Q120 不動産と同時に、借入金も贈与したいのですが(負担付き贈与)

【Question】

収益不動産の贈与は相続対策になると聞いて、私が所有しているアパートを娘に生前贈与し、名義を書き換えようと思います。

このアパートの時価は5,000万円(相続税評価額は4,000万円)ですが、この物件を購入した時の銀行借入金が、担保付で2,500万円残っています。そこで、娘にはアパートを生前贈与しますが、今後、借入金の返済は娘にしてもらいたいと考えています。

この手続きは、どのようにすれば良いのでしょうか?

また、生前贈与なので、アパートをもらった娘のほうに贈与税がかかると思います。
私の娘の場合、アパートの相続税評価額4,000万円から今後負担してもらう借入金2,500万円を差し引いた1,500万円に対して贈与税がかかると考えればいいのでしょうか?

 

【Answer】

不動産の贈与にあたって借入金も肩代わりしてもらうような取引のことを、負担付き贈与といいます。

まず手続きについてですが、負担付き贈与の場合、贈与そのものは親子間の契約で成立します。
しかし、銀行借入金の債務者をあなたから娘さんに変更するには、銀行の承諾がなければできません。銀行の承諾を得て(もちろん審査が入ります)、銀行と現債務者(あなた)・新債務者(娘さん)の三者間で『免責的債務引き受け契約』を締結するのが一般的な手続きです。
もちろん不動産の贈与ですから、贈与を原因とする所有権移転登記と債務者変更による抵当権変更登記を行います。

また、負担付き贈与は、税金の上でも格別の注意が必要です。
負担付き贈与では、贈与を受けた娘さん側に贈与税がかかるのはもちろん、贈与したあなたにも譲渡所得税・住民税がかかる可能性があります。

また、不動産の負担付き贈与では、贈与税の計算にあたって、原則として路線価等の相続税評価額を利用することができず、時価で評価することになっているので注意が必要です。特に賃貸不動産の場合は時価よりも相続税評価額がずっと低いので、時価評価は通常は不利ですから、なおさら気をつけなければいけません。

 娘さんは、時価5,000万円-負担する借入金2,500万円=2,500万円から贈与税を計算することになります。通常は相続時精算課税制度を利用することになるでしょう。

不動産の負担付き贈与は、税理士のアドバイスを受けながら、慎重に行うようにしてください。

 

【Reference】

負担付き贈与の特徴

負担付き贈与とは、財産の贈与にあたって受贈者(もらう人)になんらかの義務を負担させることが条件になっている契約のことを指します。

見ようによっては売買契約に似ていますが、贈与財産とそれにくっついてくる負担とが、特に関連していなくてもかまわない、という点が特徴的です。

一般の贈与契約と比べて、負担付き贈与契約の法律的な違いは、次の2点です。

(1)贈与者の責任が重くなる(民法551条2項)

一般の贈与では、贈与財産に多少難があっても、タダでもらう以上、受贈者は文句が言えません。
しかし、負担付き贈与の場合は、受贈者はタダでもらうわけではないので、贈与者には売買契約の売主と同じ責任(つまり契約解除や損害賠償)が課されるのです。ただし、贈与者に課される責任は、受贈者の負担が限度とされています。

(2)双務契約に関する規定が準用される(民法553条)

単純な贈与契約と異なり、負担付き贈与はギブ・アンド・テイクの関係にあります(このような契約を『双務契約』といいます。)。
そのため、たとえば受贈者が負担を履行しないならば、債務不履行として贈与者は契約を解除することができます。

 

負担付き贈与を受けた側に対する課税

まず、生前贈与を受けた受贈者に贈与税がかかるのは当然です。

負担付き贈与の場合、贈与財産の価額から『負担額』を差し引いた価額が、贈与税の課税対象になります(相続税基本通達21の2-4)。なお、贈与財産と負担の結びつきは、課税上は関係ありません。

通常、贈与税の計算では、時価よりも低い「相続税評価額(たとえば土地の路線価)」を使うということは広く知られています。

ところが、負担付きで贈与された財産が土地や借地権などである場合や、家屋や構築物などである場合には、国税庁の通達(平成元年3月29日直評5、直資2-204)によって、その贈与の時における通常の取引価額(つまり時価)に相当する金額から負担額を控除した価額によることになっています(例外もあります)。
これは、
不動産が高価だった昭和の末に、不動産の時価と相続税評価額の差を利用し、負担付き贈与によって贈与税逃れを図る手法が横行したため、税金逃れを防止するために取られた処置です。

