Q060 定期金に関する権利はどうやって評価するか

【Question】

故人が民間の個人年金を受け取っており、その年金受給権を遺族が引き継いだような場合、この権利は『定期金に関する権利』として財産評価すると聞きました。これはどのような意味ですか?

 

【Answer】

個人年金保険や収入保障保険などは、基本的には、保険金を年金形式で受け取ります。
いっぽう、一般の死亡保険金や満期保険金は一時金で受け取るのが原則ですが、年金形式で受け取ることができる特約があらかじめ用意されていることがあります。

年金のように、ある期間にわたって定期的に金銭等の給付を受ける権利のことを『定期金に関する権利』といいます(注1)。

ところで、相続税というものは、相続発生時(被相続人の死亡時)のすべての相続財産を金銭で評価し、その評価額をもとに計算します。

『定期金に関する権利』は、相続発生時にもらえるお金ではありませんが、将来にわたって継続的にお金をもらえる権利であり、財産的な価値があるものです。 そのため、このような年金形式の保険金についても、相続が発生した時点ではいくらの価値があるのかということを計算して評価額を求めます。
このような『定期金に関する権利』については、その評価方法が相続税法に定められています。

なお、『遺族基礎年金』などの公的な遺族年金は相続財産ではなく(Q014)、相続税もかかりませんので、財産としては評価しません。

 

【Reference】

定期金のタイプごとの、定期金に関する権利の評価方法は次の通りです(相続税法24、25条)。

 

第1  定期金給付事由が発生しているもの(例:年金支給開始の60歳になった)

 

(1)有期定期金の場合

10年とか15年といった形で、期間が決まっている定期金のことです。
代表的なのは「確定年金」で、被保険者の生死にかかわらず一定期間は年金を受け取れる商品です。

下記a~cのうち、一番多い金額が評価額になります。
a 解約返戻金の金額
b 一時金の金額(定期金の代わりに一時金で受け取ることができる場合)
c 1 年あたりの平均額×残存期間に応ずる予定利率による複利年金原価率
(複利年金原価率は、ネットで検索すれば見つかります)

 

(2)無期定期金の場合

永久に定期金の給付を受けられるもの。現実にはほとんど存在しません。

下記a~cのうち、一番多い金額が評価額になります。
a 解約返戻金の金額
b 一時金の金額(定期金の代わりに一時金で受け取ることができる場合)
c 1 年あたりの平均額×予定利率

 

(3)終身定期金の場合

亡くなるまでの間、定期金の給付を受けられるもの。いわゆる『終身年金』の保険商品。

下記a~cのうち、一番多い金額が評価額になります。
a 解約返戻金の金額
b 一時金の金額(定期金の代わりに一時金で受け取ることができる場合)
c 1 年あたりの平均額×平均余命に応ずる予定利率による複利年金原価率
(平均余命は、厚生労働省HPの完全生命表を利用。複利年金原価率は、ネットで検索すれば見つかります)

相続の場面では、被保険者=被相続人の場合は、保証期間がない終身定期金は評価の対象になりません(相続人は何も受け取れないので)。

 

(4)有期定期金だが、被保険者が中途で亡くなった後は支給されないもの

契約者がAさんで「被保険者であるBさんが60歳になったら10年間年金を払います。しかしBさんが亡くなった後は支給しません」という契約です。仮にAさんが亡くなってもBさんが生きている限り期間中は支給されます。

代表的な商品が「有期年金」で、被保険者の生死にかかわらず支給されるのが「確定年金」とは区別します。

この場合、(1)有期定期金の場合(3)終身定期金の場合との両方で評価し、少ない金額のほうが評価額になります。
亡くなってしまえば10年もらえないので、少ないほうで評価します。

なお、 相続の場面では、被保険者≠被相続人の場合にだけ評価の対象になります(被保険者=被相続人であれば、相続人は何ももらえないので評価の対象になりません)。

 

(5)終身定期金だが、被保険者が亡くなった後でも一定期間に限り継続して支給されるもの

いわゆる『保証期間付き終身年金』のことです。
たとえば、契約者がAさんで「Aさんが生存中はAさんに年金を払います。ただし支払開始日より一定期間内にAさんが亡くなった場合には、その一定期間のうち残存期間については、Aさんの遺族(継続受取人)に年金を払い続けます」というような契約です。もちろん被保険者≠被相続人であることもあります(例:夫が妻にかけるケース)

この場合、(1)有期定期金の場合(3)終身定期金の場合との両方で評価し、多い金額のほうが評価額になります。

 

 

第2 定期金給付事由が発生していないもの(例:年金支給開始前に死亡)

この場合には、基本的に解約返戻金をもって評価します。

 

 

おまけ:なぜ定期金に関する権利の財産評価は難しいのか

余談ですが、定期金に関する権利の財産評価は、どうしてこうも複雑なのでしょうか?
興味ない方は、以下は余談ですので無視して下さい

たとえば、あなたが、ある人から「今すぐ1000万円もらうのと、今後10年にわたって毎年100万円もらうのとどっちがいい?」と聞かれたら、「今すぐ!」と答えるのではないでしょうか?

