような場合かと言うと、生前贈与を受けた人が、贈与した人の相続人(包括受遺者を含む)でもある場合です。

「贈与税の間違いじゃないの?」と思われるかもしれません。ごもっともです。
どうして生前贈与なのに、贈与税ではなく相続税がかかるのでしょうか?

もしも相続税という制度だけがあって贈与税という制度がなければ、相続税を逃れるためにはバンバン生前贈与してしまえばいいことになります。 このような相続税逃れを防ぐために、贈与税という仕組みを用意し、あえて相続税より高い税率にしているのです。
しかし何でもかんでも高い贈与税がかかるのでは納税者もたまりませんから、毎年110万円までの贈与ならば、贈与税は非課税とされています(暦年課税)。ここがポイントです。

もしも、余命わずかと宣告された後に、この毎年110万円の贈与非課税枠をフル活用して駆け込み的に生前贈与すれば、それによって遺産が少なくなりますから、意図的に相続税を減らすことができてしまいます。 反対に、高い贈与税を払って財産をもらいうけたのに、その後まもなく贈与者が亡くなってしまったならば、「亡くなるまで待って相続でもらっていれば、税金が生前贈与よりも安かったのに・・・」ということで不公平感が強くなってしまいます。

そこで、相続人となる人が、被相続人が亡くなる前の3年以内に遺産とは別に生前贈与を受けていた場合には、贈与税を払っているかどうかに関わりなく、すべて相続税の対象にすることにしました。 また、もし生前贈与を受けた時に納付した贈与税があればこれを相続税から差し引くことができるようにし、さらに納付済みの贈与税が相続税額よりも大きければ差額を還付することができるようにして、不公平を解消することにしたのです。

ただし、一つ例外があります。
居住用不動産にかかる贈与税の配偶者控除』を受けた財産の場合には、あげた人(贈与者)がその後3年以内に亡くなった場合でも相続税の対象にはなりません
この制度は、20年間連れ添った配偶者に居住用財産を贈与する場合には、一定額まで無税とすることで内助の功に報いるための制度です。そのため、贈与者がその後まもなく亡くなったからといって「やっぱり相続税を払ってください」とは、さすがの税務署も言えないわけです。

 

生前贈与の相続税加算をするときの注意点

死亡前3年以内の贈与財産を相続税の対象に加える場合、いくつか注意点があります。

(1)被相続人からの贈与財産のみが相続税の対象になる(相続税法19条)

被相続人以外からの贈与は対象になりません。
たとえば、毎年、父と母の双方から贈与を受けていた人がいて、ある時、父が亡くなった場合には、亡くなる前3年以内に父から受けていた贈与だけが対象になり、母からの贈与は対象になりません。

 

(2)対象になるのは『贈与の時における価額』(相続税基本通達19-1)

相続税に贈与財産を加算する場合には、相続発生時ではなく贈与時の時価を加算します。
たとえば、贈与時には価額が500万円だったが、相続時には600万円に値上がりしていた贈与財産については、相続税の対象として加算するのはあくまでも贈与時の500万円です。

 

(3)「相続開始前3年以内」とは、亡くなった日から3年前の同じ日以降を指す(相続税基本通達19-2)

たとえば、平成26年1月30日に亡くなった場合、平成23年1月30日以降の贈与が対象になります。

 

(4)被相続人から相続や遺贈で相続財産やみなし相続財産(死亡保険金等)を受け取らなかった者への贈与は、対象にしない(相続税基本通達19-3)

たとえば、父が子に贈与し、その後3年以内に父が亡くなった場合でも、子が家庭裁判所で相続放棄の手続きをするなどしてまったく相続財産を受け取らなければ、相続税の対象にはなりません。贈与税だけで完結してしまえばいい話だからです。

 

相続時精算課税制度によって贈与された財産は相続税の対象

相続時精算課税制度の届出をしていた贈与財産は、そもそも相続税で贈与税を精算することを予定していたものですので、相続税の課税対象になります。
ただし、亡くなった日の時価ではなく、生前贈与した時の時価で評価します。

 

 

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2014年2月3日 | カテゴリー :

Q057 父が母に生命保険をかけていたが、父のほうが先に亡くなったら(生命保険に関する権利)

【Question】

母に万一の事があったときに備えて、父が母に生命保険をかけていました。
保険契約の内容は平成3年に加入した積立型終身保険で、母を被保険者とし、父が契約者かつ保険金受取人となっている生命保険で、保険料はずっと父が支払っていました。

