【Question】
相続税が上がると聞き、私の財産は、自分が元気なうちに息子たちに分け与えておこうと考えています。
契約書などは作らず、息子たちには内緒で財産の名義だけを変えておくことは可能でしょうか。また、税金はどうなるのでしょうか。
【Answer】
お元気なうちに財産を無償で息子さんたちに与えるならば、これは『贈与(生前贈与』)にあたります。
贈与は、民法上は『契約』とされており、「あげます」「もらいます」と当事者間で合意しなければ成立しません。そのため、息子さんたちが知らないうちに内緒で財産を与えただけでは、法律上は贈与が成立しません。贈与が成立しなければ、あなたに万が一のことがあれば、財産は遺産の一部として遺産分割の対象になります。
生前贈与によって不動産の名義変更をするにも、もらう人の協力が不可欠です。
税金については、個人間で財産の無償譲渡を行った場合には、もらった人に贈与税がかかります。
贈与税の税率は相続税よりもずっと高く設定されているので、ある程度まとまった財産を生前贈与する場合には、相続時精算課税制度等の特例を利用するのが一般的です。
なお、相続による紛争を防止するためにあらかじめ特定の財産を生前贈与しても、特別受益の持ち戻しや遺留分減殺請求の対象にはなります。ご注意ください。
【Reference】
贈与とは
贈与とは、当事者の一方(贈与者)が、財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思を表示し、相手方(受贈者)がこれを承諾することによって成立する契約です。
したがって、当事者間で「あげます」「もらいます」という合意がなければ贈与になりません。たとえば、子供のために、内緒で子供名義の預金をしていても、それは贈与にならず、子供から名義を借りているだけの自分の預金として、万一の際には相続税の対象になってしまいます(このような預金を『名義預金』といいます)。
なお、法律上、贈与契約を書面によって行う必要はありません。いわゆる口約束でも贈与契約は成立します。
ただし、後日の紛争を防止するために、書面によらない贈与は(履行前ならば)いつでも取り消しできるとされていますし、贈与が成立したかどうかについて税務当局の誤解を招かないためにも、きちんと贈与契約書を作成しておくべきです。
贈与の種類
贈与契約は、一般的には『生前贈与』『死因贈与』『負担付贈与』と分類できます。
(1)生前贈与
贈与者が生存しており、受贈者側になんらの負担も求めていない場合の贈与契約です。
通常「贈与」といえば、この生前贈与のことを指します。
個人間の生前贈与の場合には、贈与税の対象になります。
贈与税については別のQ&Aで触れていきますが、年間で贈与された一切のものの価格の合計が110万円を超えた人は、贈与税の申告をする義務があります。
土地のように財産の価格がはっきりしないものについては、相続税評価額で評価して税額を計算します。
(2)死因贈与
贈与者が生存中に贈与契約をするものの、贈与者が死亡することによってはじめて贈与の効果が生じる契約のことを、『死因贈与』といいます。
遺言で自分自身の財産を一方的に処分する「遺贈」と似ていますが、死因贈与は生前贈与と同様に贈与者・受贈者の合意が必要であり、より強い効力があります。ただし贈与者が死亡することによって効力が生じると言う点では同じですから、法律の上では遺贈の規定が数多く準用されています。
また、税金の上でも、死因贈与は遺贈に準じて相続税の対象になります。
名前こそ死因「贈与」ですが、贈与税ではなく相続税なのです。
相続税の対象である以上、受贈者が、被相続人の配偶者及び一親等の血族(代襲相続人を含む)以外の人である場合には、相続税額が2割加算されます。
(3)負担付贈与
受贈者が一定の義務を負担することを条件にして財産が贈与されることを『負担付贈与』といいます。たとえば「老後の面倒をみてくれるなら財産を与える」というようなものです。
税金については(1)の生前贈与・(2)の死因贈与と同じように考えます。
つまり、個人から負担付生前贈与を受けた人(個人)には贈与税が、負担付死因贈与を受けた人には相続税がかかります。
ただし、単純な生前贈与・死因贈与の場合と異なり、負担付贈与の場合には、土地のように財産のはっきりしないものについては、相続税評価額ではなく通常の取引価額(時価)で評価するという点が大きく異なります。
これは、かつて横行した節税テクニックを防止するためなのですが、これについても別項目で具体例をあげて説明します。
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