Q115 相場より低い価格で息子に土地を譲ったら(低額譲渡・親族間)

【Question】

相続対策の一環で、私が所有している土地の一部(時価5,000万円相当、路線価4,000万円相当)を、息子に譲ろうと考えています。

タダで譲ると贈与税が高いので、息子には2,000万円でこの土地を売却しようと思いますが、問題はありますか。

 

【Answer】

まず、贈与税の問題があります。

この取引によって息子さんは、時価5,000万円の土地を2,000万円で買うわけですから、実質3,000万円のトクをすることになります。
取引そのものは「売買」であって「贈与」ではありませんが、この3,000万円は贈与されたものとみなされて、贈与税が課税されるおそれがあるわけです。

また、相続対策としても不十分です。

相続対策としてこのような低額譲渡を息子さんとの間で行うと、他の相続人との関係では、時価との差額については贈与されたのと同じことですから、これが特別受益とされてしまい、相続の際に息子さんの取り分が少なくなる可能性があります。これを防ぐには、遺言を作成するか、または「持ち戻し免除の意思表示」をしておくべきです。
なお、低額譲渡も実質的には贈与である以上、遺留分減殺の対象になる可能性があり、こちらにも注意が必要です。

 

【Reference】

本件のご相談者の場合は、確かにこの土地をタダで「贈与」すれば、路線価が4,000万円とのことですから、これに対して贈与税が課税されます(時価が5,000万円でも、贈与税の計算上は相続税評価額を利用します)。

だからと言って、タダで「贈与」するのではなく、時価5,000万円の土地を2,000万円で「売買」したとしても、息子さんは実質的に差額3,000万円のトクをしたものとして、 贈与税を納めなければなりません。

このように、取引内容そのものは「売買」であって「贈与」ではない場合でも、実質的に贈与を受けたのと同じ利益がある場合には、贈与があったとみなされて贈与税が課税される仕組みが『みなし贈与課税』です。低額譲渡はその典型的なものの一つです(注)。

一般の贈与の場合には、当事者が贈与であるということを認識しているので、特に問題なく贈与税の申告をするのが通常だと思います。
ところが、低額譲渡の場合は、当事者は「売買」であると認識していますから、税務署からみなし贈与と指摘されて初めて気づくことが多いものです。
低額譲渡の際は、贈与税にくれぐれもご注意下さい。

 

なお、贈与税額を計算する際の財産評価は、通常は相続税評価の方法で行いますが、低額譲渡の対象となった不動産や上場株式については、通常の取引価額(時価)で評価することになっているので要注意です。

 

(注)資力を喪失して債務を弁済することが困難な人が、その債務を返済するために扶養義務者から低額で買った財産については、特別に贈与とはみなされないとされています(相続税法7条)。

 

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2014年7月25日 | カテゴリー :