希望すれば今すぐ1,000万円もらえるのですから、わざわざもらうのに10年かけるならば、そこそこの金利でも上乗せしてもらわなければ割があいません。

反対に、渡すほうの立場から考えると、10年かけて総額1,000万円を渡せばいいのに、あえて今すぐ全額を渡さなければならないとしたら、1,000万円全額ではなく多少割り引いてもらわないと釣り合いません。1,000万円全部をすぐに渡してしまったら、今後10年間に受け取ることができる運用利益がなくなってしまうからです。

ですから、「今後10年にわたって総額で1,000万円受け取ることができる権利」というものは、現在の時点では1,000万円の財産であると評価することはできず、現在の価値はもっと低いと考えなければおかしいことになります。

定期金に関する権利の中でも代表的な、『年金形式で受け取る保険金』についてもこれと同じことが言えます。だからこそ、年金形式よりも一括受け取りのほうが、受取総額が少なくなるわけです。

では、定期金に関する権利の『現在の』価値をどうやって計算するのでしょうか?
数学的にこれを計算することは不可能ではありませんが、その計算式は複雑です。

さいわい、一般人がそんな計算をしなくても、保険会社が計算する解約返戻金や一時金というものは、要はこの理屈をもとに計算されていますから、これらを活用して財産評価をすれば良いとされているわけです。

ただし、商品によって解約返戻金がなかったり(収入保障保険は基本的に掛け捨て)、給付期間が決まっていたり決まっていなかったりするので、どうしても定期金に関する権利の評価は難しくなってしまうのです。

定期金(おまけ)

(注1)
「定期金」とは、年金のことだけを指す言葉ではありません
たとえば、AさんがBさんに「今後20年間、毎年1月1日に100万円をあげる」という『定期贈与契約』を締結すると、Bさんが持っている権利もまた『定期金に関する権利』です。
(ちなみに、
契約した年に、有期定期金に関する権利の贈与を受けたものとして、贈与税が課税されてしまいます)

とはいえ、このような気前のいい話が、世の中にごろごろ転がっているはずがありません。 ほとんどの場合、もらうお金は、もらう前に自分で積み立てているケースが大半です。
たとえば、保険料と言う形で一定期間積み立て、一定の時期が来たら年金として受け取る『個人年金保険』が代表的です。

そのため、相続などの場面で『定期金』といえば、ほとんどの場合、このような個人年金や生命保険金等を年金形式で受け取る場合の権利のことを指します。

 

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年2月6日 | カテゴリー :

Q058 生前贈与なのに相続税?

【Question】

相続税対策になるからという理由で、父は私に、贈与税の基礎控除額以内で毎年財産を贈与してきました。
ところが、父に相続が起きた場合に、生前贈与された財産も相続税がかかることがあると聞きました。これはどのような意味ですか?

 

【Answer】

相続税対策をする上で、連年贈与の活用はとても有効です。

ただし、相続開始前3年以内の贈与については、贈与税を払っていても払っていなくても、相続税の課税対象として加算することになっています。逆にいえば、3年より前の生前贈与は相続税の対象に加算しません。

従いまして、連年贈与で相続税対策をするならば、早ければ早いほど効果が大きくなります。

 

【Reference】

死亡前3年以内に贈与されていた財産は、贈与税でなく相続税

被相続人が亡くなった時点ですでに生前贈与されていた財産は、当然、もらいうけた人の財産であって故人の遺産(相続財産)ではありません。

ところが、亡くなる前の3年以内に被相続人が贈与した財産については、”相続税”がかかる場合があります。 どのような場合かと言うと、生前贈与を受けた人が、贈与した人の相続人(包括受遺者を含む)でもある場合です。

「贈与税の間違いじゃないの?」と思われるかもしれません。ごもっともです。
どうして生前贈与なのに、贈与税ではなく相続税がかかるのでしょうか?

もしも相続税という制度だけがあって贈与税という制度がなければ、相続税を逃れるためにはバンバン生前贈与してしまえばいいことになります。 このような相続税逃れを防ぐために、贈与税という仕組みを用意し、あえて相続税より高い税率にしているのです。
しかし何でもかんでも高い贈与税がかかるのでは納税者もたまりませんから、毎年110万円までの贈与ならば、贈与税は非課税とされています(暦年課税)。ここがポイントです。

もしも、余命わずかと宣告された後に、この毎年110万円の贈与非課税枠をフル活用して駆け込み的に生前贈与すれば、それによって遺産が少なくなりますから、意図的に相続税を減らすことができてしまいます。 反対に、高い贈与税を払って財産をもらいうけたのに、その後まもなく贈与者が亡くなってしまったならば、「亡くなるまで待って相続でもらっていれば、税金が生前贈与よりも安かったのに・・・」ということで不公平感が強くなってしまいます。

そこで、相続人となる人が、被相続人が亡くなる前の3年以内に遺産とは別に生前贈与を受けていた場合には、贈与税を払っているかどうかに関わりなく、すべて相続税の対象にすることにしました。 また、もし生前贈与を受けた時に納付した贈与税があればこれを相続税から差し引くことができるようにし、さらに納付済みの贈与税が相続税額よりも大きければ差額を還付することができるようにして、不公平を解消することにしたのです。

ただし、一つ例外があります。
居住用不動産にかかる贈与税の配偶者控除』を受けた財産の場合には、あげた人(贈与者)がその後3年以内に亡くなった場合でも相続税の対象にはなりません
この制度は、20年間連れ添った配偶者に居住用財産を贈与する場合には、一定額まで無税とすることで内助の功に報いるための制度です。そのため、贈与者がその後まもなく亡くなったからといって「やっぱり相続税を払ってください」とは、さすがの税務署も言えないわけです。

