Q043 遺産分割協議をやり直しできるか(無効事由がある場合)

【Question】

先日、遺産分割協議がまとまって分割協議書への署名捺印を済ませ、名義変更や相続税の申告も終わりました。 しかし、後になって兄が父の相続財産である預金や株式の一部を隠していたことがわかりました。隠されていた預金などの額は小さいものではなく、遺産分割協議からやり直したいと思うのですが、このようなことは可能なのでしょうか?

 

【Answer】

隠されていた相続財産を再分配するだけで解決するならば、すでに終わっている遺産分割協議とは別に、隠されていた遺産だけを分割するという方法があります。

しかし、隠されていた相続財産の存在を他の相続人が知っていたならば、そもそも当初の遺産分割協議のような内容では到底まとまっていなかったような場合には、成立した遺産分割協議を無効として遺産分割協議をやり直す余地があります。

このような形で遺産分割をやり直すと、すでに相続税申告が済んでいる場合には修正申告をせざるを得ません。隠されていた相続財産について追徴税が発生する他、延滞税の納付義務もあります。もしも隠されていた相続財産が税務署の税務調査で見つかったものであれば、過少申告加算税が課される可能性もあります。

 

【Reference】

遺産分割協議において単に相続財産の一部が漏れていたというだけでは、新たに相続財産が見つかったということをもっけの幸いとしてすでに成立した遺産分割協議をひっくり返すことはできません。この場合には新たに発見された財産だけを再分割すれば済んでしまう話だからです(Q038)。

しかし、たとえば一部の相続人が価値の高い相続財産を隠していて、遺産分割協議が終わった後にその事実が明るみになったというように、もしもその相続財産の存在を他の相続人が初めから知っていたならばそのような遺産分割協議は成立しなかっただろうと考えられるような場合があります。

この場合には、遺産分割協議において重要な部分に錯誤がありますから、相続人は遺産分割協議の錯誤による無効を主張し、再び遺産分割協議を行うことができるでしょう。
このような形で遺産分割をやり直すならば、すでに不動産などの名義変更が済んでいる場合にはこれもやり直すことになります。

問題は、相続税申告が終わっている場合です。相続財産が増えていますから、修正申告による追徴税は避けられません。
延滞税の納付義務もあります。
もしも隠されていた相続財産が税務署の税務調査で見つかったものであれば、過少申告加算税が課される可能性もあります。
これによって発生した損害については、遺産を隠していた相続人に対する損害賠償の問題となります。

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