ところが、先日、父が死亡してしまいました。遺言はありません。
母が死亡したわけではないので保険金はまったくおりていませんが、保険会社からは契約者を変更するように求められています。このような場合、誰が契約を引き継ぐかを決めるのは、遺産分割協議なのでしょうか。

 

【Answer】

はい。被保険者ではない保険契約者が先に死亡した場合、掛け捨てではない生命保険契約には財産的価値があるので相続財産にあたります。
したがって、遺言が無ければ、誰が引き継ぐのかは相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めることになります。
もちろん、相続税の計算の上でも課税対象になります。

 

【Reference】

生命保険の被保険者が亡くなった場合には、死亡保険金が支払われます。これは受取人固有の財産であって相続財産ではなく、遺産分割の対象ではありません。

いっぽう、受取人が生命保険の被保険者(上記の事例では『母』)よりも契約者(同じく『父』)が先に死亡した場合、保険金の支払事由が発生したわけではないので1円も受け取れません。

しかし、この生命保険契約には財産的価値があります(掛け捨て保険を除く)。
例えば、契約者はいつでも契約を解約して解約返戻金を受けとる権利を持っています。保険契約の内容によっては、満期保険金を受け取る権利がある場合もあります。もちろん、将来、保険金支払事由が発生すれば保険金を受けとる権利もあります。
このような生命保険契約にそなわる様々な権利のことをひっくるめて、『生命保険契約に関する権利』と呼びます(ずいぶんセンスのない呼び方ですが、昔からこうなっておりますので仕方ありません)。

契約者(保険料負担者)がなくなったときには、この『生命保険契約に関する権利』にも財産的価値がある以上、相続財産のひとつに違いはありません。従いまして遺産分割の対象となり、遺言がなければ相続人全員の話し合いで権利承継者を決めることになります。

相続税の計算をする場合も、これを”本来の相続財産”として課税対象にします。

生命保険に関する権利1

 

『生命保険契約に関する権利』はどうやって評価する?

さて、このような『生命保険契約に関する権利』も相続財産であり、相続税の対象になるならば、財産評価して価値を算出しなければなりません。では、どうやって価値を算出するのでしょうか。

答えは簡単です。契約者が亡くなった日時点の、解約返戻金の額で評価します。
これは、現在では相続税評価の場合も同じです(財産評価基本通達214条)。裏を返せば、解約返戻金の無い掛け捨て保険は評価対象になりません。

契約者はいつでも保険契約を解約して解約返戻金を受け取ることができるわけですから、「保険会社に貯金しているのと同じ」と考えることができるからです。

 

契約者と保険料負担者が違う場合

上記の例は、契約者と保険料負担者が同じ人(夫)の場合でした。

しかし、「保険契約は妻の名前で契約するけれども、保険料は夫の口座から引き落とし」というケースが多々あります。
つまり、契約者と保険料負担者が違う場合です。
生命保険に関する権利(みなし相続財産)

この場合、生命保険契約それ自体は受取人だけを変更すればよく、契約そのものに変動はありません。

しかし「税法」上は、相続税法3条1項3号のケースに該当することになり、1項本文の規定により、契約者(妻)が相続または遺贈によって生命保険契約に関する権利を取得したものとみなされて、解約返戻金相当額が相続税の対象になります(注1)。
なお、夫が負担していた保険料が一部だけなら、負担割合に応じた額になります。

いっぽう、「民法」的には、保険料の支払い時に保険料負担者と保険契約者との間で贈与契約が成立していると解釈できる場合を除き、夫の本来の相続財産に該当すると考える他にないのではないかと思います(私見です)。生命保険金を受け取る場合と異なり、原則として遺留分算定の基礎となると考えられます(これも私見です)。

(注1)考え方としては「保険料相当額が夫から妻に贈与されたものとみなして、保険料負担時に贈与税を課税する」という考え方もあるが、相続税法3条1項3号があることによって、税法上はこの考え方を採用していないと解される。

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Q056 弔慰金や花輪代には相続税がかかるのか

【Question】

会社を経営していた父が、病気で亡くなりました。
役員死亡退職金については、退職金規程にもとづいて、役員会の決議後に5,000万円が支給されました。
しかし、そのほかに会社から『弔慰金』として600万円が支給され、『花輪代』も100万円支給されています。
会社の説明によれば、弔慰金は会社の弔慰金規程に基づいて支給したもので、役員会などの決議は必要ないとのことでした。
会社の人の話では、「最後の給料が月額100万円だったのでそうなりました」という説明でした。

死亡退職金がみなし相続財産として相続税の対象になることはわかりますが、これらの弔慰金や花輪代はどのように考えるのでしょうか。

 

