Q054 死亡保険金にかかる税とは(みなし相続財産その1)

【Question】

夫が亡くなりました。相続人は妻である私のほかに、子供が2人います。
遺産としては古いマンションと少々の預金だけです。
夫はひとつだけ生命保険に加入しており、保険金受取人に指定されていた私が保険金を受け取りました。
取得した保険金額が2,000万円もあるので,何かしら税金がかかるだろうと思ったのですが、保険会社の人は「お客様の場合は税金はかからない可能性が高い」と言います。どうして税金がかからないのでしょうか?

 

【Answer】

契約者(保険料負担者)と被保険者が両方ともご主人で、その死亡保険金を被保険者の相続人であるあなたが受け取った場合は、『相続税』が課税される可能性があります。

死亡保険金を相続人が受け取る場合には、遺族の生活保障という目的があるため、相続税について一定の金額が非課税になっています。
死亡保険金の非課税限度枠は『500万円×法定相続人の数』で、あなたの場合は法定相続人が3人ですから、受け取った2,000万円のうち1,500万円(500万円×法定相続人3人)が非課税となります。

非課税の1,500万円を超える500万円については、死亡保険金以外の財産(マンションや預金の他、生前贈与財産や死亡退職金等)と合算して相続税の課税対象となります。
合算した結果、相続税の基礎控除額を下回るならば、相続税の申告・手続きは必要がありません。

 

【Reference】

死亡保険金 (注1)を受け取った場合の課税関係は、契約者(保険料負担者)と保険金受取人との関係によって違います。

 

(1)相続税の課税対象となる場合

(a)相続人が受け取った場合

死亡保険金の受取人が相続人の場合

契約者(保険料受取人)と被保険者が同じ人で、その死亡保険金を被保険者の『相続人』にあたる人が受け取った場合には、相続税の対象となります。

本来、死亡保険金を相続人が受け取った場合でも、民法上は受取人固有の財産とされ、遺産には含まれません。 しかし実質的には、受取人が相続によって財産を受け取ったという点では通常の遺産と変わりませんから、死亡保険金を遺産とみなすのです。
そのため死亡保険金は、税法上『みなし相続財産』と呼ばれます。

相続人が受け取る死亡保険金には、故人に近い遺族の生活を保障するという重要な目的があります。そこで相続税について一定の金額が非課税になっています。

死亡保険金の非課税限度枠 : 500万円×法定相続人の数

※受け取ったすべての死亡保険金を合計して、その受け取った金額が非課税限度枠を超えた場合に、その超過額が他の相続財産と合算されて相続税の対象となります。

※非課税限度枠を計算する際には、受取人となっていない法定相続人もその人数に含みます。

基礎控除と同様、家裁で相続放棄した人も法定相続人の数に入れてかまいません。養子の数え方も同じです。

 

(b)相続人以外の個人が受け取った場合

死亡保険金を相続人以外の個人が受け取る場合

契約者(保険料受取人)と被保険者が同じ人で、その死亡保険金を被保険者の『相続人以外の個人』が受け取った場合でも、相続税の対象となります。遺贈によってもらったものとみなされるからです。

ただし、(a)の相続人が受け取る場合と違い、非課税枠はありません。相続人が受け取る場合に比べると税法上不利です。

なお、家庭裁判所で相続放棄の申述をした人や相続欠格等によって相続権を失った人は、相続権はありませんが死亡保険金を受け取ることは可能です(受取人固有の財産なので)。ただし、保険金を受け取る以上相続税がかかり、しかも相続人でないために非課税枠はありませんので注意が必要です。

 

(2)所得税の課税対象となる場合

死亡保険金に所得税がかかる場合

契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ人になっている死亡保険金の場合は、一時所得として所得税・住民税の対象になります。
一時所得は次の計算式で計算します。
一時所得金額=(受取保険金-支払保険料総額-50万円)×1/2

一時所得も、確定申告の際に総合課税として他の給与所得等と合算して所得税を計算しますが、上の計算式からお分かり頂けるように、利益の1/2に対してしか課税されません。言い方を変えれば、所得が高く所得税率が50%という人でも、受取保険金についての実効税率は25%である、とも言えます(注2)。

 

