Q126 代償分割の注意点は

【Question】

昨年、母が亡くなりました。
母の遺産は主に自宅の土地・建物だけで、現金預金はほとんどありません。
父は5年前に死去しており、相続人は私と妹の2人だけです。

自宅を売却して妹と売却代金を分けてもいいのですが、現在、この家には私が住んでおりますので、妹には金銭を渡し、自宅不動産を私が相続するという解決がもっとも理想的です。

このような場合、私にお金があれば『代償分割』という方法があることを知りましたが、私には妹が納得するような十分な金銭はありません。
ただ、私には父が死亡した時に相続した別の土地があり、妹もこの土地を欲しがっているので、現金の代わりにこの土地を差し出しても良いと考えています。このような遺産分割は可能ですか?また、税金等はどうなりますか?

 

【Answer】

遺産分割にはいくつかの方法がありますが(Q037)、ある遺産を相続する代わりに自己が所有する財産を他の相続人に交付する方法のことを代償分割といいます。

代償として代わりに渡す財産(代償財産)は現金であることが多いですが、相続人間で合意すれば現金以外の物や権利でもかまいません。もちろん土地でもOKです。

ただし、以下の点に注意してください。

(1)遺産分割協議書には、代償分割の内容を必ず明記する。

(2)代償財産が土地や株式のような譲渡所得を生じうる財産である場合、これらを時価で売却したものとみなされ、計算上利益が出る場合には、あなたはこの利益に対し譲渡所得税住民税を納める必要があります。

(3)代償財産が不動産(土地や建物)である場合には、取得した妹様に不動産取得税がかかります。また、登記手続きで登録免許税がかかりますが、通常の相続登記と異なり税率が高いです(固定資産税評価額の2%)。

(4)相続税がかかる場合、代償財産を受けとった相続人はそのぶんだけ相続税の課税価格が上がり、代償財産を差し出した相続人はそのぶんだけ相続税の課税価格が下がります。

 

 

【Reference】

代償分割とは

相続財産がたとえば自宅だけしかなく、相続人が二人以上いると、これを均等に配分することは事実上不可能です。

たとえば、相続人がAとBの二人だとして、Aが自宅を相続すればBには何も残りません。
だからといって、AとBとで共有にしたところで、Aがこの自宅に居住しBが居住しないならば、Bには何にもメリットがありません。さらにこの状態でAまたはBが死亡してしまうと、その相続によってそれぞれの子や配偶者が共有者となり、権利関係が複雑になります。一度共有にしてしまうと、これを単独所有にするには相当の時間多額の費用が必要になるのです。共有にして良いのは、すぐに売却するケースくらいなものです。

このような共有相続を回避する方法の一つが代償分割です。
代償分割とは、遺産分割によって価値の高い相続財産を取得した相続人が、その他の相続人に対して現金などの自己の資産を交付する遺産分割の方法です。
そして、代わりに提供する自己の資産のことを、代償財産とか代償交付財産といいます。

代償分割は、相続財産に農地や事業用不動産、同族会社の株式等が含まれる場合に細分化・共有化を避ける手段として、しばしば利用されます。

 

遺産分割協議書の書き方に注意!

代償分割を内容とした遺産分割をすることで相続人間に合意が成立したならば、遺産分割協議書には必ず代償交付の内容をはっきりと記載しておくことが大切です。

例えば、代償財産が現金であれば、「相続人Aは、取得した上記相続財産の代償として、相続人Bに金X万円を支払う」というように記載しておけば、誰が見ても「ああ、これは代償分割なんだな」と分かります。

このように明確に記載しておかないと、代償分割であることがわからないので、相続人間で単純な贈与が行われたものとして贈与税がかかるおそれがあります。

 

土地や株式を代償交付しても良い。しかし…

代償財産は現金であることが多いですが、土地・建物のような不動産や各種債権(株式、債券など)でも良く、譲渡が禁止されているものでなければ代償財産とすることができます。

しかし、現金以外の資産を代償財産にすると、このような資産はたいてい譲渡所得税の対象資産ですから、税務上はみなし譲渡所得の適用があります。つまり、代償交付を履行した時点において時価で売却したのと同様に取り扱われ、取得価額等を差し引いて利益が出ている場合には、その利益分に対して譲渡所得税住民税がかかります。
ちなみに、代償財産が譲渡所得税の特例を受けられるような『居住用不動産』であれば、譲渡所得の金額が3,000万円以下ならば事実上免税となると思われます。このような特例がなければ、長期または短期の区分に応じて譲渡所得税が課税されます。