【Answer】

退職手当等とは別に、弔慰金や花輪代を受け取った場合、その一部については非課税とされます。
業務外の死亡であれば死亡時の普通給与の6ヶ月分までは非課税となります。
最終給与が月額100万円ならば、100万円×6ヶ月=600万円は非課税です。
支給された弔慰金がちょうどこの金額になっているということは、きっとこの非課税枠を意識しているのでしょう。
ただし、この非課税枠を超えた金額については、退職手当金として相続税の対象になります。花輪代の100万円は、相続税の計算上は退職手当金等に含めて計算することになるでしょう。

 

【Reference】

役員や従業員が死亡した場合に会社から支給される金銭(現物支給含む)には、名目上は『死亡退職金』『退職手当金』『弔慰金』『花輪代』『葬祭料』などいろいろありますが、名目がどうであれ、実質的に被相続人の退職金であれば相続税の対象になります(相続税基本通達3-18)。

しかし、会社の役員などが死亡すると、死亡退職金を支給するには株主総会や取締役会の決議が必要になります。
そこで『弔慰金』などという名目で、退職金とは別に金品を支給することがあります(規則があれば、弔慰金の支給には原則として決議不要)。

このような弔慰金や花輪代には、遺族への見舞いという側面があります。一般的にお香典は贈与税が非課税とされていますから、弔慰金や花輪代もある程度は非課税としても良いのではないか・・・とも考えられます。もっとも、どこで区別するのか、現実的には難しい部分があります。

そこで、相続税での取り扱いについては、次のようになりました(相続税基本通達3-20)

弔慰金・花輪代・葬祭料等、退職手当金とは別に支給されたものについて、
1.実質的に退職金ならば、それは相続税の対象にする。
2.実質的に退職金ではないものについては、次に掲げる金額を上限として、相続税の対象にしない。 その金額を超える部分に相当する金額は、退職手当金等として相続税の対象とする。
(1) 業務上の死亡の場合 :被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額
(2) 業務外の死亡 の場合:被相続人の死亡当時の普通給与の6ヶ月分に相当する額
(注 普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。)

 

税法上の退職手当金等に該当しない弔慰金など

なお、ご質問とは関係ありませんが、以下の法律等の規定により遺族が受ける弔慰金等については、相続税の課税対象には含めません(相続税基本通達3-23)。

(1) 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第12条の8第1項第4号及び第5号((業務災害に関する保険給付))に掲げる遺族補償給付及び葬祭料並びに同法第21条第4号及び第5号((通勤災害に関する保険給付))に掲げる遺族給付及び葬祭給付

(2) 国家公務員災害補償法(昭和26年法律第191号)第15条((遺族補償))及び第18条((葬祭補償))に規定する遺族補償及び葬祭補償

(3) 労働基準法(昭和22年法律第49号)第79条((遺族補償))及び第80条((葬祭料))に規定する遺族補償及び葬祭料

(4) 国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)第63条((埋葬料及び家族埋葬料))、第64条及び第70条((弔慰金及び家族弔慰金))に規定する埋葬料及び弔慰金

(5) 地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)第65条((埋葬料及び家族埋葬料))、第66条及び第72条((弔慰金及び家族弔慰金))に規定する埋葬料及び弔慰金

(6) 私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)第25条((国家公務員共済組合法の準用))の規定において準用する国家公務員共済組合法第63条、第64条及び第70条に規定する埋葬料及び弔慰金

(7) 健康保険法(大正11年法律第70号)第100条((埋葬料))に規定する埋葬料

(8) 船員保険法(昭和14年法律第73号)第72条((葬祭料))に規定する葬祭料

(9) 船員法(昭和22年法律第100号)第93条((遺族手当))及び第94条((葬祭料))に規定する遺族手当及び葬祭料

(10) 国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(昭和22年法律第80号)第12条((弔慰金))及び第12条の2((特別弔慰金))に規定する弔慰金及び特別弔慰金

(11) 地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)第31条((遺族補償))及び第42条((葬祭補償))に規定する遺族補償及び葬祭補償

(12) 消防組織法(昭和22年法律第226号)第24条((非常勤消防団員に対する公務災害補償))の規定に基づく条例の定めにより支給される消防団員の公務災害補償

(13) 従業員(役員を除く。以下この(13)において同じ。)の業務上の死亡に伴い、雇用主から当該従業員の遺族に支給された退職手当金等のほかに、労働協約、就業規則等に基づき支給される災害補償金、遺族見舞金、その他の弔慰金等の遺族給付金(当該従業員に支給されるべきであった退職手当金等に代えて支給される部分を除く。)で、(1)から(12)までに掲げる弔慰金等に準ずるもの

 