これにより、ご相談の事例で娘さんの贈与税額を計算する場合には、相続税評価額4,000万円-負担する借入金2,500万円=1,500万円の価額が贈与税の対象になるのではなく、時価5,000万円-負担する借入金2,500万円=2,500万円から贈与税を計算することになります。

 

負担付き贈与をした側に対する課税

個人が個人に贈与した場合、それが通常の贈与であれば、課税されるのは受贈者(もらった人)だけで、贈与者(あげた人)に課税されることはありません。

しかし、借入金と抱き合わせで贈与するようなパターンの負担付き贈与は、通常の贈与と異なり、資産の移転と同時に贈与者の債務(借入金)も消滅するので、贈与者は債務の消滅という経済的利益を得ています。そこで、負担付き贈与の場合には、贈与した贈与者のほうにも税金がかかる可能性があります。

これもご相談の事例で説明すると、贈与者は不動産については確かに不動産を無償譲渡していますが、娘さんに2,500万円の債務を引き受けてもらうということは、2,500万円で売ったのと同じと評価されます。このような場合には「みなし譲渡所得課税」の対象となり(所得税法59条)、『譲渡益』(引き受けてもらう債務額>取得費等の場合、その差益)に対して譲渡所得税・住民税が課されることになり、確定申告が必要です。

もちろん、『譲渡損』となっているならば、これらの譲渡所得税・住民税はかかりません。受贈者の贈与税についての連帯納付義務が残るだけです。

 

負担の内容が「扶養」だったら?

贈与税の計算上、負担付き贈与だからといって、必ず負担額を差し引くことができるわけではありません。

ひとくちに『負担』といってもその内容は様々で、ご相談のケースのように借入金の肩代わりのケースもあれば、「死ぬまで世話をすること」というように、『扶養』が負担になっているケースもあります。

しかし、贈与税を計算する上で負担額を差し引くことができるのは、負担額が金額として確定できないと差し引きようがありません。ですから、このようなケースでは負担額を差し引くことはもちろんできません。また、そもそも親子間で扶養するのは法律上当然の義務ですから、これによって贈与税が減額されることはないとも言えます。

 

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2014年8月28日 | カテゴリー :

Q117 会社・法人に生前贈与するときの注意点は

【Question】

相続対策の一環として、私が創業した会社に、今のうちに事業用地を生前贈与しておきたいと考えています。どのような問題があるでしょうか。

 

【Answer】

贈与契約を締結して会社・法人に財産を生前贈与することは、法律上は可能です。

ただし、次のような点に注意が必要です。法人が贈与の当事者になる場合には、慎重のうえにも慎重を重ねる必要があります

1)もらった会社・あげた人の両方に、課税される可能性があります。
さらに、同族会社の場合には、他の株主課税が発生することもあります。

2)遺留分を侵害するような生前贈与は、相続発生後に紛争化する危険があります。

3)不動産の名義変更があるので、登記申請時に登録免許税も課せられます。軽減措置がないため、不動産を生前贈与した場合の登録免許税は、固定資産税評価額の2%であり、これはコストとしては大きいものです。また、不動産の贈与ですから不動産取得税もかかります。

 

 

【Reference】

個人から個人への生前贈与の場合には、受贈者(もらった人)に贈与税がかかります。

いっぽう、個人から会社・法人への生前贈与の場合には、『贈与税』こそかかりませんが、次のように課税のトリプルパンチを食らうおそれがあります。

もらった会社法人・・・・・・・法人税・住民税等(時価を益金算入)
あげた人・・・・・・・・・・・譲渡所得税(みなし譲渡所得課税)・住民税
同族会社の場合の他の株主・・・贈与税

ただし、もらった法人が国税庁長官の承認を受けた公益法人等である場合には、あげた人に譲渡所得税はかかりません(租税特別措置法40条)。これは一般的には「寄付」と呼ばれます。

 

(1)もらった法人への課税

法人が個人から生前贈与を受けた場合、もらった法人のほうでは、そのときの時価受贈益として収益に計上します(法人税法22条2項)。

そして、他の事業収益と通算して、法人税や住民税・事業税の対象になります。

 