なお、代償財産を取得した相続人については、その履行時点の時価によりその資産を取得したことになります。

 

代償財産が土地・建物である場合には

代償財産が土地建物のような『不動産』である場合、受け取った側に不動産取得税が課せられます。
また、代償不動産について「遺産分割による贈与」という登記原因で所有権移転登記を行うことになり、この場合、登記の際に納付する登録免許税は、固定資産税評価額の2%となります。故人の名義から相続人に「相続」を登記原因として所有権移転登記を行う場合には0.4%ですから、それと比べると5倍です。

 

代償分割の場合の相続税

相続税がかかる場合(相続税の基礎控除額を超えている場合)には、代償分割によってどのような影響が出るのでしょうか。

代償分割によって相続財産の全部または一部の分割が行われた場合、次のように相続税の課税価格を加減します(相続税基本通達11の2-9)。当然と言えば当然ではありますが。

  • 代償財産の交付を受けた相続人の課税価格:
    相続または遺贈により取得した現物の財産の価額+交付を受けた代償財産の価額
  • 代償財産を交付した相続人の課税価格:
    相続または遺贈により取得した現物の財産の価額-交付した代償財産の価額

 

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Q110 「相続分がないことの証明書」「特別受益証明書」とは

【Question】

半年前に父がなくなりました。
父の遺産を一番上の兄が相続することに、私としては異議がないのですが、その兄から「相続分がないことの証明書」というものが郵送されてきました。

兄の話では、これに署名して実印を押し、印鑑証明書を添付して送り返してほしいということですが、書類の意味が良く分からず、署名捺印するべきか悩んでいます。

 

【Answer】

その書類は、あなたがお父様から生前に前倒しで財産をもらいうけていて(生前贈与)、その生前贈与財産の価値が本来の相続分を超えてしまっているので、今回の相続については取り分が残っていないことを認めます、という書類です。

法定相続分を超えるような生前贈与を受けていたのが事実であれば問題ありませんが、そのような事実がないのであれば、事実に反する書類に署名捺印することには、やはり問題があります。

遺産を相続するおつもりがないとのことですし、お兄様にも悪意はないのだろうと推察しますが、トラブルを防ぐためにも『遺産分割協議書』等の正当な書類に替えてもらうように働きかけてみてください。

また、遺産の中に債務(負債)が多いようなら、『家庭裁判所での相続放棄』手続きを検討すべきです。

 

 

【Reference】

故人から相続人へ土地や建物の名義変更(相続登記)をする目的で、相続人の一人が他の相続人に、『相続分がないことの証明書』とか『特別受益証明書』という書類に署名捺印するように求めることがあります。

この書類があれば、家庭裁判所の相続放棄手続きや遺産分割協議を省略して、相続による不動産の名義変更ができてしまいます
そこで、手続きを簡単にするという目的のために利用されているケースが少なくありません。

しかし、その書類の内容を大まかにいえば、「(故人の)生前に相続分を超える財産の贈与を受けていたので、相続分はありません」というものです。これは何を意味しているのでしょうか。

民法には、生前贈与を遺産の前渡しとする考え方があり、これを特別受益といいます。

この特別受益について、民法903条2項では、「遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。」と定められており、遺産の前渡しとして生前贈与された財産が本来の相続分よりも多ければ、当然ながら相続の際に取り分は残っていないということになります。

『相続分がないことの証明書』・『特別受益証明書』は、この仕組みを利用しているわけです。

実際に相続分を超えるような生前贈与を受けているならば別ですが、贈与を受けていないのに贈与を受けたとして署名捺印することには、相続人間のトラブルや、相続債権者からの取り立てを受ける等のリスクを伴います。

痛くもない腹を探られないためにも、正式な遺産分割(または家庭裁判所の相続放棄)の手続きをとることをおすすめします。

 

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Q103 遺産分割調停とはどんなものか

【Question】

父の遺産について、父と同居していた私(仙台在住)、別居の弟(新潟在住)、別居の妹(福岡在住)と話し合っていますが、まとまりそうにありません。

遺産分割協議がまとまらないならば、家庭裁判所に『調停』を申し立てるそうですが、『調停』とはどんな手続きなのでしょうか。

 

【Answer】

遺産分割について、共同相続人間の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の『遺産分割調停』を利用することができます。