 

生前贈与の相続税加算をするときの注意点

死亡前3年以内の贈与財産を相続税の対象に加える場合、いくつか注意点があります。

(1)被相続人からの贈与財産のみが相続税の対象になる(相続税法19条)

被相続人以外からの贈与は対象になりません。
たとえば、毎年、父と母の双方から贈与を受けていた人がいて、ある時、父が亡くなった場合には、亡くなる前3年以内に父から受けていた贈与だけが対象になり、母からの贈与は対象になりません。

 

(2)対象になるのは『贈与の時における価額』(相続税基本通達19-1)

相続税に贈与財産を加算する場合には、相続発生時ではなく贈与時の時価を加算します。
たとえば、贈与時には価額が500万円だったが、相続時には600万円に値上がりしていた贈与財産については、相続税の対象として加算するのはあくまでも贈与時の500万円です。

 

(3)「相続開始前3年以内」とは、亡くなった日から3年前の同じ日以降を指す(相続税基本通達19-2)

たとえば、平成26年1月30日に亡くなった場合、平成23年1月30日以降の贈与が対象になります。

 

(4)被相続人から相続や遺贈で相続財産やみなし相続財産(死亡保険金等)を受け取らなかった者への贈与は、対象にしない(相続税基本通達19-3)

たとえば、父が子に贈与し、その後3年以内に父が亡くなった場合でも、子が家庭裁判所で相続放棄の手続きをするなどしてまったく相続財産を受け取らなければ、相続税の対象にはなりません。贈与税だけで完結してしまえばいい話だからです。

 

相続時精算課税制度によって贈与された財産は相続税の対象

相続時精算課税制度の届出をしていた贈与財産は、そもそも相続税で贈与税を精算することを予定していたものですので、相続税の課税対象になります。
ただし、亡くなった日の時価ではなく、生前贈与した時の時価で評価します。

 

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年2月3日 | カテゴリー :

Q056 弔慰金や花輪代には相続税がかかるのか

【Question】

会社を経営していた父が、病気で亡くなりました。
役員死亡退職金については、退職金規程にもとづいて、役員会の決議後に5,000万円が支給されました。
しかし、そのほかに会社から『弔慰金』として600万円が支給され、『花輪代』も100万円支給されています。
会社の説明によれば、弔慰金は会社の弔慰金規程に基づいて支給したもので、役員会などの決議は必要ないとのことでした。
会社の人の話では、「最後の給料が月額100万円だったのでそうなりました」という説明でした。

死亡退職金がみなし相続財産として相続税の対象になることはわかりますが、これらの弔慰金や花輪代はどのように考えるのでしょうか。

 

【Answer】

退職手当等とは別に、弔慰金や花輪代を受け取った場合、その一部については非課税とされます。
業務外の死亡であれば死亡時の普通給与の6ヶ月分までは非課税となります。
最終給与が月額100万円ならば、100万円×6ヶ月=600万円は非課税です。
支給された弔慰金がちょうどこの金額になっているということは、きっとこの非課税枠を意識しているのでしょう。
ただし、この非課税枠を超えた金額については、退職手当金として相続税の対象になります。花輪代の100万円は、相続税の計算上は退職手当金等に含めて計算することになるでしょう。

 

【Reference】

役員や従業員が死亡した場合に会社から支給される金銭(現物支給含む)には、名目上は『死亡退職金』『退職手当金』『弔慰金』『花輪代』『葬祭料』などいろいろありますが、名目がどうであれ、実質的に被相続人の退職金であれば相続税の対象になります(相続税基本通達3-18)。

しかし、会社の役員などが死亡すると、死亡退職金を支給するには株主総会や取締役会の決議が必要になります。
そこで『弔慰金』などという名目で、退職金とは別に金品を支給することがあります(規則があれば、弔慰金の支給には原則として決議不要)。

このような弔慰金や花輪代には、遺族への見舞いという側面があります。一般的にお香典は贈与税が非課税とされていますから、弔慰金や花輪代もある程度は非課税としても良いのではないか・・・とも考えられます。もっとも、どこで区別するのか、現実的には難しい部分があります。

そこで、相続税での取り扱いについては、次のようになりました(相続税基本通達3-20)

弔慰金・花輪代・葬祭料等、退職手当金とは別に支給されたものについて、
1.実質的に退職金ならば、それは相続税の対象にする。
2.実質的に退職金ではないものについては、次に掲げる金額を上限として、相続税の対象にしない。 その金額を超える部分に相当する金額は、退職手当金等として相続税の対象とする。
(1) 業務上の死亡の場合 :被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額
(2) 業務外の死亡 の場合:被相続人の死亡当時の普通給与の6ヶ月分に相当する額
(注 普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。)

 

税法上の退職手当金等に該当しない弔慰金など

なお、ご質問とは関係ありませんが、以下の法律等の規定により遺族が受ける弔慰金等については、相続税の課税対象には含めません(相続税基本通達3-23)。

(1) 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第12条の8第1項第4号及び第5号((業務災害に関する保険給付))に掲げる遺族補償給付及び葬祭料並びに同法第21条第4号及び第5号((通勤災害に関する保険給付))に掲げる遺族給付及び葬祭給付