(2)あげた個人への課税

みなし譲渡所得課税』が適用されます。

個人が、土地や建物などの資産を会社・法人に生前贈与した場合には、これらの資産は贈与時の時価で譲渡があったものとみなされ、これらの資産の取得時から贈与時までの値上がり益に対して所得税が課税されます(所得税法59条1項1号)。これに伴い住民税も課税されます。

他の所得とは区分して申告分離課税となり、長期譲渡所得の場合、所得税は15%、住民税は5%となります。

タダで財産をあげたのに税金も支払わなければならないとは、なんとも納得がいかない話ですが、これは法人を利用した税金逃れを防止するために、財産を移転するときには含み益の部分を精算するという税法上の考え方によるものなのです。

時価の2分の1未満の金額で譲渡した場合も同様に、みなし譲渡所得課税が行われます(同2号、所得税法施行令169条)。

もちろん、みなし譲渡所得課税が適用されるのは『含み益がある財産』ですから、含み益がない財産(含み損がある資産や現金資産)には譲渡所得税はかかりません。

なお、、もらった法人が国税庁長官の承認を受けた公益法人等である場合には、あげた人に譲渡所得税はかかりません(租税特別措置法40条)。いわゆる「寄付」のことです。

 

(3)同族会社の場合、他の株主に課税される

同族会社とは、簡単にいえば、株式の大半を親族によって保有されている会社のことです。

ある株主が同族会社に資産を生前贈与すると、株価が上がります。
すると、上がった株価の分だけ、同族会社の他の株主はトクをします。これは見方を変えれば、財産を同族会社にあげた人は、他の株主に対しても、上昇した株価の分だけ財産をあげたのと同じことです。

そこで、株価の上昇分に相当する金額について贈与により取得したものとして、同族会社の他の株主に贈与税がかかることがあるのです(相続税基本通達9-2)。

これに似たようなケースは、非常によくあります。
資産を会社・法人に贈与する場合だけではなく、会社・法人に対する貸付金を放棄(債権放棄)した場合や、増資を行う場合には、必ず株価が上下しますので、他の株主との関係で贈与税に注意する必要があります。

 

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2014年8月7日 | カテゴリー :

Q116 贈与税の税率は何パーセント?(暦年課税)

【Question】

生前贈与を受ける予定です。贈与税がかかると思いますが、税率は何パーセントですか?

 

【Answer】

相続時精算課税制度などの特例を利用しない場合には、基礎控除額:年110万円を超える贈与を受けた場合には、贈与税の申告をする義務があります(暦年課税制度)。

暦年課税制度による贈与税の申告をする場合、まず、 1年間に贈与によってもらい受けた財産の価格を合計します(課税価額)。
このとき、土地のように価格がわかりにくいものについては、通常は相続税評価額を利用して価格を出します。

課税価額から基礎控除110万円を差し引き、これに贈与税の速算表の税率を掛けあわせることによって贈与税額を求めることができます。
基本的に、贈与額が大きくなればなるほど税額が上がる『累進課税』です。

贈与税の速算表等、くわしくは下記をご覧ください。
なお、2015年1月以降の贈与については税制の改正があります

 

【Reference】

暦年課税制度による贈与の場合、課税価額を計算した上で速算表にあてはめれば計算することができます。

 

(1)課税価額を計算する

贈与を受けた年の1月1日から12月31日までの1年間に、贈与によってもらった財産の価額を合計します。これが課税価額です(千円未満切り捨て)。

複数の人から贈与によってもらった財産があれば、すべて合計する点に注意してください。
たとえば、父親から2月1日に200万円、さらに9月1日に200万円、母親から11月20日に300万円もらったならば、200万+200万+300万=700万円が課税価額となります。

なお、贈与によってもらった財産が金銭でない場合、相続税評価額で評価して課税価額を算出します。たとえば市街化区域の土地ならば路線価によります。

 

(2)贈与税額を計算する

課税価額を計算したならば、次に贈与税額の計算に移ります。

まず、基礎控除110万円をマイナスします(相続税法21条の5、租税特別措置法70条の2の3)。
1年間に複数の人から贈与を受けた場合でも、控除できる基礎控除額は贈与した人の人数に関わりなく110万円のみです。ご注意ください。
前記(1)の例では、700万円-110万円=590万円となります。