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2014年1月28日 | カテゴリー :

Q055 死亡退職金にかかる相続税とは(みなし相続財産その2)

【Question】

夫が亡くなりました。相続人は妻である私と子供2名です。

夫の勤務先の社内規定で、死亡退職金について第一順位の受取人が配偶者となっていたため、妻である私が夫の退職金2,000万円を受け取りました。

この場合、私のほうで退職所得として確定申告をすればいいのでしょうか。

 

【Answer】

いいえ、死亡退職金は通常の退職金と異なり、『相続税』が課税される可能性があります。
確定申告ではなく、相続税がかかる場合には相続発生から10ヶ月以内に相続税申告をします。

なお、死亡退職金を相続人が受け取る場合には、遺族の生活保障という目的があるため、相続税について一定の金額が非課税になっています。
死亡退職金の非課税限度枠は『500万円×法定相続人の数』で、あなたの場合は法定相続人が3人ですから、受け取った2,000万円のうち1,500万円(500万円×法定相続人3人)が非課税となります。

非課税の1,500万円を超える500万円については、死亡退職金以外の財産と合算して相続税の課税対象となります。
合算した結果、相続税の基礎控除額を下回るならば、相続税の申告をする必要はありません。

 

 

【Reference】

故人が在職中に亡くなった場合に勤務先から支給されるお金が死亡退職金です。
死亡退職金は受取人固有の財産とされ、本来は相続財産に含まず、遺産分割の対象にもなりません(受取人が指定されている場合)。

しかし、故人の死亡によって遺族が財産を取得するという点では本来の相続財産と類似しているため、『みなし相続財産』として相続税の課税対象になってしまいます。
死亡退職金は家庭裁判所で相続放棄の手続きをしても受け取れますが、その場合でも死亡退職金を受け取ったら相続税がかかる可能性があるのです。

厳密には、被相続人の死亡によって、被相続人(亡くなった人)に支給されるべきであった死亡退職金(注1)を遺族が受給する場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の対象となります(仮に3年を超えて支給されたら、受給者の一時所得として所得税・住民税の課税対象)。

ただし、死亡退職金を受け取ったのが相続人であるかないかによって、税務上の扱いが違います。

 

(1)死亡退職金を相続人が受け取った場合

相続人が死亡退職金を受け取った場合

死亡退職金を被相続人の『相続人』が受け取った場合には、相続税の対象となります。

相続人が受け取る死亡退職金には、故人に近い遺族の生活を保障するという重要な目的があります。そこで相続税について一定の金額が非課税になっています。

死亡退職金の非課税限度枠 : 500万円×法定相続人の数

※受け取ったすべての死亡退職金を合計して、その受け取った金額が非課税限度枠を超えた場合に、その超過額が他の相続財産と合算されて相続税の対象となります。

※非課税限度枠を計算する際には、受取人となっていない法定相続人もその人数に含みます。

基礎控除と同様、家裁で相続放棄した人も法定相続人の数に入れてかまいません。養子の数え方も同じです。

 

(2)相続人以外の個人が受け取った場合

死亡退職金を相続人以外の個人が受け取る場合

死亡退職金を故人の『相続人以外の個人』が受け取った場合でも、相続税の対象となります。遺贈によってもらったものとみなされるからです。

ただし、(a)の相続人が受け取る場合と違い、非課税枠はありません。相続人が受け取る場合に比べると税法上不利です。

なお、家庭裁判所で相続放棄の申述をした人や相続欠格等によって相続権を失った人は、相続権はありませんが死亡退職金を受け取ることは可能です(受取人固有の財産なので)。ただし、退職金を受け取る以上相続税がかかり、しかも相続人でないために非課税枠はありませんので注意が必要です。

 

(注1)税法上は『退職手当金等』と言います。実際の呼び方は『退職手当』『功労金』等さまざまでも、実質的に被相続人の死亡退職金として支給されるお金等のことを総称して『退職手当金等』と呼びます。したがって、現物で支給された場合も含まれます。なお、この記事の上では、なじみやすい『死亡退職金』と表現しています。

 

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2014年1月27日 | カテゴリー :

Q054 死亡保険金にかかる税とは(みなし相続財産その1)

【Question】

夫が亡くなりました。相続人は妻である私のほかに、子供が2人います。
遺産としては古いマンションと少々の預金だけです。
夫はひとつだけ生命保険に加入しており、保険金受取人に指定されていた私が保険金を受け取りました。
取得した保険金額が2,000万円もあるので,何かしら税金がかかるだろうと思ったのですが、保険会社の人は「お客様の場合は税金はかからない可能性が高い」と言います。どうして税金がかからないのでしょうか?