調停では、『調停委員』という裁判所から任命された民間人が第三者としてアドバイスしたり提案したりしながら、相続人全員が合意するように話し合いを進めていきます。

メリットとしては、第三者が入るので、家族・当事者だけで話し合うよりも、冷静に話し合いが成立する可能性があります

反面、調停は全員参加が原則なので、一人でも欠けると不調に終わってしまいます。

また、呼び出された日時(もちろん平日)に出席しなければなりません。弁護士を代理人に立てた場合でも、遺産分割調停では原則として本人の出席が求められます。

さらに、回数は6~10回、期間としては半年から1年半というのが相場で、時間と手間がかかります。

もしも調停が不成立(不調)に終わると、そのまま審判という手続きに移行し、裁判官(家事審判官)の判断を仰ぐことになります。
その審判にも不服があれば、高等裁判所に不服を申し立てることができます。ここまで来ると、ゆうに数年はかかります。

 

 

【Reference】

 

遺産分割調停の申し立て

調停を利用するには、まず申し立てが必要です。
遺産分割調停では、相続人のうちの1名、または何名かの連名で、他の相続人全員を相手方として申し立てをします。

申し立ては書面で行うのが一般的です(法律上は口頭でもできることになっていますが、現実的ではありません)。
家庭裁判所においてある用紙に記入し、戸籍謄本や遺産目録などの必要書類を添付して提出します。
相続人が1名でも欠けると調停が無効になってしまうので、戸籍謄本(除籍・原戸籍謄本)は漏れなく提出しなければなりません。

 

次に、どこの家庭裁判所に申し立てるかが問題です。

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てるのが原則なので、ご相談者の場合は弟さんが住む新潟の家庭裁判所か、妹さんが住む福岡の家庭裁判所に申し立てることになります。被相続人の住所や、遺産の所在地ではありません。
ただし、相続人全員で合意すれば、別の家庭裁判所に申し立てても構いません。

なお、裁判所が遠く、調停期日に出席できない相続人がいる場合には、テレビ会議システムを利用した調停も可能になりました。この場合、調停が開かれる家庭裁判所ではなく、最寄りの家庭裁判所で事が足ります。

 

遺産分割の場合、調停とは別に審判という手続きがあります。これは、裁判官(家事審判官)に主導権をゆだね、最終的に裁判官に結論を出してもらう方法です。

遺産分割では、調停ではなくいきなり審判の申し立てをすることも可能になっています。
しかし、これはタテマエで、実際には申し立ての際に『調停』を申し立てるように指導されます。強行に審判を申し立てたとしても、家庭裁判所が職権で調停にまわします。遺産分割のようなデリケートな問題では、まず話し合いが優先されるのです。

 

相続人の範囲や遺産の帰属に争いがある場合

たとえば、
「生前に出されていた離婚届は無効なので、私には相続権がある」という人がいる場合、この人を無視して遺産分割調停を進めるわけにはいきません。この人の主張が認められれば、遺産分割調停は根本から引っ繰り返ってしまうからです。

また、
「兄名義の預金は、本当は亡くなった父の遺産だ」というような主張がある場合、それをあいまいにしたまま調停を重ねても、議論がかみ合わなくなってしまう可能性が高いでしょう。

このように、遺産分割を進める前に解決しておかなければならない問題のことを遺産分割の前提問題といい、次の4つが代表的なものです。

(1)相続人の範囲
(2)遺産の帰属
(3)遺言書の効力、解釈
(4)遺産分割協議(協議書)の効力

このような遺産分割の前提問題にあたる争いがある場合には、遺産分割調停・審判を続行するのは無理があります。この場合には、まず前提問題を、民事訴訟等によって解決することが当事者に求められます(すでに調停・審判が進行しているなら、いったん申し立てを取り下げるように勧告されるでしょう)。

 

遺産分割調停手続きの内容

遺産分割調停は、裁判官1名と複数の調停委員(裁判所が民間人の中から選任する)で構成される『調停委員会』が主導します。
調停は、この調停委員が相続人の間に入って進められます。

まず、調停期日と時刻を指定されて、当事者が呼び出されます。
遺産相続はデリケートな問題なので、弁護士を代理人に立てた場合でも、当事者本人が出席するよう強く求められます。

調停委員は、当事者双方から聞き取り調査をし、争点を整理していきます。また、それぞれがどのような遺産分割を望んでいるのか、希望を聞きだします。
この聞き取り調査は、通常、申し立て人と相手方とで別々に行われます。

争点が整理できたら、調停委員がさまざまなアドバイスをしながら、当事者間で合意が形成されるように話し合いが進められます。

 

遺産分割調停の終結

調停が成立した場合、調停調書にその合意内容が記載されます。この調停証書は確定判決と同じ効力をもつので、合意内容に従わない当事者に対しては、強制執行することが可能になります。