(2) 国家公務員災害補償法(昭和26年法律第191号)第15条((遺族補償))及び第18条((葬祭補償))に規定する遺族補償及び葬祭補償

(3) 労働基準法(昭和22年法律第49号)第79条((遺族補償))及び第80条((葬祭料))に規定する遺族補償及び葬祭料

(4) 国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)第63条((埋葬料及び家族埋葬料))、第64条及び第70条((弔慰金及び家族弔慰金))に規定する埋葬料及び弔慰金

(5) 地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)第65条((埋葬料及び家族埋葬料))、第66条及び第72条((弔慰金及び家族弔慰金))に規定する埋葬料及び弔慰金

(6) 私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)第25条((国家公務員共済組合法の準用))の規定において準用する国家公務員共済組合法第63条、第64条及び第70条に規定する埋葬料及び弔慰金

(7) 健康保険法(大正11年法律第70号)第100条((埋葬料))に規定する埋葬料

(8) 船員保険法(昭和14年法律第73号)第72条((葬祭料))に規定する葬祭料

(9) 船員法(昭和22年法律第100号)第93条((遺族手当))及び第94条((葬祭料))に規定する遺族手当及び葬祭料

(10) 国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(昭和22年法律第80号)第12条((弔慰金))及び第12条の2((特別弔慰金))に規定する弔慰金及び特別弔慰金

(11) 地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)第31条((遺族補償))及び第42条((葬祭補償))に規定する遺族補償及び葬祭補償

(12) 消防組織法(昭和22年法律第226号)第24条((非常勤消防団員に対する公務災害補償))の規定に基づく条例の定めにより支給される消防団員の公務災害補償

(13) 従業員(役員を除く。以下この(13)において同じ。)の業務上の死亡に伴い、雇用主から当該従業員の遺族に支給された退職手当金等のほかに、労働協約、就業規則等に基づき支給される災害補償金、遺族見舞金、その他の弔慰金等の遺族給付金(当該従業員に支給されるべきであった退職手当金等に代えて支給される部分を除く。)で、(1)から(12)までに掲げる弔慰金等に準ずるもの

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年1月28日 | カテゴリー :

Q055 死亡退職金にかかる相続税とは(みなし相続財産その2)

【Question】

夫が亡くなりました。相続人は妻である私と子供2名です。

夫の勤務先の社内規定で、死亡退職金について第一順位の受取人が配偶者となっていたため、妻である私が夫の退職金2,000万円を受け取りました。

この場合、私のほうで退職所得として確定申告をすればいいのでしょうか。

 

【Answer】

いいえ、死亡退職金は通常の退職金と異なり、『相続税』が課税される可能性があります。
確定申告ではなく、相続税がかかる場合には相続発生から10ヶ月以内に相続税申告をします。

なお、死亡退職金を相続人が受け取る場合には、遺族の生活保障という目的があるため、相続税について一定の金額が非課税になっています。
死亡退職金の非課税限度枠は『500万円×法定相続人の数』で、あなたの場合は法定相続人が3人ですから、受け取った2,000万円のうち1,500万円(500万円×法定相続人3人)が非課税となります。

非課税の1,500万円を超える500万円については、死亡退職金以外の財産と合算して相続税の課税対象となります。
合算した結果、相続税の基礎控除額を下回るならば、相続税の申告をする必要はありません。

 

 

【Reference】

故人が在職中に亡くなった場合に勤務先から支給されるお金が死亡退職金です。
死亡退職金は受取人固有の財産とされ、本来は相続財産に含まず、遺産分割の対象にもなりません(受取人が指定されている場合)。

しかし、故人の死亡によって遺族が財産を取得するという点では本来の相続財産と類似しているため、『みなし相続財産』として相続税の課税対象になってしまいます。
死亡退職金は家庭裁判所で相続放棄の手続きをしても受け取れますが、その場合でも死亡退職金を受け取ったら相続税がかかる可能性があるのです。

厳密には、被相続人の死亡によって、被相続人(亡くなった人)に支給されるべきであった死亡退職金(注1)を遺族が受給する場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の対象となります(仮に3年を超えて支給されたら、受給者の一時所得として所得税・住民税の課税対象)。

ただし、死亡退職金を受け取ったのが相続人であるかないかによって、税務上の扱いが違います。

 

(1)死亡退職金を相続人が受け取った場合

相続人が死亡退職金を受け取った場合

死亡退職金を被相続人の『相続人』が受け取った場合には、相続税の対象となります。

相続人が受け取る死亡退職金には、故人に近い遺族の生活を保障するという重要な目的があります。そこで相続税について一定の金額が非課税になっています。

死亡退職金の非課税限度枠 : 500万円×法定相続人の数

※受け取ったすべての死亡退職金を合計して、その受け取った金額が非課税限度枠を超えた場合に、その超過額が他の相続財産と合算されて相続税の対象となります。

※非課税限度枠を計算する際には、受取人となっていない法定相続人もその人数に含みます。

基礎控除と同様、家裁で相続放棄した人も法定相続人の数に入れてかまいません。養子の数え方も同じです。

 

(2)相続人以外の個人が受け取った場合

死亡退職金を相続人以外の個人が受け取る場合

死亡退職金を故人の『相続人以外の個人』が受け取った場合でも、相続税の対象となります。遺贈によってもらったものとみなされるからです。

ただし、(a)の相続人が受け取る場合と違い、非課税枠はありません。相続人が受け取る場合に比べると税法上不利です。

なお、家庭裁判所で相続放棄の申述をした人や相続欠格等によって相続権を失った人は、相続権はありませんが死亡退職金を受け取ることは可能です(受取人固有の財産なので)。ただし、退職金を受け取る以上相続税がかかり、しかも相続人でないために非課税枠はありませんので注意が必要です。

