「相続登記ラクラクプラン」特別料金の適用条件が変わります

相続あんしん相談室(八潮・三郷相談室)のホームページにお越しいただき、誠にありがとうございます。

さて、ご提供中の「相続登記ラクラクプラン」につきまして、特別料金の適用条件を下記のとおり一部変更いたします(サービスの内容につきましては変更ございません)。

なにとぞご理解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

【変更内容】

・「相続登記ラクラクプラン」特別料金(基本料金:税別54,800円)につきましては、今までは事務所にお越しのうえお申込みいただいた場合にも適用しておりましたが、今後は当事務所で無料相談・お申込みの場合には特別価格を適用しないことといたします

・これにより「相続登記ラクラクプラン」をご利用いただく場合に特別料金が適用されるのは、電話またはメールフォームをご利用してパンフレットをお申込みいただき、郵便や電話、またはメールによるご相談のみですべての手続きを完了した場合に限らせていただきます

・なお、「戸籍取り寄せラクラクプラン」につきましては今までどおり変更ございませんが、近日中にサービス内容のパワーアップを予定しております。

【サービス変更の時期】

2018年(平成30年)7月1日以降に資料請求または初回の相談予約をいただいた場合から適用いたします。

【変更の理由】

・「相続登記ラクラクプラン」で一般のお客様と異なる特別料金をご用意していたのは、インターネットと郵便を活用したサービスならば、資格者による対面相談を省略することによって時間的なコストを削減できる、という理由からでした。

・しかし、最近では当サービスの認知度が大きく上がり、当ホームページをご覧いただいたうえで来店されるお客様がとても増えてまいりました、すると、当ホームページを見たお客様とそうでないお客様との間で料金に差をつける意味がなくなり、かえって不公平なのではないかと思われました。

・そこで、特別料金についてはインターネットや郵便等、非対面でサービスを提供できる場合に限定させていただきたく存じます。なにとぞサービス変更の趣旨についてご理解を賜りますようお願い申し上げます。

 

「実例から見た民事信託」セミナーを開催しました

IMG_4148IMG_4156

去る11月1日,税理士事務所様にお招きいただいて「民事信託(家族信託)」のセミナーを開催いたしました。

セミナーの内容は,民事信託の設定から不動産登記・預金口座の開設まで,当事務所でサポートした実例をもとにしたものです。

民事信託(家族信託)は認知症対策から相続対策までを一貫して行える強力なツールとして,またそれ以外にも幅広い活用可能性があるものとして,現在非常に注目が集まっています。当事務所でも後見制度や公正証書遺言と並び,民事信託には積極的に取り組んでいます。

なお,民事信託(家族信託)については,今後当ホームページでも内容を充実させるほか,2016年中には専門ホームページを開設する予定です。どうぞご期待下さい!

 

 

 

「公益財団法人日本ライフ協会」が高齢者預託金2.7億を流用

毎日新聞で、「公益財団法人日本ライフ協会」が高齢者預託金約2.7億円を流用し、全理事が辞任する事態となっていることが判明したという報道がありました。

http://mainichi.jp/articles/20160119/k00/00m/040/127000c

日本ライフ協会は、1人暮らしの高齢者がアパートなどに入居する際の身元保証や通院の付き添い、銀行手続きの代行から死亡後の葬儀・納骨までを一括契約する事業を行っていました。

なお、当事務所から同協会を紹介したことはございません。

 

 

 

Q136 相続税の申告が必要かどうかを確認する方法は?

【Question】

父の遺産について、相続手続きを進めています。
遺産の内容は、父が住んでいた自宅と預貯金が主で、ほかに生命保険金を受け取っています。

相続税は相続発生から10ヶ月以内に申告しなければならない、ということは承知しています。
でも、「遺産の額が相続税の基礎控除額に達していなければ、そもそも相続税の申告は必要ない」ことも知っています。

そこで、相続税の申告が必要かどうかを自分で確認したいのですが、何か良い方法はないでしょうか。

 

【Answer】

まずは税務署や税理士事務所に相談してみると良いと思いますが、国税庁のホームページに『相続税の申告要否判定コーナー』というページが開設されましたので、これを利用してみる方法もあります。

 

 

【Reference】

2015年から、相続税の基礎控除額が引き下げられました(詳しくはQ046)。
そのため、今までであれば相続税がかからなかったけれども今後は相続税の課税対象となるという方が、特に大都市部を中心に増加すると見込まれています。

相続税の申告が必要になるくらい遺産が多いと、相続発生から10ヶ月以内に相続税の申告をしなければなりません。もしも期限内に申告・納付をしないと延滞税がかかるだけではなく、配偶者控除や小規模宅地の特例のように納税者に有利な控除・特例が利用できなくなるおそれがあります。

そこで、相続税の申告漏れがないように、国税庁・税務署は積極的に注意をうながしています。その一環として、国税庁ホームページの中に「相続税の申告要否判定コーナー」が開設されました(2015年5月11日現在、なぜか直接リンクを貼れないので、入り口のページはこちらです。入り口が変わったらごめんなさい)。