(3)贈与税の課税対象となる場合

死亡保険金に贈与税がかかる場合

契約者(保険料負担者)と被保険者が別の人で、契約者以外の個人が死亡保険金を受け取った場合は、全額が贈与税の対象になります。

贈与税の計算式は以下のとおりです。
(年間で贈与を受けた価額の合計-基礎控除110万円)×速算表の税率-速算表の控除額

 

(注1)ここでいう『死亡保険金』には、生命保険契約によるものだけでなく、たとえば偶然の事故に起因して支払われる傷害保険による死亡保険金も含みます。
ただし、交通死亡事故によって遺族が加害者側から受け取った損害賠償金は、相続税の対象ではなく遺族の所得となりますが、所得税法上非課税です。

(注2)近頃の流行として、孫への生前贈与と生命保険を組み合わせた相続税対策が流行しています。
暦年課税(年110万円まで非課税)で現金を孫に贈与すれば、相続財産が減るので相続税対策になりますが、いっぽうで孫の金銭感覚がおかしくなってしまうかもしれません。そこで、孫に(2)のパターン(契約者=受取人=孫、被保険者=祖父)で生命保険に加入させるのです。そうすれば孫は自由に現金を引き出せなくなります。
祖父が亡くなった時点で、孫が受け取る保険金には所得税・住民税がかかりますが、一代飛ばしで財産を移転することができる他、相続税と所得税・住民税の税率の差をうまく利用すれば、節税につながる可能性もあります。
(ただし、生前贈与と生命保険を組み合わせる場合には、生前贈与の成立と生命保険の選択に細心の注意が必要です。)

 

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2014年1月24日 | カテゴリー :

お客様の声26 T様

お客様の声26 T様

手続きがわかりやすく、費用も安かったと思います。
また機会がありましたら宜しくお願いします。
ありがとうございました。

T様、どうもありがとうございました。

 

Q053 相続税がかからない財産とは(非課税財産)

【Question】

私の知り合いが「お墓や仏壇仏具には相続税がかからないから、相続税対策として純金製の仏像を買おうと思う」と話していました。本当に相続税対策になるのでしょうか。

 

【Answer】

墓地や墓石・仏壇仏具等は、相続税の非課税財産です。

墓地や墓石は、特に都市部では高額になることが多く、生前に購入しておくと相続税対策になります。
反対に、亡くなった後に『相続人が』墓地や仏壇などを購入すると、その相続人自身の財産となるため、相続税の計算ではまったく考慮してもらえません。

ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるようなもの(お金に替えられるようなもの)は、相続税の課税対象となります。
純金製の仏像などはお金に替えられますから、相続税対策にはならないと考えられます。

 

【Reference】

相続税は、原則として、相続人が被相続人から相続または遺贈(死因贈与を含む)により取得したすべての財産に対してかかります。
しかし、中には国民感情や政策的な配慮から、一定の財産については相続税の課税対象から除外されることになっています。

たとえば墓地や仏壇などには相続税がかかりません。これらは祖先を敬うために必要な財産であってお金に替えることができるものではありませんから、これに課税するとなれば大きな反発が予想されます。そこで、たとえ高額なものであっても相続税は課税されません。

ただし、商品として売るために購入したものや、投資の対象として持っていた場合には、相続税の課税対象になります。これらは祖先を敬うためのものではなくお金に替えることも可能だからです。

 

1.非課税財産の具体例

相続税がかからない財産のうち主なものは次のとおりです。

(1)墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。

(2)宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの

(3)地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利

(4)相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分(詳細別途)

(5)相続や遺贈によってもらったとみなされる退職手当金等のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分(詳細別途)

(6)個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
(相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります)

(7)相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によってもらった金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

 

2.庭内神し(ていないしんし・庭内神祠)の敷地について

相続税の非課税財産について、比較的最近話題になったのが、『庭内神し』の敷地についての平成24年6月21日東京地裁判決です。

『庭内神し』とは、屋敷内にある神の社や祠などでご神体を祀り、日常的に礼拝されているものをいいます。
時折、自宅の庭や敷地の一部でお地蔵さんやお稲荷さんをお祀りしているのを見かけますが、そのことです。
広く地域に根付いているものばかりではなく、特定の者・家族だけがお祀りしている場合も含まれます。

庭内神しそれ自体は、以前から相続税の非課税財産でした(相続税基本通達12-2)。
しかし移動可能な庭内神しも少なくありませんので、庭内神しの”敷地”については原則として相続税は非課税になりませんでした。

