Q014 事実婚(内縁関係)でも遺族年金は受給できるか(遺族年金の受給要件)

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Q 私と夫は、事情があって入籍しておりません。
夫に万一のことがあると私は相続人になれないということは知っておりますが、遺族年金も受給できないのでしょうか。

 

A 事実婚(内縁関係)の場合であっても、『生計維持関係』等の受給要件を満たしていれば、遺族年金の受給資格があります。

 

1.遺族年金は相続財産にあたるか

家計を支える大黒柱が亡くなったとき、国がご遺族の生活を支えるための制度が遺族年金です。
故人がご加入されていた年金制度に応じて、『遺族基礎年金』『遺族厚生年金』『遺族共済年金』として支給されるものです。

結論からいえば、公的な遺族年金や遺族扶助料のような遺族給付は、相続財産ではありません。
公的年金の遺族年金などは、それぞれの年金法で受給権者が決まっており、受給できる順位も決められています。どの制度においても、入籍していない事実婚の配偶者も受給権者として認められています
故人が受け取って遺族が承継するものではなく受給権者固有の権利ですから、相続財産にはならず、遺産分割の対象にもなりません。
相続財産ではありませんから、相続放棄をしても堂々と受給することができます

遺族年金制度は受給者の生活を保障するための制度ですから、過去の裁判例は一貫して相続財産にも特別受益にもならないとしています。

 

2.年金は請求しないともらうことができない

遺族年金に限らず年金というものはすべて、請求しないともらうことができません。
請求手続きが遅れた場合でもさかのぼって5年間分は支給されますが、5年を過ぎてしまうと時効となり、もらうことができなくなっていまいます。

なお、国民年金から支給される『死亡一時金』のほうは2年で時効となり、2年を過ぎるともらえません。

 

3.『遺族基礎年金』の受給資格

主に故人が自営業者等の場合に支給される『遺族基礎年金』の受給要件は次の通りです。

(1)遺族基礎年金をもらう人の要件

①遺族基礎年金を受給しようとする方の年収が850万円未満であること(注1)
②亡くなった方と生計維持関係があったこと(注2)
③子のある妻、または、子であること(注3)

(注1)現在の年収が850万円以上あっても、退職などにより5年以内に850万円未満となる見込みがある場合は受給資格があります。この場合、退職年齢を明らかにするために会社の就業規則などを提出して証明します。
(注2)故人の収入にすべて依存していなくても、一部でも受給資格があります。共働きでも受給資格があります。
(注3)妻については転給制度がないため、再婚などによって受給資格を失うともらえなくなります。
子については、以下の場合に限り受給資格があります。以下の年齢を過ぎたり、結婚したりすると受給資格を失います
・18歳になった年度の3月31日まで
・障害年金の障害等級1級または2級に該当する20歳未満の子

(2)遺族基礎年金の、亡くなった人の要件

①国民年金の被保険者が死亡したとき。
②過去に国民年金の被保険者であった方(国内居住)で、60歳以上65歳未満の方が死亡したとき。
③すでに老齢基礎年金を受給している方が死亡したとき。
④すでに老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている方が死亡したとき。

(①または②に該当する場合は、次の遺族基礎年金の保険料納付要件を満たす必要があります。)

(3)遺族基礎年金の、保険料納付要件

①原則
死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があるときは、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が、被保険者期間の3分の2以上あることが必要です。

②特例
死亡日が平成28年4月1日よりも前で、65歳未満で亡くなった方の場合は、①の納付要件を満たしていなくても、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料納付済期間と保険料免除期間以外の被保険者期間(すなわち保険料未納期間)がない場合は、遺族基礎年金が支給されます。
(平成28年4月1日までは、過去1年間に滞納期間がなけれなければOKになっています。ただし、『死亡日の前日において』となっていますから、亡くなってからあわてて納付しても手遅れです)

 

4.『遺族厚生年金』の受給資格

 主に故人が会社員等の場合に支給される『遺族厚生年金』の受給要件は次の通りです。

(1)遺族厚生年金をもらう人の要件

①遺族厚生年金を受給しようとする方の年収が850万円未満であること(注1)
②亡くなった方と生計維持関係があったこと(注2)
③以下の条件に該当する遺族(配偶者と子、父母、孫、祖父母の順位)であること(注3)