 

(注1)税法上は『退職手当金等』と言います。実際の呼び方は『退職手当』『功労金』等さまざまでも、実質的に被相続人の死亡退職金として支給されるお金等のことを総称して『退職手当金等』と呼びます。したがって、現物で支給された場合も含まれます。なお、この記事の上では、なじみやすい『死亡退職金』と表現しています。

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年1月27日 | カテゴリー :

Q054 死亡保険金にかかる税とは(みなし相続財産その1)

【Question】

夫が亡くなりました。相続人は妻である私のほかに、子供が2人います。
遺産としては古いマンションと少々の預金だけです。
夫はひとつだけ生命保険に加入しており、保険金受取人に指定されていた私が保険金を受け取りました。
取得した保険金額が2,000万円もあるので,何かしら税金がかかるだろうと思ったのですが、保険会社の人は「お客様の場合は税金はかからない可能性が高い」と言います。どうして税金がかからないのでしょうか?

 

【Answer】

契約者(保険料負担者)と被保険者が両方ともご主人で、その死亡保険金を被保険者の相続人であるあなたが受け取った場合は、『相続税』が課税される可能性があります。

死亡保険金を相続人が受け取る場合には、遺族の生活保障という目的があるため、相続税について一定の金額が非課税になっています。
死亡保険金の非課税限度枠は『500万円×法定相続人の数』で、あなたの場合は法定相続人が3人ですから、受け取った2,000万円のうち1,500万円(500万円×法定相続人3人)が非課税となります。

非課税の1,500万円を超える500万円については、死亡保険金以外の財産(マンションや預金の他、生前贈与財産や死亡退職金等)と合算して相続税の課税対象となります。
合算した結果、相続税の基礎控除額を下回るならば、相続税の申告・手続きは必要がありません。

 

【Reference】

死亡保険金 (注1)を受け取った場合の課税関係は、契約者(保険料負担者)と保険金受取人との関係によって違います。

 

(1)相続税の課税対象となる場合

(a)相続人が受け取った場合

死亡保険金の受取人が相続人の場合

契約者(保険料受取人)と被保険者が同じ人で、その死亡保険金を被保険者の『相続人』にあたる人が受け取った場合には、相続税の対象となります。

本来、死亡保険金を相続人が受け取った場合でも、民法上は受取人固有の財産とされ、遺産には含まれません。 しかし実質的には、受取人が相続によって財産を受け取ったという点では通常の遺産と変わりませんから、死亡保険金を遺産とみなすのです。
そのため死亡保険金は、税法上『みなし相続財産』と呼ばれます。

相続人が受け取る死亡保険金には、故人に近い遺族の生活を保障するという重要な目的があります。そこで相続税について一定の金額が非課税になっています。

死亡保険金の非課税限度枠 : 500万円×法定相続人の数

※受け取ったすべての死亡保険金を合計して、その受け取った金額が非課税限度枠を超えた場合に、その超過額が他の相続財産と合算されて相続税の対象となります。

※非課税限度枠を計算する際には、受取人となっていない法定相続人もその人数に含みます。

基礎控除と同様、家裁で相続放棄した人も法定相続人の数に入れてかまいません。養子の数え方も同じです。

 

(b)相続人以外の個人が受け取った場合

死亡保険金を相続人以外の個人が受け取る場合

契約者(保険料受取人)と被保険者が同じ人で、その死亡保険金を被保険者の『相続人以外の個人』が受け取った場合でも、相続税の対象となります。遺贈によってもらったものとみなされるからです。

ただし、(a)の相続人が受け取る場合と違い、非課税枠はありません。相続人が受け取る場合に比べると税法上不利です。

なお、家庭裁判所で相続放棄の申述をした人や相続欠格等によって相続権を失った人は、相続権はありませんが死亡保険金を受け取ることは可能です(受取人固有の財産なので)。ただし、保険金を受け取る以上相続税がかかり、しかも相続人でないために非課税枠はありませんので注意が必要です。

 

(2)所得税の課税対象となる場合

死亡保険金に所得税がかかる場合

契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ人になっている死亡保険金の場合は、一時所得として所得税・住民税の対象になります。
一時所得は次の計算式で計算します。
一時所得金額=(受取保険金-支払保険料総額-50万円)×1/2

一時所得も、確定申告の際に総合課税として他の給与所得等と合算して所得税を計算しますが、上の計算式からお分かり頂けるように、利益の1/2に対してしか課税されません。言い方を変えれば、所得が高く所得税率が50%という人でも、受取保険金についての実効税率は25%である、とも言えます(注2)。

 

(3)贈与税の課税対象となる場合

死亡保険金に贈与税がかかる場合

契約者(保険料負担者)と被保険者が別の人で、契約者以外の個人が死亡保険金を受け取った場合は、全額が贈与税の対象になります。

贈与税の計算式は以下のとおりです。
(年間で贈与を受けた価額の合計-基礎控除110万円)×速算表の税率-速算表の控除額

 

(注1)ここでいう『死亡保険金』には、生命保険契約によるものだけでなく、たとえば偶然の事故に起因して支払われる傷害保険による死亡保険金も含みます。
ただし、交通死亡事故によって遺族が加害者側から受け取った損害賠償金は、相続税の対象ではなく遺族の所得となりますが、所得税法上非課税です。