これが上記の東京地裁判決で国側が敗訴して控訴せず確定したため、税務上の取り扱いが変更されました。
つまり、一定の条件下で、庭内神しの敷地や附属設備も相続税の非課税財産とされました。

一定の条件とは、以下のとおりです。
1.『庭内神し』の設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形
2.その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的
3.現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能の面
上記3点を踏まえた上で、その設備及び附属設備等の機能の面から、その設備と社会通念上一体のものとして日常礼拝の対象とされているといってよい程度の密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備である場合

この場合に初めて、庭内神しの敷地や附属設備も非課税になります。
今後、相続税対策として流行するかもしれません?が、適用は限定的ですのでご注意ください。

 
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2014年1月21日 | カテゴリー :

Q052 相続税がかかる財産とは

【Question】

遺産のうち、預金や土地建物に相続税がかかるということはわかりますが、次のような財産には、相続税はかかりますか?
(1)借地権
(2)外国にある財産
(3)テレビ
(4)特許権
(5)生命保険金
(6)死亡退職金
(7)墓、位牌、仏壇
(8)生前贈与された財産

【Answer】

故人が亡くなられた日に持っていた財産でお金に見積もることができるものは、有形の物も無形の物もすべて相続税の対象になります。(1)借地権、(2)外国にある財産、(3)テレビ、(4)特許権は、どれも相続税の対象です。
ただし、(7)墓、位牌、仏壇は、原則として非課税財産とされています。

また、(5)生命保険金や(6)死亡退職金は、受取人固有の財産であって民法上の相続財産ではありませんが、相続財産に準じるものとみなして相続税の対象になることが多いです(みなし相続財産)。もっとも、生命保険金・死亡退職金には一定の控除額が設定されています

(8)の生前贈与された財産は、贈与税ではなく相続税の対象になるケースがあります。

【Reference】

相続や遺贈(死因贈与を含む)によって取得した財産には相続税がかかる(Q047)わけですが、その財産の中にも相続税がかからないものがあり(非課税財産)、反対に、意外な財産に相続税がかかることもあります。

ここでは、『相続税がかかる財産』を整理してみます。

 

1.民法上の相続財産(本来の相続財産)

故人が亡くなった日に持っていた、お金に見積もることができるすべての財産は、有形・無形を問わずすべて相続財産であり、相続税の対象になります。
相続財産の例(遺産)

なお、借金などのマイナスの相続財産は、相続税の計算を行う際には差し引きます(控除)。

 

2.税法上のみなし相続財産

代表的なものが『死亡保険金』と『死亡退職金』です。
どちらも原則として「受取人固有の財産」とされ、民法上の相続財産からは除外されるため、遺産分割の対象にはなりません。
しかし、相続が発生したことによって受け取ることができる財産であるという点では、上記1の民法上の相続財産と変わるところがないので、相続税の課税対象にはなります。
そこで、これらの財産のことを(税法上の)『みなし相続財産』と呼びます。

死亡保険金死亡退職金以外にも、定期金に関する権利や債務免除による利益など、税法上のみなし相続財産にはいくつかの種類があります。
また、死亡保険金は、契約形態によっては民法上の相続財産に含まれてしまって遺産分けの対象になったり、相続税ではなく贈与税がかかる場合などもあります。

なお、みなし相続財産のうち死亡保険金死亡退職金については、全額が相続財産になるわけではなく、非課税限度額を超えた部分だけが相続財産に加算されます
この非課税限度額は、死亡保険金・死亡退職金とも、それぞれ『500万円×法定相続人の数』です。

 

3.死亡前3年以内に贈与されていた財産

被相続人が亡くなった時点ですでに生前贈与されていた財産は、当然、もらいうけた人の財産であって故人の遺産(相続財産)ではありません。

ところが、亡くなる前の3年以内に被相続人が贈与した財産については、”相続税”がかかる場合があります。
どのような場合かと言うと、生前贈与を受けた人が、贈与した人の相続人(包括受遺者を含む)でもある場合です。

「贈与税の間違いじゃないの?」と思われるかもしれません。ごもっともです。
どうして生前贈与なのに、贈与税ではなく相続税がかかるのでしょうか?

