【Question】
父が半年前に他界しました。
私の母は20年前に亡くなっており、その後父は再婚していますので、相続人は義理の母(再婚後の妻)と、先妻の子である私の2名です。
遺言公正証書によって全財産を義理の母が相続することになっていると聞きましたが、私にも遺留分があると聞いています。具体的にはどのように遺留分を請求していけばいいでしょうか。
【Answer】
お父様が亡くなったのが半年前とのことですから、遺言が有効であるならば、なるべく早く『遺留分減殺請求』の意思表示を行う必要があります。これは配達証明付き内容証明郵便で行うのが一般的です。
その後、相手方の反応を見ながら、場合によっては調停を申し立てたり、訴訟を提起したりして遺産を取り戻します。
【Reference】
遺留分は、期限内に請求しないと消えてしまう
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。
遺言による遺贈や生前贈与等によって遺留分が侵害された場合でも、そのような遺言や贈与がただちに無効になるわけではありません。遺留分権利者が、遺留分を超えて遺贈や贈与を受けた人(受遺者・受贈者)に対し、遺留分減殺請求をして初めて侵害された遺留分を取り返すことができます。遺留分減殺請求権は、請求しないと発生しない権利なのです(昭和41年7月14日最高裁判決の考え方)。
遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、”相続の開始”、および”減殺の対象となる遺贈・贈与があったこと”を、両方とも知った時から1年間で時効消滅し、請求できなくなります(民法1042条)。
遺留分減殺請求権を行使するには、受遺者・受贈者に対する一方的な通告(意思表示)で良いとされていますが、期限内に通告したことの証拠とするため配達証明付き内容証明郵便にしておきます(後に述べるように、遺留分減殺請求の効力発生日を特定するためでもあります)。
遺留分権利者が数人いる場合には、それぞれが自分自身の遺留分に基づいて個別に減殺請求権を行使できるので、共同で行使する必要はありません。
なお、相続開始から10年を経過すると、原則として問答無用で遺留分減殺請求権は消滅します。
(ただし不法行為を原因とする心神喪失の状況にあるのに法定代理人がいなかった事案や、被相続人を殺害した者による作為によって相続人が被害者死亡の事実を知りようがなかった事案等で、特殊な扱いがあります)
遺留分減殺請求は、何を対象とし、誰に請求するのか
遺留分減殺請求できる対象は、以下のとおりです。
(1)遺贈
(2)相続開始前1年以内になされた贈与(民法1030条)
(3)特別受益となる贈与(何年前でも。民法1044条が準用する903条)
(4)贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を与えることを承知したうえでなされた贈与(何年前でも)
(5)市価よりも非常に安い価格で売買されたようなケースでは、市価との差額を実質的な贈与として扱う(民法1039条)
ということは、遺留分減殺請求の相手方は、これらの受遺者・受贈者(亡くなっていればその相続人)ということになります。
もしも受遺者・受贈者等が目的物を第三者に譲渡している場合には、遺留分権利者は原則として受遺者・遺贈者に対して価額賠償を請求できるだけにとどまります。その第三者に対して「返して下さい」と言うことはできません(民法1040条、ただし例外あり)。
遺留分減殺請求の効力
内容証明等で1年以内に遺留分減殺請求権を行使すると、それが相手方に伝わった時点でただちに遺留分を侵害する遺贈・贈与は効力を失い、受遺者・遺贈者は遺贈・贈与の目的物を遺留分権利者に返さなければなりません。遺贈・贈与された財産が不動産のような特定の物であるならば、原則は現物返還です(民法1041条に「返還の義務」とある)。
減殺の対象が複数ある場合、順番が決まっています。これは次のQ074で説明します。
現物返還が原則ですが、受遺者・受贈者は、価額賠償によって、現物の返還義務を免れることができます(民法1041条1項)。遺留分減殺請求権が行使されると、不動産などは共有になってしまうことが大半ですから、価額賠償によって解決されることも少なくありません。
このように遺留分減殺請求の効力は強力なものですが、相手方が返還に応じなければ、その効力を現実のものとするために、相手方に対し遺産分割の調停や審判・訴訟という手段をとることが必要です。
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