(注2)近頃の流行として、孫への生前贈与と生命保険を組み合わせた相続税対策が流行しています。
暦年課税(年110万円まで非課税)で現金を孫に贈与すれば、相続財産が減るので相続税対策になりますが、いっぽうで孫の金銭感覚がおかしくなってしまうかもしれません。そこで、孫に(2)のパターン(契約者=受取人=孫、被保険者=祖父)で生命保険に加入させるのです。そうすれば孫は自由に現金を引き出せなくなります。
祖父が亡くなった時点で、孫が受け取る保険金には所得税・住民税がかかりますが、一代飛ばしで財産を移転することができる他、相続税と所得税・住民税の税率の差をうまく利用すれば、節税につながる可能性もあります。
(ただし、生前贈与と生命保険を組み合わせる場合には、生前贈与の成立と生命保険の選択に細心の注意が必要です。)

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年1月24日 | カテゴリー :

Q053 相続税がかからない財産とは(非課税財産)

【Question】

私の知り合いが「お墓や仏壇仏具には相続税がかからないから、相続税対策として純金製の仏像を買おうと思う」と話していました。本当に相続税対策になるのでしょうか。

 

【Answer】

墓地や墓石・仏壇仏具等は、相続税の非課税財産です。

墓地や墓石は、特に都市部では高額になることが多く、生前に購入しておくと相続税対策になります。
反対に、亡くなった後に『相続人が』墓地や仏壇などを購入すると、その相続人自身の財産となるため、相続税の計算ではまったく考慮してもらえません。

ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるようなもの(お金に替えられるようなもの)は、相続税の課税対象となります。
純金製の仏像などはお金に替えられますから、相続税対策にはならないと考えられます。

 

【Reference】

相続税は、原則として、相続人が被相続人から相続または遺贈(死因贈与を含む)により取得したすべての財産に対してかかります。
しかし、中には国民感情や政策的な配慮から、一定の財産については相続税の課税対象から除外されることになっています。

たとえば墓地や仏壇などには相続税がかかりません。これらは祖先を敬うために必要な財産であってお金に替えることができるものではありませんから、これに課税するとなれば大きな反発が予想されます。そこで、たとえ高額なものであっても相続税は課税されません。

ただし、商品として売るために購入したものや、投資の対象として持っていた場合には、相続税の課税対象になります。これらは祖先を敬うためのものではなくお金に替えることも可能だからです。

 

1.非課税財産の具体例

相続税がかからない財産のうち主なものは次のとおりです。

(1)墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。

(2)宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの

(3)地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利

(4)相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分(詳細別途)

(5)相続や遺贈によってもらったとみなされる退職手当金等のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分(詳細別途)

(6)個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
(相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります)

(7)相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によってもらった金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

 

2.庭内神し(ていないしんし・庭内神祠)の敷地について

相続税の非課税財産について、比較的最近話題になったのが、『庭内神し』の敷地についての平成24年6月21日東京地裁判決です。

『庭内神し』とは、屋敷内にある神の社や祠などでご神体を祀り、日常的に礼拝されているものをいいます。
時折、自宅の庭や敷地の一部でお地蔵さんやお稲荷さんをお祀りしているのを見かけますが、そのことです。
広く地域に根付いているものばかりではなく、特定の者・家族だけがお祀りしている場合も含まれます。

庭内神しそれ自体は、以前から相続税の非課税財産でした(相続税基本通達12-2)。
しかし移動可能な庭内神しも少なくありませんので、庭内神しの”敷地”については原則として相続税は非課税になりませんでした。

これが上記の東京地裁判決で国側が敗訴して控訴せず確定したため、税務上の取り扱いが変更されました。
つまり、一定の条件下で、庭内神しの敷地や附属設備も相続税の非課税財産とされました。

一定の条件とは、以下のとおりです。
1.『庭内神し』の設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形
2.その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的
3.現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能の面
上記3点を踏まえた上で、その設備及び附属設備等の機能の面から、その設備と社会通念上一体のものとして日常礼拝の対象とされているといってよい程度の密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備である場合

この場合に初めて、庭内神しの敷地や附属設備も非課税になります。
今後、相続税対策として流行するかもしれません?が、適用は限定的ですのでご注意ください。

 
厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年1月21日 | カテゴリー :

Q052 相続税がかかる財産とは

【Question】

遺産のうち、預金や土地建物に相続税がかかるということはわかりますが、次のような財産には、相続税はかかりますか?
(1)借地権
(2)外国にある財産
(3)テレビ
(4)特許権
(5)生命保険金
(6)死亡退職金
(7)墓、位牌、仏壇
(8)生前贈与された財産

【Answer】

故人が亡くなられた日に持っていた財産でお金に見積もることができるものは、有形の物も無形の物もすべて相続税の対象になります。(1)借地権、(2)外国にある財産、(3)テレビ、(4)特許権は、どれも相続税の対象です。
ただし、(7)墓、位牌、仏壇は、原則として非課税財産とされています。

また、(5)生命保険金や(6)死亡退職金は、受取人固有の財産であって民法上の相続財産ではありませんが、相続財産に準じるものとみなして相続税の対象になることが多いです(みなし相続財産)。もっとも、生命保険金・死亡退職金には一定の控除額が設定されています

(8)の生前贈与された財産は、贈与税ではなく相続税の対象になるケースがあります。

【Reference】

相続や遺贈(死因贈与を含む)によって取得した財産には相続税がかかる(Q047)わけですが、その財産の中にも相続税がかからないものがあり(非課税財産)、反対に、意外な財産に相続税がかかることもあります。