もしも相続税という制度だけがあって贈与税という制度がなければ、相続税を逃れるためにはバンバン生前贈与してしまえばいいことになります。
このような相続税逃れを防ぐために、贈与税という仕組みを用意し、あえて相続税より高い税率にしているのです。
しかし何でもかんでも高い贈与税がかかるのでは納税者もたまりませんから、毎年110万円までの贈与ならば、贈与税は非課税とされています(暦年課税)。ここがポイントです。

もしも、余命わずかと宣告された後に、この毎年110万円の贈与非課税枠をフル活用して駆け込み的に生前贈与すれば、それによって遺産が少なくなりますから、意図的に相続税を減らすことができてしまいます。
反対に、高い贈与税を払って財産をもらいうけたのに、その後まもなく贈与者が亡くなってしまったならば、「亡くなるまで待って相続でもらっていれば、税金が生前贈与よりも安かったのに・・・」ということで不公平感が強くなってしまいます。

そこで、相続人となる人が、被相続人が亡くなる前の3年以内に遺産とは別に生前贈与を受けていた場合には、贈与税を払っているかどうかに関わりなく、すべて相続税の対象にすることにしました。
また、もし生前贈与を受けた時に納付した贈与税があればこれを相続税から差し引くことができるようにし、さらに納付済みの贈与税が相続税額よりも大きければ差額を還付することができるようにして、不公平を解消することにしたのです。

ただし、一つ例外があります。
『居住用不動産にかかる贈与税の配偶者控除』を受けた財産の場合には、あげた人(贈与者)がその後3年以内に亡くなった場合でも相続税の対象にはなりません。
この制度は、20年間連れ添った配偶者に居住用財産を贈与する場合には、一定額まで無税とすることで内助の功に報いるための制度です。そのため、贈与者がその後まもなく亡くなったからといって「やっぱり相続税を払ってください」とは、さすがの税務署も言えないわけです。

 

4.相続時精算課税制度によって贈与された財産

相続時精算課税制度の届出をしていた贈与財産は、そもそも相続税で贈与税を精算することを予定していたものですので、相続税の課税対象になります。ただし、亡くなった日の時価ではなく、生前贈与した時の時価で評価します。

 

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2014年1月20日 | カテゴリー :

1月18日(土)、越谷で相続・遺言無料相談会を開催致します。

1月18日(土曜日)午前10時~12時、越谷市中央市民会館で、相続・遺言無料相談会を開催致します。

弁護士、税理士、社会保険労務士、土地家屋調査士、司法書士が合同でご対応致しますので、どうぞ皆さまご参加くださいませ。 ご予約は、南越谷法律事務所 048(940)0662 です。 ご予約なしのご参加も可能です。

Q049 相続税の申告と納税は、どうやっておこなうのか?

【Question】

実家は東京なのですが、兄は仙台に、私は大阪に住んでいます。

父にもしものことがあったら、相続税の申告をすることになりそうです。
そうなった場合、私は、住んでいる大阪で、自分が相続した財産についてのみ申告をすればいいのでしょうか。

 

【Answer】

まず、相続税の申告書を提出する先は、相続人の住所地ではなく、被相続人が亡くなったときの住所地を所轄する税務署です。あなたの場合は東京になります。

次に、相続税額の計算方法は、相続人それぞれが実際に取得した財産に直接税率をかける、という単純なものではありません。
『課税遺産総額から相続税の総額をはじき出し、これを相続人ごとに実際に取得した財産の割合に応じて比例配分する』というものですから、相続財産が全体でどのくらいあるのかを明らかにしなければ税額を求めることができず、相続税の申告をすることもできない仕組みになっています。

従いまして、相続税の申告はあなた一人で済ませるのではなく、ごきょうだいで協力して行うのが基本です。

 

【Reference】

相続税の申告書の提出先

相続税の申告書を提出する先は、被相続人が亡くなったときの住所地を所轄する税務署(正確には税務署長)です。相続人の住所地を所轄する税務署ではありません。

 

相続税の申告書の提出期限

相続税の申告書の提出期限(申告期限)は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月目の日、です。
たとえば、亡くなったのが6月10日ならば、申告期限は翌年4月10日になります。ただし申告期限の日が土日祝日にあたるときは、これらの日の翌日まで申告期限が延びます。