調停が不成立の場合、審判手続きに移行します。

なお、調停申し立てのうち、成立に至るのは6割強。かかった期間の平均は1年弱です。

 

被相続人の債務については効果がない

死亡により相続が開始すると、被相続人の債務(借金や滞納税など)は、法律上当然に分割され、各共同相続人がその法定相続分に応じて承継し、遺産分割の対象とはならないとするのが判例の考え方です(Q016ご参照)。

調停で特定の相続人が債務を引き受けたり、法定相続分とは異なる割合で債務を相続する内容の同意をしたりしても、債権者に対してはそれを主張することはできません。

 

相続人の一人が遺産を隠している場合

相続人の一人が遺産を隠しているような場合、遺産分割調停では、刑事事件のように強制的に調べることはできません。調停の段階では、相手方に隠している財産を開示するよう調停委員会に働きかけてもらうことが基本になります。ただし、どのような財産を隠しているのか(たとえば「A銀行に口座があったはずだ」等)について、原則として裏付けとなる資料の提出を求められます。

場合によっては、調停委員会に対して、金融機関等に対する調査嘱託権限を発動するようにお願いしたり、弁護士を立てている場合には弁護士法23条の2による照会制度を利用して調べてもらうことも考えられます。
しかし、結局どこに調査・照会をかけるのか、ある程度アタリをつけておかないと調べようがないので、アタリがあるのならば、調停委員会から相手方に問いただしてもらうのが、一番の早道でしょう。

 

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Q045 遺産分割後に被相続人の子が認知されたらどうなるか?

【Question】

亡父の相続について、子である私たち兄弟による遺産分割協議はすでに終了したのですが、亡父の子であると主張して認知の訴えを提起した人がおり、これが裁判上認められました。認知された子から遺産分割のやり直しを求められたら、これに応じなければならないのでしょうか。

 

【Answer】

遺産分割協議の後に認知された子が現れた場合には、遺産分割協議をやり直す必要はありませんが、認知された子の請求に応じて相続分にあたる額を価額賠償しなければなりません。なお、価額を計算する場合は請求時の時価によります。

 

【Reference】

相続が発生した後に子が認知される場合には、次のようなケースがあります。
(1)遺言で認知された場合
(2)父の生存中から認知の訴えが起こしていて、父の死後に認められた場合
(3)父の死亡後に認知の訴えを起こして、これが認められた場合

認知の効果は子の出生時までさかのぼって発生します(民法784条)から、認知された子は父親の死亡時に相続人であったことになります。

相続人を一人でも欠いた遺産分割協議は無効ですから、子が認知された時点で遺産分割協議が終わってしまっているならば、本来は協議をやり直さなければならないはずです(Q043)。
しかし、認知の訴えは父の死亡後3年以内なら提起することができ、その訴えが確定するまでにはさらに時間がかかることが考えられます。この間に遺産分割協議が成立して遺産を分配し、場合によっては引き継いだ遺産を売却などしなければならないかもしれず、それが認知の確定によってやり直しを迫られるとすれば、非常にやっかいです。

そこで、民法は特例を設けました。
婚姻外で生まれた子が父親の死後に認知された場合には、その子も遺産分割に参加できることはもちろんですが、認知される前に他の共同相続人が遺産分割を済ませていたり、遺産を処分したりしていた場合には、自己の相続分に相当する金額の支払いを他の共同相続人に請求できるだけにとどめたのです(民法910条)。

認知された子が請求できる金額は、請求時の時価によることになります。
また、認知された子も相続人には違いありませんから、相続債務についてはその相続分に応じて負担することになります。

 

なお、被相続人である父に子がいないものとして被相続人の父母や兄弟姉妹が遺産を相続した後に、認知された子が現れた場合には、認知された子が相続人となり被相続人の父母や兄弟姉妹は相続人とはなれなかったはずですから、認知された子は民法884条の『相続回復請求権』を行使できることになり、被相続人の父母や兄弟姉妹は相続した遺産を認知された子に返さなければなりません。この場合には金銭賠償というわけにはいかないのです。

 

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Q044 遺産分割でもらった遺産に不足や問題があったら?(共同相続人間の担保責任)

【Question】

遺産分割協議がまとまって、私は登記簿上で40坪(時価2,000万円相当)の土地を受け継ぐことになりました。ところが、この土地を実際に測量してみたところ35坪しかありませんでした。5坪足りませんから、私は250万円ぶんの損をした気持ちです。このような場合に遺産分割協議をやり直すことは可能なのでしょうか?