 

【Answer】

契約者(保険料負担者)と被保険者が両方ともご主人で、その死亡保険金を被保険者の相続人であるあなたが受け取った場合は、『相続税』が課税される可能性があります。

死亡保険金を相続人が受け取る場合には、遺族の生活保障という目的があるため、相続税について一定の金額が非課税になっています。
死亡保険金の非課税限度枠は『500万円×法定相続人の数』で、あなたの場合は法定相続人が3人ですから、受け取った2,000万円のうち1,500万円(500万円×法定相続人3人)が非課税となります。

非課税の1,500万円を超える500万円については、死亡保険金以外の財産(マンションや預金の他、生前贈与財産や死亡退職金等)と合算して相続税の課税対象となります。
合算した結果、相続税の基礎控除額を下回るならば、相続税の申告・手続きは必要がありません。

 

【Reference】

死亡保険金 (注1)を受け取った場合の課税関係は、契約者(保険料負担者)と保険金受取人との関係によって違います。

 

(1)相続税の課税対象となる場合

(a)相続人が受け取った場合

死亡保険金の受取人が相続人の場合

契約者(保険料受取人)と被保険者が同じ人で、その死亡保険金を被保険者の『相続人』にあたる人が受け取った場合には、相続税の対象となります。

本来、死亡保険金を相続人が受け取った場合でも、民法上は受取人固有の財産とされ、遺産には含まれません。 しかし実質的には、受取人が相続によって財産を受け取ったという点では通常の遺産と変わりませんから、死亡保険金を遺産とみなすのです。
そのため死亡保険金は、税法上『みなし相続財産』と呼ばれます。

相続人が受け取る死亡保険金には、故人に近い遺族の生活を保障するという重要な目的があります。そこで相続税について一定の金額が非課税になっています。

死亡保険金の非課税限度枠 : 500万円×法定相続人の数

※受け取ったすべての死亡保険金を合計して、その受け取った金額が非課税限度枠を超えた場合に、その超過額が他の相続財産と合算されて相続税の対象となります。

※非課税限度枠を計算する際には、受取人となっていない法定相続人もその人数に含みます。

基礎控除と同様、家裁で相続放棄した人も法定相続人の数に入れてかまいません。養子の数え方も同じです。

 

(b)相続人以外の個人が受け取った場合

死亡保険金を相続人以外の個人が受け取る場合

契約者(保険料受取人)と被保険者が同じ人で、その死亡保険金を被保険者の『相続人以外の個人』が受け取った場合でも、相続税の対象となります。遺贈によってもらったものとみなされるからです。

ただし、(a)の相続人が受け取る場合と違い、非課税枠はありません。相続人が受け取る場合に比べると税法上不利です。

なお、家庭裁判所で相続放棄の申述をした人や相続欠格等によって相続権を失った人は、相続権はありませんが死亡保険金を受け取ることは可能です(受取人固有の財産なので)。ただし、保険金を受け取る以上相続税がかかり、しかも相続人でないために非課税枠はありませんので注意が必要です。

 

(2)所得税の課税対象となる場合

死亡保険金に所得税がかかる場合

契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ人になっている死亡保険金の場合は、一時所得として所得税・住民税の対象になります。
一時所得は次の計算式で計算します。
一時所得金額=(受取保険金-支払保険料総額-50万円)×1/2

一時所得も、確定申告の際に総合課税として他の給与所得等と合算して所得税を計算しますが、上の計算式からお分かり頂けるように、利益の1/2に対してしか課税されません。言い方を変えれば、所得が高く所得税率が50%という人でも、受取保険金についての実効税率は25%である、とも言えます(注2)。

 

(3)贈与税の課税対象となる場合

死亡保険金に贈与税がかかる場合

契約者(保険料負担者)と被保険者が別の人で、契約者以外の個人が死亡保険金を受け取った場合は、全額が贈与税の対象になります。

贈与税の計算式は以下のとおりです。
(年間で贈与を受けた価額の合計-基礎控除110万円)×速算表の税率-速算表の控除額

 

(注1)ここでいう『死亡保険金』には、生命保険契約によるものだけでなく、たとえば偶然の事故に起因して支払われる傷害保険による死亡保険金も含みます。
ただし、交通死亡事故によって遺族が加害者側から受け取った損害賠償金は、相続税の対象ではなく遺族の所得となりますが、所得税法上非課税です。