これを贈与税の速算表にあてはめます。
まず速算表の税率を掛けあわせ、速算表の控除額をマイナスすれば、贈与税額が計算できます(税額は百円未満切り捨て)。
計算式(贈与税)

贈与税の速算表は次のとおりです。ただし、2015年1月1日以後になされた贈与については、新しい速算表を使用してください。
贈与税速算表2014まで

 

贈与税2015から一般贈与税2015から直系尊属型

上記(1)の、700万円贈与を受けた事例で計算してみましょう。
まず、課税価額700万円から基礎控除額110万円を引くと、590万円。
これを上記の表にあてはめます。

2014.12.31まで
590万円×30%-65万円=112万円

2015.1.1から
a)原則
590万円×30%-65万円=112万円で変わらず。
b)20歳以上の者への直系尊属からの贈与の場合
590万円×20%-30万円=88万円

この例からわかることは、2015年からは、「20歳以上の者への直系尊属からの贈与」については、税額が下がるということです。
これは、消費することが少ない比較的ご年配の方から、消費することが多い現役世代に資産を移転することをうながし、経済を活性化させようという政府の狙いがあるためです。

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2014年8月5日 | カテゴリー :

Q114 贈与税の意味と、贈与税の基本的な仕組みとは

【Question】

自分が元気なうちに財産を家族に無償で与えると、受け取った家族が多額の贈与税を負担しなければならないと知りました。

そもそも、どうして、財産をタダでもらうと高い税金を払わなければいけないのでしょうか。また、贈与税の基本的な仕組みを教えて下さい。

 

【Answer】

贈与税の目的は、「相続税逃れを防ぐこと」にあるとされています。

亡くなった人の財産を受け継ぐときには、『相続税』がかかります。
あるていど資産がある方が亡くなった場合には、その資産に応じて税金を課す仕組みになっています。

もしも『相続税』の仕組みだけがあって『贈与税』の仕組みがなければ、生前にすべての財産を誰かにあげてしまえば、税金をまったく払わずに済んでしまいます。これでは相続税という仕組みを作った意味がありません。

そこで、相続税逃れを防ぐために、贈与税という仕組みが設けられているのです。
そのため、贈与税は『相続税法』という法律の中に定めがあり、『贈与税法』という法律は存在しません。

(もちろん、「タダでもらったのだから、税金を課してもいいだろう」という考え方に基づいていることを否定はしません。もし、仮に相続税が廃止されたとしても、贈与税が廃止されることはないでしょうから。)

 

贈与税については、贈与された物の価額が1年間で110万円を超える場合には、贈与税の申告をする義務があります。

贈与税は原則として、贈与で受け取ったすべての財産にかかります。対象となるのは、現金・不動産・有価証券・貸付金など、現金に換算できるものすべてです。

 

【Reference】

贈与税の申告義務がある人

個人から個人が、年間110万円の基礎控除額を超える財産をもらったときに、財産をもらった人は国に贈与税を納める義務があります。

年間110万円を超える財産をもらった人は、贈与税の申告をしなければなりません。

なお、土地のように財産の価格がはっきりしないものについては、相続税評価額で評価して税額を計算するのが原則です(負担付贈与等については例外がある)。

また、『死因贈与』『遺贈』については相続税の対象となり、贈与税の対象ではありません。

 

贈与税についての注意点

 

(1)当事者間で「あげます」「もらいます」という合意がなければ贈与にならない

たとえば、子供のために、内緒で子供名義の預金をしていても、それは贈与にならず、子供から名義を借りているだけの自分の預金です(『名義預金』といいます)

 

(2)1月1日から12月31日までの1年間でもらったものすべての金額を合計して、110万円を超えれば贈与税を申告

たとえば、Aさんが、父親から、2月1日に100万円、5月15日に100万円をもらったならば、年間で110万円を超えるので贈与税の申告をしなければなりません。

また、Aさんが、ある年に父親から100万円を、同じ年に母親から100万円をもらった場合、二人からもらった金額の合計が110万を超えるため、贈与税の申告が必要です。

 