申告期限よりも遅れて申告書を提出した場合には、無申告加算税という重いペナルティがあります。

なお、申告期限に間に合わないと、原則として配偶者控除や小規模宅地の特例を受けることができません
そのため、「遺産総額が基礎控除額を超えるけれども、特例の適用によって税額を0にしたい」という場合には、結果的に税金を納めなくても申告する必要があります。ご注意ください。

また、申告期限内に手続きを取らないと、延納や物納の適用が認められません。

 

相続税の申告書の提出方法

相続税の申告書は、同じ被相続人から相続・遺贈などによって財産を取得した人が共同で作成して提出するのが基本です。

なぜなら、相続税額を計算するには、『課税遺産総額から相続税の総額をはじき出し、これを相続人ごとに実際に取得した財産の割合に応じて比例配分する』必要があり、相続財産が全体でどのくらいあるのかを明らかにしなければ税額を求めることができず、相続税の申告をすることもできないからです。

しかし、どうしても共同で作成して提出することができなければ、個別に申告書を提出することも可能です。

また、相続人の間で遺産分割(誰がどの遺産を承継するかを決めること)が終わらないと、正確な相続税額を求めることができない構造になっています。それでは、相続人間でもめてしまい、申告期限内に遺産分割ができない場合にはどうなるでしょうか?

この場合には、簡単にいえば、民法が定める相続分(法定相続分)に応じて遺産分割をしたものと仮定して、とりあえず各相続人が相続税を納めます。そして、遺産分割が完了した後に、実際に承継した財産と法定相続分とを比べ、その差に応じた相続税の追加納付または税還付によって精算することになります。

 

相続税の納付

相続税の納付期限は、申告期限と同じく、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月目の日、です。

納付場所は最寄りの金融機関(銀行や郵便局等)または所轄の税務署です。電子納税(e-tax)を利用して納めることもできます。

納付方法は、現金一括払いが原則です。
申告期限までに手続きを取れば『延納・物納』が認められることもありますが、基本的に納税者に有利な制度ではありません。

期限よりも後に納付すると、延滞税という重いペナルティがあります。

 
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2014年1月14日 | カテゴリー :

Q048 絶対に相続税を支払いたくないのですが (相続税の納税義務者)

【Question】

今後、私に万一のことがあった場合でも、絶対に、子供たちに相続税を納めさせたくありません。
なにか良い方法はありませんか?

 

【Answer】

さまざまな相続税対策を活用して、相続財産の価格を基礎控除額以下に減らすことができれば、相続税を納める必要はなくなります。
しかし、2015年1月1日以降に生じた相続については基礎控除額を引き下げることがすでに決まっており、今後もさらに引き下げられるかもしれません。相続税対策に『絶対』はありません。

それでも絶対に相続税は納めたくない・・それには”相続税の納税義務者ではなくなってしまう”のが一番確実です。しかし・・・

 

【Reference】

タイトルを見て「何だこれは?」と思われたかもしれませんが、これはネタです。
もちろん、本当にこのようなご質問をいただいたわけではありません(笑)

初めに申し上げておきますが、この記事をお読みになっている時点ですでにお身内が亡くなっていて、あなたご自身が日本に住所がある相続人の1人であるならば、残念ですがここからの記事はまったく役に立ちません。ご注意ください!

 

ところで、2014年現在で世界一の借金国である日本国ですが、今後、個人所得や法人所得が飛躍的に増加し、それにともなって所得税・法人税の税収が大幅アップして、みごとに国の財政を立て直すという可能性は、ハイパーインフレでも引き起こさない限り、ほとんどないと言えるでしょう。
むしろ、国際競争力を高めるために、法人税率を下げようとする動きがあるくらいです。

そこで、政府はなんとか税収を確保しようと、消費税などの間接税の引き上げを狙っています。
さらに、ご存じのとおり、相続税などの資産に対する課税を強化する動きもますます強まっています。

富裕層の一部では、海外投資をして国外に資産を移すことによって、円通貨の信認低下や日本国の財政破綻から資産を防衛しようとする動きがあります(注1)。
国外に資産を移すことによって日本国による課税を回避したいという思惑があるのかもしれません。

対する国税当局は、富裕層が持つ海外資産の把握に力を入れています。罰則付きの国外財産調書制度(注2)が導入されたのは記憶に新しいところです。

海外に個人資産を隠すのは、しょせん『脱税』であり、犯罪です。
しかし、相続税法1条の3に定められている『相続税の納税義務者』でなくなれば、合法的に日本国に相続税を納める必要はなくなります。