 

【Answer】

状況からすると遺産分割に無効事由があるとは言えないと考えられます。
相続人全員が合意すれば、成立した遺産分割協議を解除してやり直せる可能性はありますがあまり現実的とは言えず、課税の問題もあります。

このような場合には、民法の規定により他の共同相続人に対して不足額の補償を求めることができます。
ただし、補償を求めることができるのは『相続財産に問題があることを知ったときから1年間』に限られます。

【Reference】

遺産分割協議の結果ある相続人に分配された遺産が、協議のときに見積もっただけの価値がないことが後になって判明することがあります。
たとえば、次のような場合です。
1)遺産の数量に不足がある場合(ご相談のケース)
2)相続財産の一部が他人のものだった場合
3)分配した財産の上に実は担保がついていて、権利を失った
4)遺産に、分割時には分からなかった問題・キズがあり、評価どおりの価値がなかった

このような場合に遺産分割協議を無効としてやり直しを他の相続人に求めることができるかというと、これは難しいと言えます。遺産を分割するという協議の目的そのものは達成されていますし、落ち度のない他の相続人に再度の遺産分割を強いることは望ましくないからです。

そこで、このような場合には、他の共同相続人に対して補償を求めることができます。これを『共同相続人間の担保責任』と言います(民法911条)。

この補償は、他の相続人に過失が無くても当然に認められます。不公平を是正するための救済措置だからです。

他の共同相続人が2名以上いるならば、民法911条で損失負担の割合は相続分の割合に応じて負担するとなっています。
しかし、法定相続分どおりに分割されていないならば、遺産分割の際の評価に従い、現実に分配された財産価値の割合に応じて損失も配分する(”具体的相続分”に応じた配分)のが公平であると言えます。

したがって、共同相続人のうちの一人が相続財産の「全部」を引き継いだ場合には、遺産の中に価値が足りないものがあっても、他の相続人に補償を求めることはできないのは当然です。

他の共同相続人に補償を請求できるのは、期限があります。
その期限は、財産を受け継いだ相続人が上記のような問題があることを知った時から1年間です。
落ち度のない他の相続人にいつまでも責任を負わせるのは酷であるからです。

ご参考 民法911条
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。

(共同相続人間の担保責任は、売買契約における売主の担保責任と同様に考えられています。ただし、売主の担保責任の負い方には、1・解除、2・代金減額、3・損害賠償(補償)がありますが、このうち解除については判例で否定されており、原則として損害賠償(補償)という形で責任を負うことになります)

 

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Q043 遺産分割協議をやり直しできるか(無効事由がある場合)

【Question】

先日、遺産分割協議がまとまって分割協議書への署名捺印を済ませ、名義変更や相続税の申告も終わりました。 しかし、後になって兄が父の相続財産である預金や株式の一部を隠していたことがわかりました。隠されていた預金などの額は小さいものではなく、遺産分割協議からやり直したいと思うのですが、このようなことは可能なのでしょうか?

 

【Answer】

隠されていた相続財産を再分配するだけで解決するならば、すでに終わっている遺産分割協議とは別に、隠されていた遺産だけを分割するという方法があります。

しかし、隠されていた相続財産の存在を他の相続人が知っていたならば、そもそも当初の遺産分割協議のような内容では到底まとまっていなかったような場合には、成立した遺産分割協議を無効として遺産分割協議をやり直す余地があります。

このような形で遺産分割をやり直すと、すでに相続税申告が済んでいる場合には修正申告をせざるを得ません。隠されていた相続財産について追徴税が発生する他、延滞税の納付義務もあります。もしも隠されていた相続財産が税務署の税務調査で見つかったものであれば、過少申告加算税が課される可能性もあります。

 

【Reference】

遺産分割協議において単に相続財産の一部が漏れていたというだけでは、新たに相続財産が見つかったということをもっけの幸いとしてすでに成立した遺産分割協議をひっくり返すことはできません。この場合には新たに発見された財産だけを再分割すれば済んでしまう話だからです(Q038)。

しかし、たとえば一部の相続人が価値の高い相続財産を隠していて、遺産分割協議が終わった後にその事実が明るみになったというように、もしもその相続財産の存在を他の相続人が初めから知っていたならばそのような遺産分割協議は成立しなかっただろうと考えられるような場合があります。

この場合には、遺産分割協議において重要な部分に錯誤がありますから、相続人は遺産分割協議の錯誤による無効を主張し、再び遺産分割協議を行うことができるでしょう。
このような形で遺産分割をやり直すならば、すでに不動産などの名義変更が済んでいる場合にはこれもやり直すことになります。