(注2)近頃の流行として、孫への生前贈与と生命保険を組み合わせた相続税対策が流行しています。
暦年課税(年110万円まで非課税)で現金を孫に贈与すれば、相続財産が減るので相続税対策になりますが、いっぽうで孫の金銭感覚がおかしくなってしまうかもしれません。そこで、孫に(2)のパターン(契約者=受取人=孫、被保険者=祖父)で生命保険に加入させるのです。そうすれば孫は自由に現金を引き出せなくなります。
祖父が亡くなった時点で、孫が受け取る保険金には所得税・住民税がかかりますが、一代飛ばしで財産を移転することができる他、相続税と所得税・住民税の税率の差をうまく利用すれば、節税につながる可能性もあります。
(ただし、生前贈与と生命保険を組み合わせる場合には、生前贈与の成立と生命保険の選択に細心の注意が必要です。)

 

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2014年1月24日 | カテゴリー :

Q053 相続税がかからない財産とは(非課税財産)

【Question】

私の知り合いが「お墓や仏壇仏具には相続税がかからないから、相続税対策として純金製の仏像を買おうと思う」と話していました。本当に相続税対策になるのでしょうか。

 

【Answer】

墓地や墓石・仏壇仏具等は、相続税の非課税財産です。

墓地や墓石は、特に都市部では高額になることが多く、生前に購入しておくと相続税対策になります。
反対に、亡くなった後に『相続人が』墓地や仏壇などを購入すると、その相続人自身の財産となるため、相続税の計算ではまったく考慮してもらえません。

ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるようなもの(お金に替えられるようなもの)は、相続税の課税対象となります。
純金製の仏像などはお金に替えられますから、相続税対策にはならないと考えられます。

 

【Reference】

相続税は、原則として、相続人が被相続人から相続または遺贈(死因贈与を含む)により取得したすべての財産に対してかかります。
しかし、中には国民感情や政策的な配慮から、一定の財産については相続税の課税対象から除外されることになっています。

たとえば墓地や仏壇などには相続税がかかりません。これらは祖先を敬うために必要な財産であってお金に替えることができるものではありませんから、これに課税するとなれば大きな反発が予想されます。そこで、たとえ高額なものであっても相続税は課税されません。

ただし、商品として売るために購入したものや、投資の対象として持っていた場合には、相続税の課税対象になります。これらは祖先を敬うためのものではなくお金に替えることも可能だからです。

 

1.非課税財産の具体例

相続税がかからない財産のうち主なものは次のとおりです。

(1)墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。

(2)宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの

(3)地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利

(4)相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分(詳細別途)

(5)相続や遺贈によってもらったとみなされる退職手当金等のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分(詳細別途)

(6)個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
(相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります)

(7)相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によってもらった金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

 

2.庭内神し(ていないしんし・庭内神祠)の敷地について

相続税の非課税財産について、比較的最近話題になったのが、『庭内神し』の敷地についての平成24年6月21日東京地裁判決です。

『庭内神し』とは、屋敷内にある神の社や祠などでご神体を祀り、日常的に礼拝されているものをいいます。
時折、自宅の庭や敷地の一部でお地蔵さんやお稲荷さんをお祀りしているのを見かけますが、そのことです。
広く地域に根付いているものばかりではなく、特定の者・家族だけがお祀りしている場合も含まれます。

庭内神しそれ自体は、以前から相続税の非課税財産でした(相続税基本通達12-2)。
しかし移動可能な庭内神しも少なくありませんので、庭内神しの”敷地”については原則として相続税は非課税になりませんでした。

これが上記の東京地裁判決で国側が敗訴して控訴せず確定したため、税務上の取り扱いが変更されました。
つまり、一定の条件下で、庭内神しの敷地や附属設備も相続税の非課税財産とされました。

一定の条件とは、以下のとおりです。
1.『庭内神し』の設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形
2.その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的
3.現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能の面
上記3点を踏まえた上で、その設備及び附属設備等の機能の面から、その設備と社会通念上一体のものとして日常礼拝の対象とされているといってよい程度の密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備である場合

この場合に初めて、庭内神しの敷地や附属設備も非課税になります。
今後、相続税対策として流行するかもしれません?が、適用は限定的ですのでご注意ください。

 
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2014年1月21日 | カテゴリー :

Q052 相続税がかかる財産とは

【Question】

遺産のうち、預金や土地建物に相続税がかかるということはわかりますが、次のような財産には、相続税はかかりますか?
(1)借地権
(2)外国にある財産
(3)テレビ
(4)特許権
(5)生命保険金
(6)死亡退職金
(7)墓、位牌、仏壇
(8)生前贈与された財産

【Answer】

故人が亡くなられた日に持っていた財産でお金に見積もることができるものは、有形の物も無形の物もすべて相続税の対象になります。(1)借地権、(2)外国にある財産、(3)テレビ、(4)特許権は、どれも相続税の対象です。
ただし、(7)墓、位牌、仏壇は、原則として非課税財産とされています。