 

相続税の納税義務者とは

日本の法律が適用になるケースでは、基本的に、(1)相続 (2)遺贈 (3)死因贈与 (4)相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した個人は、どのような人でも相続税の納税義務者となります。ただし一定の場合にはこれが制限されます(相続税基本通達1の3・1の4共-3)。

 

(1)居住無制限納税義務者
ある人が亡くなって相続・遺贈・死因贈与が生じ、亡くなった時点で日本国内に住所(注3)がある人が財産を引き継いだ場合は、日本国籍であろうとなかろうと、『居住無制限納税義務者』となります。
この場合には、取得した財産が国内にあっても国外にあっても、取得した財産の全部に対して相続税の納税義務を負います。

 

(2)非居住無制限納税義務者
ある人が亡くなって相続・遺贈・死因贈与が生じ、亡くなった時点で日本国内に住所がない人が財産を引き継いだ場合は、次の条件のすべてにあてはまるならば『非居住無制限納税義務者』となります。
(a)財産を引き継いだ人が、日本国籍を有している
(b)故人か、または財産を引き継いだ人のどちらかが、相続開始前5年以内に日本国内に住所を有したことがある
(a)(b)両方にあてはまる場合には、(1)と同様、取得した財産が国内にあっても国外にあっても、取得した財産の全部に対して相続税の納税義務を負います。

 

(3)制限納税義務者
・ある人が亡くなって相続・遺贈・死因贈与が生じ、亡くなった時点で日本国内に住所がなく日本国籍も有しない人が財産を引き継いだ場合には、『制限納税義務者』となります。
・ある人が亡くなって相続・遺贈・死因贈与が生じ、亡くなった時点で日本国内に住所がないが日本国籍は持っている人が財産を引き継いだ場合で、しかも故人と財産を引き継いだ人の両方とも相続開始前5年以内に日本国内に住所を有したことが無いならば、やはり『制限納税義務者』となります。

このような『制限納税義務者』に当てはまるならば、日本国内にある財産に対してだけ相続税の納税義務があります。

 

相続税を合法的に納めなくても良くなるには?

税法や通達の表現が非常に難解でわかりにくいですが、早い話が、相続税の納税義務者ではなくなりさえすれば、合法的に相続税を納めなくて良くなります。
それには、次のどちらかのどちらかのパターンしかありません。

パターン(1)
・財産を引き継ぐ予定の人が、日本国外に住所を移す
・加えて、財産を引き継ぐ予定の人が、日本国籍を失う(海外に帰化する)
・引き継ぐ財産は、海外の財産とする

パターン(2)
・財産を引き継ぐ予定の人が、日本国外に住所を移す。国籍は日本国籍のまま。
・引き継ぐ財産は、海外の財産とする
・亡くなる予定の人(?)は、日本国外に住所を移し、最後まで帰ってこない。5年間は健在でいて下さい。
・財産を引き継ぐ予定の人も、相続が発生するまで帰ってきてはいけません。

・・・さて、いかがでしょう?
日本人として生まれた私達が日本の国税当局の追及を合法的に免れるには、きわめてハードルが高いことがわかります。
以前はもう少しハードルが低かったのですが、国税当局が最近になってハードルを上げたのです。

それに、日本国籍を離脱してまで相続税を納めたくないのなら、スウェーデンのように相続税の制度が無い国に行かないと、意味がありませんね。

 

(注1)
海外投資をして国外に資産を移す場合、『為替リスク』『政治リスク』については良く知られている。しかし、資産の持ち主である個人が死亡した場合の『相続リスク』についてはあまり触れられることが無い。
海外資産で相続が発生すれば、現地の言語はもちろん、日本国内の法律・税法に関する知識と、現地の法律・税法に関する知識の両方が必要となる(「どちらの国の準拠法に従うか」などという簡単な問題ではないのが現実の世界だ)。これを専門家に任せるとなれば、相当なコストがかかることも覚悟しなければならない。遺族への負担も大きく、最悪の場合、投資を回収できなくなるおそれもある。
『相続リスク』は、いつか必ず発生する確率100%のリスクであるから、これに対するリスクヘッジを考えずに海外投資を行うのは危険きわまりない。それができないのならば、国内の証券会社が取り扱う海外の金融商品で我慢したほうが良い。
「海外投資をすれば、利益も上がって資産も安全」というささやきには、くれぐれも用心すべきである。