問題は、相続税申告が終わっている場合です。相続財産が増えていますから、修正申告による追徴税は避けられません。
延滞税の納付義務もあります。
もしも隠されていた相続財産が税務署の税務調査で見つかったものであれば、過少申告加算税が課される可能性もあります。
これによって発生した損害については、遺産を隠していた相続人に対する損害賠償の問題となります。

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Q042 遺産分割協議をやり直しできるか(相続人の合意による場合)

【Question】

先日、遺産分割協議がまとまって分割協議書への署名捺印を済ませました。
しかし、協議の中で長兄(A)が取得することになった貸駐車場については、諸事情から次兄(B)が継いだほうがいいのではないかという話が持ち上がっています。これについては他の相続人の間でも異存はないのですが、一度決まった遺産分割協議をやり直しても問題はないのでしょうか。
なお、その貸駐車場を含めて名義変更はすべて終わっています。

 

【Answer】

法律上は相続人全員の合意があれば遺産分割協議のやり直しは可能なのですが、税務上は原則として兄Aから次兄Bへの贈与として贈与税(または譲渡所得税)が課税されます。贈与税は税率が高いため、合意による遺産分割協議のやり直しを行う際には慎重にならざるをえません。

贈与税などの課税問題がクリアできれば再び遺産分割協議を行いますが、本件の貸駐車場は長兄Aへの名義変更(相続を原因とする所有権移転登記)を完了していますから、いったん長兄Aへの所有権移転登記を抹消し(所有権抹消登記または更正登記)、再度次兄Bへの名義変更をすることになります。登記申請に伴う登録免許税についてももう一度納付しなければなりません。

 

【Reference】

遺産分割をやり直したいというご相談は意外とあります。その理由は、次の2通りに大別できます。

(1)相続人全員の合意によって遺産分割の一部または全部を変更したいというケース
この場合、法的には「一度成立した遺産分割協議を合意解除し、再び遺産分割協議をする」と考えます。「すでに成立した遺産分割協議を変更する」とは考えません。

(2)遺産分割協議に無効の原因があるケース
たとえば、一部の相続人が価値の高い相続財産を隠していて、遺産分割協議が終わった後にその事実が明るみになった場合、もしもその相続財産の存在を他の相続人が初めから知っていたならばそのような遺産分割協議は成立しなかっただろうと考えられるような場合があります。
この場合には、遺産分割協議において重要な部分に錯誤がありますから、相続人は遺産分割協議の錯誤による無効を主張し、再び遺産分割協議を行うことができるでしょう。

なお、「単に一部の相続財産が協議から漏れていた」という場合には、後から発見された相続財産について追加的に遺産分割協議をすれば良いだけの話ですから、すでに成立した遺産分割協議の無効を主張することはできません。

本件のご相談は(1)のケースですので、ここで解説します。(2)のケースは次のQ043で解説します。

 

合意による遺産分割協議のやり直し

相続人全員の合意によって遺産分割協議のやり直しができるかどうかについては最高裁判決があります。

「共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではなく・・・」(平成2年9月27日最高裁判決)

法律的な言い回しでわかりにくいですが、合意による遺産分割協議のやり直しは「できる」という判断です。
これを受けて、たとえ不動産の所有権移転登記を済ませてしまっていた場合でも、これをいったん抹消して再分割後にあらためて所有権を移転することができるようになっています。

このように司法の判断や手続きでは問題ないのですが、いざ相続人間の合意によって遺産分割協議のやり直しをすると、思いもよらぬ課税問題に直面することになります。
と言うのも、遺産分割協議のやり直しによって相続人間で配分し直した財産は、『贈与』『交換』『売買』など、遺産分割以外の方法によって取得したものとして取り扱われ、贈与税や譲渡所得税がかかってきてしまうのです(相続税法基本通達19の2-8より。本ページ末尾に記載)。

その理由は、このような合意による遺産分割のやり直しによる再配分が「一般的には、共同相続人間の自由な意志に基づく贈与又は交換等を意図して行われるものである」から、なのだそうです(名古屋国税局回答事例より。国税庁の言いたい事はなんとなくわかりますが、論理は成り立っていませんね・・・)。

従いまして、相続税を納めている場合には、それとは別に贈与税や譲渡所得税がかかってきてしまいます。
そうでなくても贈与税は税率が高いため、基本的には合意による遺産分割協議のやり直しは避けるべきであり、そのためにも最初の遺産分割協議をくれぐれも慎重にまとめることが大切なのです。

もっとも、(よほど)やむをえない理由があって遺産分割協議の合意による解除をする必要がある場合には、多少お目こぼしはあるようですが・・・

 

ご参考 相続税法基本通達19の2-8
「ただし、当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならないのであるから留意する。(昭47直資2-130追加、昭50直資2-257、平6課資2-114改正)」

 

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Q041 相続人の中に未成年者がいる場合の遺産分割協議は?