ここでは、『相続税がかかる財産』を整理してみます。

 

1.民法上の相続財産(本来の相続財産)

故人が亡くなった日に持っていた、お金に見積もることができるすべての財産は、有形・無形を問わずすべて相続財産であり、相続税の対象になります。
相続財産の例(遺産)

なお、借金などのマイナスの相続財産は、相続税の計算を行う際には差し引きます(控除)。

 

2.税法上のみなし相続財産

代表的なものが『死亡保険金』と『死亡退職金』です。
どちらも原則として「受取人固有の財産」とされ、民法上の相続財産からは除外されるため、遺産分割の対象にはなりません。
しかし、相続が発生したことによって受け取ることができる財産であるという点では、上記1の民法上の相続財産と変わるところがないので、相続税の課税対象にはなります。
そこで、これらの財産のことを(税法上の)『みなし相続財産』と呼びます。

死亡保険金死亡退職金以外にも、定期金に関する権利や債務免除による利益など、税法上のみなし相続財産にはいくつかの種類があります。
また、死亡保険金は、契約形態によっては民法上の相続財産に含まれてしまって遺産分けの対象になったり、相続税ではなく贈与税がかかる場合などもあります。

なお、みなし相続財産のうち死亡保険金死亡退職金については、全額が相続財産になるわけではなく、非課税限度額を超えた部分だけが相続財産に加算されます
この非課税限度額は、死亡保険金・死亡退職金とも、それぞれ『500万円×法定相続人の数』です。

 

3.死亡前3年以内に贈与されていた財産

被相続人が亡くなった時点ですでに生前贈与されていた財産は、当然、もらいうけた人の財産であって故人の遺産(相続財産)ではありません。

ところが、亡くなる前の3年以内に被相続人が贈与した財産については、”相続税”がかかる場合があります。
どのような場合かと言うと、生前贈与を受けた人が、贈与した人の相続人(包括受遺者を含む)でもある場合です。

「贈与税の間違いじゃないの?」と思われるかもしれません。ごもっともです。
どうして生前贈与なのに、贈与税ではなく相続税がかかるのでしょうか?

もしも相続税という制度だけがあって贈与税という制度がなければ、相続税を逃れるためにはバンバン生前贈与してしまえばいいことになります。
このような相続税逃れを防ぐために、贈与税という仕組みを用意し、あえて相続税より高い税率にしているのです。
しかし何でもかんでも高い贈与税がかかるのでは納税者もたまりませんから、毎年110万円までの贈与ならば、贈与税は非課税とされています(暦年課税)。ここがポイントです。

もしも、余命わずかと宣告された後に、この毎年110万円の贈与非課税枠をフル活用して駆け込み的に生前贈与すれば、それによって遺産が少なくなりますから、意図的に相続税を減らすことができてしまいます。
反対に、高い贈与税を払って財産をもらいうけたのに、その後まもなく贈与者が亡くなってしまったならば、「亡くなるまで待って相続でもらっていれば、税金が生前贈与よりも安かったのに・・・」ということで不公平感が強くなってしまいます。

そこで、相続人となる人が、被相続人が亡くなる前の3年以内に遺産とは別に生前贈与を受けていた場合には、贈与税を払っているかどうかに関わりなく、すべて相続税の対象にすることにしました。
また、もし生前贈与を受けた時に納付した贈与税があればこれを相続税から差し引くことができるようにし、さらに納付済みの贈与税が相続税額よりも大きければ差額を還付することができるようにして、不公平を解消することにしたのです。

ただし、一つ例外があります。
『居住用不動産にかかる贈与税の配偶者控除』を受けた財産の場合には、あげた人(贈与者)がその後3年以内に亡くなった場合でも相続税の対象にはなりません。
この制度は、20年間連れ添った配偶者に居住用財産を贈与する場合には、一定額まで無税とすることで内助の功に報いるための制度です。そのため、贈与者がその後まもなく亡くなったからといって「やっぱり相続税を払ってください」とは、さすがの税務署も言えないわけです。

 

4.相続時精算課税制度によって贈与された財産

相続時精算課税制度の届出をしていた贈与財産は、そもそも相続税で贈与税を精算することを予定していたものですので、相続税の課税対象になります。ただし、亡くなった日の時価ではなく、生前贈与した時の時価で評価します。

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年1月20日 | カテゴリー :

Q049 相続税の申告と納税は、どうやっておこなうのか?

【Question】

実家は東京なのですが、兄は仙台に、私は大阪に住んでいます。

父にもしものことがあったら、相続税の申告をすることになりそうです。
そうなった場合、私は、住んでいる大阪で、自分が相続した財産についてのみ申告をすればいいのでしょうか。

 

【Answer】

まず、相続税の申告書を提出する先は、相続人の住所地ではなく、被相続人が亡くなったときの住所地を所轄する税務署です。あなたの場合は東京になります。

次に、相続税額の計算方法は、相続人それぞれが実際に取得した財産に直接税率をかける、という単純なものではありません。
『課税遺産総額から相続税の総額をはじき出し、これを相続人ごとに実際に取得した財産の割合に応じて比例配分する』というものですから、相続財産が全体でどのくらいあるのかを明らかにしなければ税額を求めることができず、相続税の申告をすることもできない仕組みになっています。