(注2)国外財産調書制度
12月31日現在で5,000万円を超える国外財産を有している人は、確定申告をしない人でも『国外財産調書』を翌年の3月15日までに提出することが義務づけられた。
2013年(平成25年)12月31日時点の国外資産が初めての対象になるため、2014年(平成26年)3月に最初の国外財産調書を提出することになる。
なお、初年度は罰則が無いが、2015年1月1日以降に提出すべき国外財産調書を出さなかったり、虚偽の記載をしたりすると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。

(注3)住所
相続税法における住所とは、生活の本拠のことをいう。生活の本拠がどこかは、客観的な事実で判定される(相続税基本通達1の3・1の4共-6)。住民票のような形式的なもので決まるわけではない。

 

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2014年1月10日 | カテゴリー :

お客様の声25 W様

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最愛の夫を昨年11月に亡くし、悲しみの中銀行からひびき事務所を紹介されました。相続の事など何もわからずただ悲しみに暮れている私にとてもやさしく親切に対応してくれました。私の場合主人と私の共同名義だったのでそれを私の名義に変えたのですが、説明もわかりやすく、費用も近所の方からはとても高く取られたと聞いていたのですが、見積よりも安くする事ができ助かりました。心をこめた対応がとてもうれしかったです。
本当にありがとうございました。

W様、どうもありがとうございました。

 

Q047 遺言や死因贈与でもらった財産にかかるのは贈与税?相続税?

【Question】

古くからの友人が亡くなりました。

彼は生涯独身で子供がいないため、あらかじめ遺言を書いていました。

その遺言の中で、財産の一部を私に”遺贈”するというふうに書かれていたのですが、贈与税の税率が高いことは聞いておりますので税金が心配です。

 

【Answer】

『遺贈』によって財産を受け取った場合には、税率が高い贈与税ではなく、相続税がかかる可能性があります。
故人と血縁が無い場合でも、かかるとすれば「相続税」になります。
『相続税』ですから、相続財産の価格が相続税の基礎控除額以下ならば相続税はかかりませんし、基礎控除額を超える場合でも、税率は贈与税よりも低くなっています。

ただし、配偶者および1親等の血族以外の人が相続税を課される場合には、2割加算の対象になります。

 

【Reference】

 

『相続税』の対象になる4つのパターン

個人が被相続人(亡くなられた人)の財産を受け継ぐにあたって、次の4つのパターンでは『相続税』がかかる場合があります。

(1)相続
故人が生前に、財産を引き継ぐ人を決めていない場合。
引き継ぐ人は法定相続人に限られる。

(2)遺贈
故人が生前に、財産を引き継ぐ人を遺言で決めている場合。
引き継ぐ人は第三者でも良い。

(3)死因贈与
故人が生前に、ある特定の人と、自分の死後に財産をあげることを約束(契約)している場合。
引き継ぐ人は第三者でも良い。

(4)相続時精算課税制度を利用して贈与している場合
故人が生前に、ある特定の人に自分の財産をあげたが、贈与税の特例である相続時精算課税制度を利用している場合。
本来支払うべき贈与税は、相続税によって清算する。第三者は利用できない。

(2)遺贈や、(3)死因贈与では、第三者が故人の財産をもらうこともあるので『贈与税』がかかりそうな誤解がありますが、この場合にはあくまでも『相続税』の問題になります。

したがって、『相続財産の価格が相続税の基礎控除額以下』ならば、相続税はかかりません。
また、『相続財産の価格が相続税の基礎控除額を超える場合』でも、税率は贈与税よりも低くなっています。

ただし、配偶者および1親等の血族以外の人が相続税を課される場合には、2割加算の対象になります。

また、死因贈与によって不動産を所得した場合や、法定相続人以外の第三者が遺贈によって不動産を所得した場合には、相続税とは別に『不動産取得税』がかかります(一般的な相続によって不動産を取得した場合には不動産取得税はかかりません)。

こんなときに相続税がかかる

 

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2014年1月8日 | カテゴリー :

新年あけましておめでとうございます

新年あけましておめでとうございます。

本年も昨年と変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げます。

2014年が皆様にとって良いお年でありますように。