また、(5)生命保険金や(6)死亡退職金は、受取人固有の財産であって民法上の相続財産ではありませんが、相続財産に準じるものとみなして相続税の対象になることが多いです(みなし相続財産)。もっとも、生命保険金・死亡退職金には一定の控除額が設定されています

(8)の生前贈与された財産は、贈与税ではなく相続税の対象になるケースがあります。

【Reference】

相続や遺贈(死因贈与を含む)によって取得した財産には相続税がかかる(Q047)わけですが、その財産の中にも相続税がかからないものがあり(非課税財産)、反対に、意外な財産に相続税がかかることもあります。

ここでは、『相続税がかかる財産』を整理してみます。

 

1.民法上の相続財産(本来の相続財産)

故人が亡くなった日に持っていた、お金に見積もることができるすべての財産は、有形・無形を問わずすべて相続財産であり、相続税の対象になります。
相続財産の例(遺産)

なお、借金などのマイナスの相続財産は、相続税の計算を行う際には差し引きます(控除)。

 

2.税法上のみなし相続財産

代表的なものが『死亡保険金』と『死亡退職金』です。
どちらも原則として「受取人固有の財産」とされ、民法上の相続財産からは除外されるため、遺産分割の対象にはなりません。
しかし、相続が発生したことによって受け取ることができる財産であるという点では、上記1の民法上の相続財産と変わるところがないので、相続税の課税対象にはなります。
そこで、これらの財産のことを(税法上の)『みなし相続財産』と呼びます。

死亡保険金死亡退職金以外にも、定期金に関する権利や債務免除による利益など、税法上のみなし相続財産にはいくつかの種類があります。
また、死亡保険金は、契約形態によっては民法上の相続財産に含まれてしまって遺産分けの対象になったり、相続税ではなく贈与税がかかる場合などもあります。

なお、みなし相続財産のうち死亡保険金死亡退職金については、全額が相続財産になるわけではなく、非課税限度額を超えた部分だけが相続財産に加算されます
この非課税限度額は、死亡保険金・死亡退職金とも、それぞれ『500万円×法定相続人の数』です。

 

3.死亡前3年以内に贈与されていた財産

被相続人が亡くなった時点ですでに生前贈与されていた財産は、当然、もらいうけた人の財産であって故人の遺産(相続財産)ではありません。

ところが、亡くなる前の3年以内に被相続人が贈与した財産については、”相続税”がかかる場合があります。
どのような場合かと言うと、生前贈与を受けた人が、贈与した人の相続人(包括受遺者を含む)でもある場合です。

「贈与税の間違いじゃないの?」と思われるかもしれません。ごもっともです。
どうして生前贈与なのに、贈与税ではなく相続税がかかるのでしょうか?

もしも相続税という制度だけがあって贈与税という制度がなければ、相続税を逃れるためにはバンバン生前贈与してしまえばいいことになります。
このような相続税逃れを防ぐために、贈与税という仕組みを用意し、あえて相続税より高い税率にしているのです。
しかし何でもかんでも高い贈与税がかかるのでは納税者もたまりませんから、毎年110万円までの贈与ならば、贈与税は非課税とされています(暦年課税)。ここがポイントです。

もしも、余命わずかと宣告された後に、この毎年110万円の贈与非課税枠をフル活用して駆け込み的に生前贈与すれば、それによって遺産が少なくなりますから、意図的に相続税を減らすことができてしまいます。
反対に、高い贈与税を払って財産をもらいうけたのに、その後まもなく贈与者が亡くなってしまったならば、「亡くなるまで待って相続でもらっていれば、税金が生前贈与よりも安かったのに・・・」ということで不公平感が強くなってしまいます。

そこで、相続人となる人が、被相続人が亡くなる前の3年以内に遺産とは別に生前贈与を受けていた場合には、贈与税を払っているかどうかに関わりなく、すべて相続税の対象にすることにしました。
また、もし生前贈与を受けた時に納付した贈与税があればこれを相続税から差し引くことができるようにし、さらに納付済みの贈与税が相続税額よりも大きければ差額を還付することができるようにして、不公平を解消することにしたのです。

ただし、一つ例外があります。
『居住用不動産にかかる贈与税の配偶者控除』を受けた財産の場合には、あげた人(贈与者)がその後3年以内に亡くなった場合でも相続税の対象にはなりません。
この制度は、20年間連れ添った配偶者に居住用財産を贈与する場合には、一定額まで無税とすることで内助の功に報いるための制度です。そのため、贈与者がその後まもなく亡くなったからといって「やっぱり相続税を払ってください」とは、さすがの税務署も言えないわけです。