(注1)現在の年収が850万円以上あっても、退職などにより5年以内に850万円未満となる見込みがある場合は受給資格があります。この場合、退職年齢を明らかにするために会社の就業規則などを提出して証明します。
(注2)故人の収入にすべて依存していなくても、一部でも受給資格があります。共働きでも受給資格があります。
(注3)下記のような年齢要件があります。
(a)妻(事実婚含む):年齢要件はありません(ただし、30歳未満の場合は5年間の有期年金)。転給制度がないため、再婚などによって受給資格を失うともらえなくなります。
(b)夫、父母、祖父母:55歳以上であること(ただし、支給開始は60歳からとなります。それまでは十分働けるからです)。転給制度はありません。
(c)子については、以下の場合に限り受給資格があります。以下の年齢を過ぎたり、結婚したりすると受給資格を失います。
・18歳になった年度の3月31日まで
・障害年金の障害等級1級または2級に該当する20歳未満の子

(2)遺族厚生年金の、亡くなった人の要件

①厚生年金の被保険者が死亡したとき。
②過去に被保険者であった間に初診日がある傷病により、初診日から5年以内に死亡したとき。
③障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したとき。
④すでに老齢厚生年金を受給している方または老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている方が死亡したとき。

(①または②に該当する場合は、次の遺族厚生年金の保険料納付要件を満たす必要があります)

(3)遺族厚生年金の、保険料納付要件

(遺族基礎年金と同じです。)
①原則
死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があるときは、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が、被保険者期間の3分の2以上あることが必要です。

②特例
死亡日が平成28年4月1日よりも前で、65歳未満で亡くなった方の場合は、①の納付要件を満たしていなくても、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料納付済期間と保険料免除期間以外の被保険者期間(すなわち保険料未納期間)がない場合は、遺族基礎年金が支給されます。 (平成28年4月1日までは、過去1年間に滞納期間がなけれなければOKになっています。ただし、『死亡日の前日において』となっていますから、亡くなってからあわてて納付しても手遅れです)

 

5.遺族共済年金の受給資格

主に故人が公務員等の場合に支給される『遺族共済年金』の受給要件は次の通りです。

(1)遺族共済年金をもらう人の要件

①遺族共済年金を受給しようとする方の年収が850万円未満であること(注1)
②亡くなった方と生計維持関係があったこと(注2)
③以下の条件に該当する遺族(配偶者と子、父母、孫、祖父母の順位)であること(注3)

(注1)現在の年収が850万円以上あっても、退職などにより5年以内に850万円未満となる見込みがある場合は受給資格があります。
(注2)故人の収入にすべて依存していなくても、一部でも受給資格があります。共働きでも受給資格があります。
(注3)下記のような年齢要件があります。
(a)妻(事実婚含む):年齢要件はありません(ただし、30歳未満の場合は5年間の有期年金)。転給制度があるため、再婚などによって受給資格を失うと、その遺族共済は次順位の受給権者に引き継がれます。
(b)夫、父母、祖父母:年齢制限はありませんが、支給開始は60歳からとなります(それまでは十分働けるからです)。転給制度があります。
(c)子については、以下の場合に限り受給資格があります。以下の年齢を過ぎたり、結婚したりすると受給資格を失います。
・18歳になった年度の3月31日まで
・障害年金の障害等級1級または2級に該当する子(こちらは年齢制限なし)。

(2)遺族共済年金の、亡くなった人の要件

①共済年金の組合員が死亡したとき。
②過去に共済年金の組合員であった間に初診日がある傷病により、初診日から5年以内に死亡したとき。
③障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある障害共済年金、または旧制度の障害年金の受給権者が、死亡したとき。
④すでに退職共済年金を受給している方または組合員期間が25年以上ある方が死亡したとき。

(3)遺族共済年金の、保険料納付要件

遺族共済年金については、保険料納付要件はありません(滞納期間が無いため)。

 

6.『寡婦年金』

第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が25年以上ある夫が亡くなった場合、10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻に対して、60歳から65歳になるまでの間『寡婦年金』が支給されます。

  • 年金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3。
  • 亡くなった夫が障害基礎年金の受給権者であった場合や、老齢基礎年金を受けたことがある場合は支給されません。
  • 妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合は支給されません。

 

7.死亡一時金

第1号被保険者として保険料を納めた月数(4分の3納付月数は4分の3月,半額納付月数は2分の1月,4分の1納付月数は4分の1月として計算)が36ヶ月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった時、その方によって生計を同じくしていた遺族(1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)に支給されます。

  • 死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円です。
  • 付加保険料を納めた月数が36ヶ月以上ある場合は、8,500円が加算されます。
  • 遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません。
  • 寡婦年金を受けられる場合は、どちらか一方を選択します。
  • 死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です

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