【Question】

私と小学生の子供2人を残して、夫が亡くなりました。
住宅ローンは団信に入っていたので清算されましたが、残された自宅は私名義にしようと考えています。子供たちがまだ幼いので、私が親権者として遺産分割協議書に署名捺印すればいいのでしょうか。

 

【Answer】

親権者は未成年者である子の財産管理権を有しますが、未成年の子がいるご夫婦の一方が亡くなった場合の遺産分割協議では、配偶者は未成年の子の親権者として、子を代理して遺産分割協議をすることはできません。
家庭裁判所で未成年者の特別代理人を選任してもらい、その特別代理人が未成年の子を代理して遺産分割協議に参加することになります。子が2人ならば特別代理人も2名選任してもらう必要があります。

家庭裁判所に特別代理人の選任を求める場合、遺産分割協議書の案を添付します。このとき、未成年者の相続分には十分な配慮をすることを求められます。なるべく司法書士のサポートを受けることをおすすめします。

 

【Reference】

通常、親権は未成年の子に代わって親権者である父と母が共同で行使するのですが、このケースでは父が亡くなっているので、親権者は母だけ、ということになります。

すると、父の遺産について分割をする母は、子の親権者としても協議に参加することになって、母の立場と子の親権者としての立場が衝突します。これを「利益相反(りえきそうはん)」といいます。

このような利益相反関係にある場合、遺産分割をする前提として、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てます。

申し立てのときに特別代理人の候補者を用意して申し立てるのが通常ですが、この候補者は誰でもかまいません。一般的には未成年者のご親族とすることが多いです。

ただし、申し立ての時に遺産分割協議書の案を用意するのですが、遺産分割に参加することができない未成年者の権利を守るため、未成年者の法定相続分を確保した分割協議書案でないと家庭裁判所は認めてくれません。

また、分割協議書案に記載された財産について、資料の提出を求めてくる家庭裁判所も少なくありません。

特別代理人選任の申し立てにあたりましては、なるべく司法書士のサポートを受けられることをおすすめします。

 

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Q040 遺産分割協議のために相続人全員が集まる必要があるか

【Question】

遺産分割協議をしなければならないのですが、きょうだいが皆遠方に住んでおり、全員集まるのが大変です。
そうは言っても法律の決まりですから、やはり皆で顔を合わせて話し合わないといけないのでしょうか。できれば電話で済ませられるとありがたいのですが。

 

【Answer】

遺産分割協議は、もちろん相続人全員で集まって腹を割って話し合えれば、それに越したことはありません。

しかし、相続人が遠方にいる場合には全員が一度に集まるというのは難しいかもしれません。その場合には何度かに分けて集まっても、電話を利用して話をまとめても、問題はありません。

ただし、集合しなくても相続人全員の意見が一致することが必要で、相続人を一人でも欠いた遺産分割協議は無効です。

 

【Reference】

遺産分割協議と言うと相続人全員が一堂に会して話し合いをしなければならないようなイメージがありますが、一度に全員が集まれないのであれば何度かに分けても良く、電話で話し合っても方法として問題はありません。
(協議がまとまらない場合に利用される家庭裁判所の遺産分割調停手続きでも、新しい家事事件手続法によって電話による調停が可能になりました)

ただし、遺産分割協議の結果を書面にまとめ、相続人全員が署名捺印(実印)したうえ印鑑証明書をつけなければ、不動産の名義変更などができません(注1)。

そのため、電話で遺産分割協議をする場合には、
(1)1通の遺産分割協議書を郵送でやり取りして、持ち回りで署名捺印をする
か、または
(2)『遺産分割協議証明書』という全員同じ内容の書面を人数分用意して、相続人それぞれに郵送して署名捺印してもらう
か、どちらかの方法で書面をととのえる必要があります。

これらの書面への捺印はそれぞれの実印であり、印鑑証明書をつけてもらいますので、郵送で紛失してしまうと大変です。書類の受け渡しを行う際には書留扱いとし、取り扱いに十分注意してください。

また、遺産の中に預貯金があると、その手続きにあたって金融機関所定の様式に相続人全員の署名捺印を求められるケースが少なくありません。
何度も書類のやり取りをするのは面倒ですから、遺産分割協議書(または遺産分割協議証明書)を郵送でやり取りするときには、このような金融機関所定の用紙も一緒に同封しておくようにすれば楽です。

(注1)ワープロソフトなどで遺産分割協議書(または遺産分割協議証明書)を作るときに相続人の住所氏名まで入力してから印刷し、相続人本人に捺印(実印)だけをしてもらう方法でも有効であり、手続き自体は可能です。
ただし紛争の原因になることがありますので、なるべく自筆署名のほうが望ましいと言えます。

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Q039 遺産分割協議の前に、預金の払い戻しはできる?