 

4.相続時精算課税制度によって贈与された財産

相続時精算課税制度の届出をしていた贈与財産は、そもそも相続税で贈与税を精算することを予定していたものですので、相続税の課税対象になります。ただし、亡くなった日の時価ではなく、生前贈与した時の時価で評価します。

 

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2014年1月20日 | カテゴリー :

Q051 相続税の計算方法パート2 相続税額の計算 2015年改定版

【Question】

Q050で、課税遺産総額の計算については、だいたい理解できました。

その後の相続税額の計算方法はどうなるのでしょうか?

 

【Answer】

Q050 相続税の計算パート1 課税遺産総額の計算』の続きです。

 

【Reference】

2.相続税の計算

(1)課税遺産総額を法定相続分どおりに按分(あんぶん:比例配分のこと)したものとして、それに税率を適用して、各法定相続人別に仮の相続税額を計算します。

(2)(1)の税額を合計したものが相続税の総額です。

(3)(2)の相続税の総額を、各相続人・受遺者・相続時精算課税制度を適用した人が実際に取得した正味の遺産額の割合に応じて按分します。

(4)(3)から配偶者の税額軽減のほか、各種の税額控除を差し引いて、各人が実際に納める税額を計算します。

 

相続税速算表(改正前)相続税速算表2015年改正

 

相続税の計算例(改正前)

 

  3.税額から控除されるものの例

(1)配偶者の税額軽減(配偶者控除)
配偶者(故人の夫・妻)が、遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額のうち、1億6,000万円までか、または配偶者の法定相続分相当額まで、どちらか多いほうまで配偶者について相続税はかかりません。

(2)未成年者控除
相続人が未成年者の場合には、20歳に達するまでの年数1年につき6万円(2015年1月1日以後の相続の場合は、1年につき10万円)が控除されます。

(3)障害者控除
相続人が障害者の場合には、次の控除があります。
(a)2014年12月31日までに発生した相続:
85歳に達するまでの年数1年につき6万円(特別障害者の場合は12万円)が控除されます。
(b)2015年1月1日以降に発生した相続:
85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)が控除されます。

(4)暦年課税に係る贈与税額控除
”正味の遺産額”に加算された「相続開始前3年以内の贈与財産」については、その価額に対しすでに納付済みの贈与税額が控除されます。

(5)相続時精算課税制度に係る贈与税額控除
”遺産総額”に加算された「相続時精算課税制度の適用を受ける贈与財産」の価額に対する、納付済みの贈与税額が控除されます。 なお、控除しきれない金額がある場合には、申告をすることにより還付を受けることができます。

 

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2015年1月8日 | カテゴリー :

Q050 相続税の計算方法パート1 課税遺産総額の計算 2015年改定版

【Question】

相続税額の計算方法は、相続人がそれぞれ実際に取得した財産に直接税率をかけるというような、単純なものではないと聞きました。

具体的にどのように計算するのでしょうか?

 

【Answer】

遺産相続で、実際に相続税の申告が必要になる方は決して多くはありませんし、申告するほどの相続財産があるような場合には、税理士に依頼するケースも多いでしょう。

しかし、相続税申告を税理士に依頼する場合でも、相続税の基本的な仕組みは理解しておく必要があるでしょう。
そこで、こちらでは”相続税”についての基本的な計算の方法を説明します。

一度にまとめて説明すると長くなるので、説明を2回に分けます。
このQ050で『課税遺産総額の計算』について、次のQ051で『相続税の計算』について説明します。

 

【Reference】

1.相続税の課税対象となる課税遺産総額の計算

(1)相続や遺贈(死因贈与を含む)によって取得した財産(遺産総額)の価額と、相続時精算課税の適用を受ける 財産の価額を合計します。
(宅地や建物の評価方法は、後日あらためて説明します)

(2)(1)から債務・葬式費用・非課税財産を差し引いて、遺産額を算出します。

(3)遺産額に相続開始前3年以内に暦年課税に係る贈与財産の価額を加算して、”正味の遺産額”を算出します。

(4)(3)の”正味の遺産額”から基礎控除額を差し引いて、”課税遺産総額”を算出します。
※”正味の遺産額”が基礎控除額を下回るなら、相続税はかかりません!

 

課税遺産総額の計算2015

課税遺産総額が計算できたら、相続税の計算をします。
計算方法については、『Q051 相続税の計算方法パート2 相続税額の計算』にお進みください。

 

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2015年1月8日 | カテゴリー :