(3)贈与者・受贈者ともに贈与と認識していなくても、贈与税がかかる場合がある

当事者が贈与ではないと考えていても、次のような場合には実質的に贈与であるとみなされ、贈与税の課税対象になります(みなし贈与)。
(例)
・有償だが、時価よりもいちじるしく低い金額で、財産を譲り受けた場合(低額譲渡
・債務の免除を受けた場合
・生命保険や損害保険で、他人が保険料を負担していた場合に、保険金を受け取った場合
(ただし、相続人が死亡保険金を受け取った場合はみなし相続税として相続税の対象)
・個人年金保険などの定期金について、他人が掛金を負担していた場合に、年金を受け取った場合
(夫が妻の個人年金保険の掛金を負担し、妻が年金を受け取った場合など)

 

(4)反対に、贈与であっても課税されない財産がある

社会通念から見て贈与税を課すのが適当でない場合には、贈与税が課税されません(贈与税の非課税財産)。

 

(5)贈与税が課されるのは個人から個人への贈与

『個人から会社』への贈与の場合はもらった会社に法人税等がかかり、あげた人に譲渡所得税がかかります(Q117)。
『会社から個人への贈与』の場合は、所得税がかかります。

 

贈与税の申告と納付

 

申告する人:財産をもらった人(受贈者)
申告期限:贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日
納税期限:申告期限と同じ
申告場所:受贈者の住所地を管轄する税務署
提出書類:贈与税の申告書

贈与税の納税義務者

 

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2014年8月1日 | カテゴリー :

Q113 贈与の種類と税金の関係は

【Question】

相続税が上がると聞き、私の財産は、自分が元気なうちに息子たちに分け与えておこうと考えています。

契約書などは作らず、息子たちには内緒で財産の名義だけを変えておくことは可能でしょうか。また、税金はどうなるのでしょうか。

 

【Answer】

お元気なうちに財産を無償で息子さんたちに与えるならば、これは『贈与生前贈与』)にあたります。

贈与は、民法上は『契約』とされており、「あげます」「もらいます」と当事者間で合意しなければ成立しません。そのため、息子さんたちが知らないうちに内緒で財産を与えただけでは、法律上は贈与が成立しません。贈与が成立しなければ、あなたに万が一のことがあれば、財産は遺産の一部として遺産分割の対象になります。
生前贈与によって不動産の名義変更をするにも、もらう人の協力が不可欠です。

税金については、個人間で財産の無償譲渡を行った場合には、もらった人に贈与税がかかります。

贈与税の税率は相続税よりもずっと高く設定されているので、ある程度まとまった財産を生前贈与する場合には、相続時精算課税制度等の特例を利用するのが一般的です。

なお、相続による紛争を防止するためにあらかじめ特定の財産を生前贈与しても、特別受益の持ち戻しや遺留分減殺請求の対象にはなります。ご注意ください。

 

【Reference】

贈与とは

贈与とは、当事者の一方(贈与者)が、財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思を表示し、相手方(受贈者)がこれを承諾することによって成立する契約です。

したがって、当事者間で「あげます」「もらいます」という合意がなければ贈与になりません。たとえば、子供のために、内緒で子供名義の預金をしていても、それは贈与にならず、子供から名義を借りているだけの自分の預金として、万一の際には相続税の対象になってしまいます(このような預金を『名義預金』といいます)。

なお、法律上、贈与契約を書面によって行う必要はありません。いわゆる口約束でも贈与契約は成立します。

ただし、後日の紛争を防止するために、書面によらない贈与は(履行前ならば)いつでも取り消しできるとされていますし、贈与が成立したかどうかについて税務当局の誤解を招かないためにも、きちんと贈与契約書を作成しておくべきです。

 

贈与の種類

贈与契約は、一般的には『生前贈与』『死因贈与』『負担付贈与』と分類できます。

(1)生前贈与

贈与者が生存しており、受贈者側になんらの負担も求めていない場合の贈与契約です。

通常「贈与」といえば、この生前贈与のことを指します

個人間の生前贈与の場合には、贈与税の対象になります。
贈与税については別のQ&Aで触れていきますが、年間で贈与された一切のものの価格の合計が110万円を超えた人は、贈与税の申告をする義務があります。

土地のように財産の価格がはっきりしないものについては、相続税評価額で評価して税額を計算します。

 