【Question】

遺産分割協議がまとまるまでには、しばらく時間がかかりそうです。
そこで、預貯金については、私の相続分だけでも先に払い戻しを受けたいと考えているのですが、このような手続きは可能なのでしょうか。

 

【Answer】

歯切れの悪い回答で恐縮ですが、遺産である預貯金について、相続人が金融機関に対してその相続分に応じて個別に払い戻しを請求することは”法律的”には可能でも、現実には金融機関が応じてくれないケースが多いです。

遺産分割協議前に預金を払い戻すには、金融機関所定の依頼書様式に相続人全員で署名捺印し、戸籍謄本・印鑑証明書などの必要書類を添付して請求する必要があります。

もっとも金融機関によっては個別請求に応じてくれるところもありますので(少額な場合など、金額によって応じてくれるところもある)、まずは窓口で確認してみることをおすすめします。

なお、ゆうちょ銀行(郵便局)の場合は相続人からの個別請求に応じてくれています(一部例外あり)。

2016年12月19日補足:最高裁において、預貯金を遺産分割の対象とする判例変更があり、今後個別請求は困難になると思われます。判決内容と実務の運用を確認のうえ、本記事の内容を変更する予定です。

 

【Reference】

※2016年12月19日の最高裁判決により、今後内容の修正を行います。

法律的には預貯金は当然に分割される。しかし・・・

ある人が他の人に対して対して一定の行為をするよう要求できる権利のことを、法律用語で『債権』と言います。
銀行預金がある場合には、預けている人が銀行から預金を払い戻してもらう権利があるので、『預金債権』と言います。

この預金債権は、数量的に分けることができるので『可分債権』である、とされています(反対語は『不可分債権』)。
そして、共同相続される場合には、このような可分債権である預金債権は「相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となる」というのが判例の考え方です(大正9年12月22日大審院判決,昭和29年4月8日最高裁判決,平成16年4月20日最高裁判決等)。

判例の考え方によれば、遺産分割協議前に、相続人が各自の相続分に応じた払い戻しができそうです。
ところが、現実にはこれが大変難しいのです。

 

金融機関が相続人個別の払い戻し請求に応じることはあまりない

「判例でこうなっているのだから、私の相続分だけ預貯金を払い戻してください」と言っても、応じてくれることはほとんどありません。
共同相続の場合個別請求には応じないという特約があるケースもあり、慣行的に相続人個別の払い戻し請求に応じていないケースもあります。
また、払い戻し請求をした相続人が相続欠格によって相続人の地位を失っている可能性や、遺言書によってその預貯金が他の相続人に帰属している可能性もあり、このような場合に払い戻しをしてしまうとあとで問題になりかねません。金融機関が相続人からの個別請求に応じないのは、このようにきちんとした理由があるのです。

したがって、遺産分割協議前に預貯金の払い戻しを求めるには、
(1)金融機関所定の様式に相続人全員で署名捺印して払い戻す
か、または
(2)訴訟を提起する
か、どちらかの方法をとることになります。

もっとも、金融機関によっては、融通を効かせてくれるところもあります。過去の経験では「葬儀費用相当分」とか「50万円以内」などの条件付きで、払い戻しに応じてくれる金融機関がありました。

 

ゆうちょ(郵便局)は、原則として相続人個別の払い戻しに応じてくれる

ゆうちょ銀行(郵便局)の場合はやや特殊で、原則として相続人個別の払い戻しに応じてくれます。
ただし、相続人の一部から個別の払い戻し請求を受けた場合には、他の相続人に通知する仕組みになっています。

ただし、『平成19年10月1日より前に預け入れた定額郵便貯金』については、旧郵便貯金法の規定によって据置期間中は分割払い戻しをすることはできません(参考 平成22年10月8日最高裁判決)。平成19年10月1日とは、いわゆる郵政民営化が始まった日で、この日以降に預け入れた定額郵便貯金ならば分割払い戻しの対象になります。

 

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