従いまして、相続税の申告はあなた一人で済ませるのではなく、ごきょうだいで協力して行うのが基本です。

 

【Reference】

相続税の申告書の提出先

相続税の申告書を提出する先は、被相続人が亡くなったときの住所地を所轄する税務署(正確には税務署長)です。相続人の住所地を所轄する税務署ではありません。

 

相続税の申告書の提出期限

相続税の申告書の提出期限(申告期限)は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月目の日、です。
たとえば、亡くなったのが6月10日ならば、申告期限は翌年4月10日になります。ただし申告期限の日が土日祝日にあたるときは、これらの日の翌日まで申告期限が延びます。

申告期限よりも遅れて申告書を提出した場合には、無申告加算税という重いペナルティがあります。

なお、申告期限に間に合わないと、原則として配偶者控除や小規模宅地の特例を受けることができません
そのため、「遺産総額が基礎控除額を超えるけれども、特例の適用によって税額を0にしたい」という場合には、結果的に税金を納めなくても申告する必要があります。ご注意ください。

また、申告期限内に手続きを取らないと、延納や物納の適用が認められません。

 

相続税の申告書の提出方法

相続税の申告書は、同じ被相続人から相続・遺贈などによって財産を取得した人が共同で作成して提出するのが基本です。

なぜなら、相続税額を計算するには、『課税遺産総額から相続税の総額をはじき出し、これを相続人ごとに実際に取得した財産の割合に応じて比例配分する』必要があり、相続財産が全体でどのくらいあるのかを明らかにしなければ税額を求めることができず、相続税の申告をすることもできないからです。

しかし、どうしても共同で作成して提出することができなければ、個別に申告書を提出することも可能です。

また、相続人の間で遺産分割(誰がどの遺産を承継するかを決めること)が終わらないと、正確な相続税額を求めることができない構造になっています。それでは、相続人間でもめてしまい、申告期限内に遺産分割ができない場合にはどうなるでしょうか?

この場合には、簡単にいえば、民法が定める相続分(法定相続分)に応じて遺産分割をしたものと仮定して、とりあえず各相続人が相続税を納めます。そして、遺産分割が完了した後に、実際に承継した財産と法定相続分とを比べ、その差に応じた相続税の追加納付または税還付によって精算することになります。

 

相続税の納付

相続税の納付期限は、申告期限と同じく、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月目の日、です。

納付場所は最寄りの金融機関(銀行や郵便局等)または所轄の税務署です。電子納税(e-tax)を利用して納めることもできます。

納付方法は、現金一括払いが原則です。
申告期限までに手続きを取れば『延納・物納』が認められることもありますが、基本的に納税者に有利な制度ではありません。

期限よりも後に納付すると、延滞税という重いペナルティがあります。

 
厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年1月14日 | カテゴリー :

Q047 遺言や死因贈与でもらった財産にかかるのは贈与税?相続税?

【Question】

古くからの友人が亡くなりました。

彼は生涯独身で子供がいないため、あらかじめ遺言を書いていました。

その遺言の中で、財産の一部を私に”遺贈”するというふうに書かれていたのですが、贈与税の税率が高いことは聞いておりますので税金が心配です。

 

【Answer】

『遺贈』によって財産を受け取った場合には、税率が高い贈与税ではなく、相続税がかかる可能性があります。
故人と血縁が無い場合でも、かかるとすれば「相続税」になります。
『相続税』ですから、相続財産の価格が相続税の基礎控除額以下ならば相続税はかかりませんし、基礎控除額を超える場合でも、税率は贈与税よりも低くなっています。

ただし、配偶者および1親等の血族以外の人が相続税を課される場合には、2割加算の対象になります。

 

【Reference】

 

『相続税』の対象になる4つのパターン

個人が被相続人(亡くなられた人)の財産を受け継ぐにあたって、次の4つのパターンでは『相続税』がかかる場合があります。

(1)相続
故人が生前に、財産を引き継ぐ人を決めていない場合。
引き継ぐ人は法定相続人に限られる。

(2)遺贈
故人が生前に、財産を引き継ぐ人を遺言で決めている場合。
引き継ぐ人は第三者でも良い。

(3)死因贈与
故人が生前に、ある特定の人と、自分の死後に財産をあげることを約束(契約)している場合。
引き継ぐ人は第三者でも良い。

(4)相続時精算課税制度を利用して贈与している場合
故人が生前に、ある特定の人に自分の財産をあげたが、贈与税の特例である相続時精算課税制度を利用している場合。
本来支払うべき贈与税は、相続税によって清算する。第三者は利用できない。

(2)遺贈や、(3)死因贈与では、第三者が故人の財産をもらうこともあるので『贈与税』がかかりそうな誤解がありますが、この場合にはあくまでも『相続税』の問題になります。

したがって、『相続財産の価格が相続税の基礎控除額以下』ならば、相続税はかかりません。
また、『相続財産の価格が相続税の基礎控除額を超える場合』でも、税率は贈与税よりも低くなっています。

ただし、配偶者および1親等の血族以外の人が相続税を課される場合には、2割加算の対象になります。

また、死因贈与によって不動産を所得した場合や、法定相続人以外の第三者が遺贈によって不動産を所得した場合には、相続税とは別に『不動産取得税』がかかります(一般的な相続によって不動産を取得した場合には不動産取得税はかかりません)。

こんなときに相続税がかかる

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年1月8日 | カテゴリー :