(2)死因贈与

贈与者が生存中に贈与契約をするものの、贈与者が死亡することによってはじめて贈与の効果が生じる契約のことを、『死因贈与』といいます。

遺言で自分自身の財産を一方的に処分する「遺贈」と似ていますが、死因贈与は生前贈与と同様に贈与者・受贈者の合意が必要であり、より強い効力があります。ただし贈与者が死亡することによって効力が生じると言う点では同じですから、法律の上では遺贈の規定が数多く準用されています。

また、税金の上でも、死因贈与は遺贈に準じて相続税の対象になります。
名前こそ死因「贈与」ですが、贈与税ではなく相続税なのです。
相続税の対象である以上、受贈者が、被相続人の配偶者及び一親等の血族(代襲相続人を含む)以外の人である場合には、相続税額が2割加算されます。

 

(3)負担付贈与

受贈者が一定の義務を負担することを条件にして財産が贈与されることを『負担付贈与』といいます。たとえば「老後の面倒をみてくれるなら財産を与える」というようなものです。

税金については(1)の生前贈与・(2)の死因贈与と同じように考えます。
つまり、個人から負担付生前贈与を受けた人(個人)には贈与税が、負担付死因贈与を受けた人には相続税がかかります。

ただし、単純な生前贈与・死因贈与の場合と異なり、負担付贈与の場合には、土地のように財産のはっきりしないものについては、相続税評価額ではなく通常の取引価額(時価)で評価するという点が大きく異なります。
これは、かつて横行した節税テクニックを防止するためなのですが、これについても別項目で具体例をあげて説明します。

 

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2014年7月30日 | カテゴリー :

Q115 相場より低い価格で息子に土地を譲ったら(低額譲渡・親族間)

【Question】

相続対策の一環で、私が所有している土地の一部(時価5,000万円相当、路線価4,000万円相当)を、息子に譲ろうと考えています。

タダで譲ると贈与税が高いので、息子には2,000万円でこの土地を売却しようと思いますが、問題はありますか。

 

【Answer】

まず、贈与税の問題があります。

この取引によって息子さんは、時価5,000万円の土地を2,000万円で買うわけですから、実質3,000万円のトクをすることになります。
取引そのものは「売買」であって「贈与」ではありませんが、この3,000万円は贈与されたものとみなされて、贈与税が課税されるおそれがあるわけです。

また、相続対策としても不十分です。

相続対策としてこのような低額譲渡を息子さんとの間で行うと、他の相続人との関係では、時価との差額については贈与されたのと同じことですから、これが特別受益とされてしまい、相続の際に息子さんの取り分が少なくなる可能性があります。これを防ぐには、遺言を作成するか、または「持ち戻し免除の意思表示」をしておくべきです。
なお、低額譲渡も実質的には贈与である以上、遺留分減殺の対象になる可能性があり、こちらにも注意が必要です。

 

【Reference】

本件のご相談者の場合は、確かにこの土地をタダで「贈与」すれば、路線価が4,000万円とのことですから、これに対して贈与税が課税されます(時価が5,000万円でも、贈与税の計算上は相続税評価額を利用します)。

だからと言って、タダで「贈与」するのではなく、時価5,000万円の土地を2,000万円で「売買」したとしても、息子さんは実質的に差額3,000万円のトクをしたものとして、 贈与税を納めなければなりません。

このように、取引内容そのものは「売買」であって「贈与」ではない場合でも、実質的に贈与を受けたのと同じ利益がある場合には、贈与があったとみなされて贈与税が課税される仕組みが『みなし贈与課税』です。低額譲渡はその典型的なものの一つです(注)。

一般の贈与の場合には、当事者が贈与であるということを認識しているので、特に問題なく贈与税の申告をするのが通常だと思います。
ところが、低額譲渡の場合は、当事者は「売買」であると認識していますから、税務署からみなし贈与と指摘されて初めて気づくことが多いものです。
低額譲渡の際は、贈与税にくれぐれもご注意下さい。

 

なお、贈与税額を計算する際の財産評価は、通常は相続税評価の方法で行いますが、低額譲渡の対象となった不動産や上場株式については、通常の取引価額(時価)で評価することになっているので要注意です。

 

(注)資力を喪失して債務を弁済することが困難な人が、その債務を返済するために扶養義務者から低額で買った財産については、特別に贈与とはみなされないとされています(相続税法7条)。

 

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2014年7月25日 | カテゴリー :