Q101 遺言を撤回・変更するには

【Question】

5年前に遺言書を作成したのですが、その後身辺に変化が生じたので、古い遺言を撤回して新しく作り直したいと考えています。どうすればいいでしょうか。

 

【Answer】

自筆証書遺言の場合には、遺言書がお手元にあれば、それを破棄して作りなおすだけでも十分です。

公正証書遺言の場合には、原本は公証役場に保管されています。
そのため、お手元にある公正証書の「正本」「謄本」を破棄しただけでは、遺言を撤回したことになりません

公正証書遺言を撤回するには、「以前の遺言を撤回する」という内容を含めた、新しい遺言を作ります。
この新しい遺言は、自筆証書遺言にしてもかまいませんが、どのような内容であっても自筆証書遺言である限り、家庭裁判所の検認手続きが必要になってしまいます。
やはり、公正証書で作り直すことをおすすめします。

 

【Reference】

遺言書は何度でも作りなおすことができます
丸々全部を撤回し、作り直すこともできますし、一部を変更することも可能です。
(※ただし、自筆証書遺言の場合には、変更するならば作り直したほうが確実です)

なお、 間違いや変更がわずかであれば、それが自筆証書遺言の場合には遺言書を訂正すれば済みます。

 

自筆証書遺言の撤回・変更

自筆証書遺言は、次の方法をもちいて、撤回したり変更したりすることができます。

(1) 破棄して作り直す。
(2) 「以前の遺言を撤回する」という内容の遺言を作成する。

どちらかの方法でかまいませんが、(1)と(2)の両方を併用すると、より確実になります。

なお、以前書いた遺言の一部だけを撤回・変更することもできますが、撤回・変更する場所をきちんと特定する必要があります。
たとえば、
「何年何月何日付けで作成済みの遺言書のうち、第何条を撤回して下記のように変更する。」
として、新しい内容を記載するようにします。

ただし、このような一部の撤回・変更は、一歩間違えると遺言者の意図とは異なる内容になってしまう危険性があります。
自筆証書遺言では、一部だけを撤回・変更するよりも、全部作り直したほうが確実です。

 

 

公正証書遺言の撤回・変更

公正証書遺言の場合には、原本は公証役場に保管されています。
そのため、公正証書の「正本」「謄本」を破棄しただけでは、遺言を撤回したことになりません
公正証書遺言を撤回するには、「以前の遺言を撤回する」という内容の新しい遺言を作らなければなりません。

この新しい遺言書は、公正証書でも自筆証書でもかまわないことになっています。
しかし、自筆証書遺言である以上、どのような遺言であっても、発見した人が家庭裁判所に検認の申し立てをしなければなりません。
また、撤回前の公正証書遺言を利用して、不動産の相続登記(名義変更)や銀行預金の解約を行うことができてしまうという危険性もあります。
トラブルを避けるために、新しい遺言もなるべく公正証書遺言にするべきです。

なお、公正証書で遺言の全部または一部を取り消すだけなら、公証人手数料は11,000円です(公証人手数料令19条2項)。
内容を変更するとさらに所定の手数料がかかりますが、変更の内容が「補充又は更正」の範囲であるならば、所定の手数料の2分の1(以前と同じ公証役場なら4分の1)で済みます(同24条2項)。

 

遺言が2つある場合の取り扱い

上記のように、「以前の遺言書を撤回する」という一文を新しい遺言に盛り込んでおけば、問題は生じません。

しかし、このような文章が入っておらず、内容の異なる2通以上の遺言書が存在する場合があります。
たとえば、「A土地を長男に相続させる」と書かれた遺言と、「A土地を次男に相続させる」と書かれた遺言の、両方が見つかるケースです。この場合、A土地に関する記載内容は、明らかに矛盾しています。

内容の矛盾する2通以上の遺言がある場合には、矛盾している部分についてだけ、作成日付の新しい遺言が古い遺言に優先し、その部分については古い遺言の内容が取り消されたものとみなされます
公正証書か自筆証書かは関係なく、単純に日付が新しいほうが有効になります。

なお、矛盾が生じていない部分については、それぞれの遺言はどちらも有効です。

 

 

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2014年6月12日 | カテゴリー :