相続税申告で遺産総額をはじき出す際、土地の路線価を計算するところがなかなか厄介ですが、このコーナーでは単純なものであれば土地の路線価も計算してくれます。また、死亡保険金・死亡退職金の控除も自動計算です。

 

利用上の注意

このコーナーですが、相続税の税額は計算してくれません
相続税の税額は、遺産総額がわかれば自動的に税額が決まる、というものではないからです。遺産の分け方や各種控除・特例の組み合わせによって税額が大きく変わるので、遺産総額だけでは税額まで計算することができないのです。

「税額がわからないのでは意味がない」と感じる方も多いかもしれません。しかし、申告期限を過ぎてしまうと納税者側がかなり不利な取り扱いを受けるのは間違いありませんから、まず「相続税の申告が必要かどうか」をチェックするということが重要です。

また、当然のことながら、入力したものしか計算の対象になりませんから、入力を漏らしてしまえばそれまでです。「名義預金」「定期金に関する権利」なども故人の遺産には違いがありませんから、このコーナーの利用はあくまでも自己責任です。
不安があるならば、やはり専門家の助けを受けたほうが良いでしょう。

 

ちなみに当事務所でも『相続税課税判定ブック』という冊子を、前に作ってお客様に配布していたことがあります。
これは冊子なので計算機を使わなければなりませんが、コンセプトそのものは国税庁の『相続税の申告要否判定コーナー』と同じです。
当事務所の『相続税課税判定ブック』をプログラム化して、自動計算できるようにしようと考えていたのですが、どうやら国税庁に先を越されてしまいました。

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2015年5月11日 | カテゴリー :

Q135 直系尊属から住宅資金の贈与を受けた場合の非課税特例とは(2015.1~2019.6)

【Question】

住宅資金を親からもらった場合の、贈与税の特例について教えてください。
2015年(平成27年)の税制改正で、住宅資金贈与の非課税枠が3,000万円に拡大されたと聞いたのですが、これは本当ですか。

 

【Answer】

『直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』については、2019年(平成31年)6月30日まで適用期限が延長され、非課税枠も拡大されました(2015年1月14日閣議決定)。

「最大で」3,000万円が非課税となりますが、それには次の条件を満たす必要があります。
(1)消費税が10%に増税されること
(2)一定の条件を満たす、良質な住宅用家屋の新築・増改築であること

消費税が8%のままであれば、非課税枠は最大で1,500万円(良質な住宅用家屋の場合)です。

 

【Reference】

 

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例とは

居住用家屋を新築・取得したり、居住用家屋の増改築をした場合に、その資金を父母や祖父母などの直系尊属からもらった(贈与された)場合には、一定金額について贈与税が非課税となる特例があります。

この制度は、若手世代へ早期に資産を移転する目的のほか、省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性を備えた良質な住宅を供給するという目的があります。そのため、いわゆる高性能住宅については非課税限度額が大きくなっています。

非課税という大きな効果があるいっぽう、この特例を受けるには結構細かい要件がありますので注意が必要です。

また、本特例を受けてもらいうけた住宅取得等資金は、贈与者に相続が発生した場合には特別受益の持戻しの対象になるほか、遺留分減殺請求の算定基礎に含まれるケースが多いと考えられますので、将来の相続争いの原因とならないよう、他の相続人とのバランスに配慮しておくべきでしょう。

 

非課税限度額

直系尊属からの住宅資金贈与非課税特例1直系尊属からの住宅資金贈与非課税特例2

※受贈者(もらった人)1人あたりに適用される額です。複数の人(たとえば父と母の両方)からもらった場合には合計し、合計額が上記の表の額まで非課税です。

 

直系尊属からの住宅資金贈与の非課税特例3

 

適用要件

直系尊属からの住宅取得非課税適用要件

受贈者(もらう人)の要件

(1) まず、次のイ・ロ・ハのどれかに該当する必要があります。

イ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有すること。
ロ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの、日本国籍を有し、かつ、受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること。
ハ 贈与を受けた時に、日本国内に住所も日本国籍も有しないが、贈与者が日本国内に住所を有していること。

(2) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること。
直系卑属とは子や孫などのことですが、子や孫などの配偶者は含まれません。養子縁組していれば含まれます。

(3) 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。

(4) 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。

 

住宅取得等資金の要件

住宅取得等資金とは、受贈者(もらった人)が自己の居住の用に供する家屋新築取得したり、自己の居住の用に供している家屋の増改築等の対価に充てるための金銭をいいます。
これらの「居住用家屋の新築・取得又はその増改築」には、次のものも含まれます。

・その家屋の新築若しくは取得又は増改築等とともにするその家屋の敷地の用に供される土地や借地権などの取得(建売やマンションの敷地のことです)

・住宅用の家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日までに行われたものに限ります。)に先行してするその敷地の用に供される土地や借地権などの取得(敷地を先行取得した場合です。)

注意!
受贈者は建物を取得すること、つまり『家屋』に受贈者の持分があることが条件となります。たとえば、妻の父から資金贈与を受けて妻名義で土地を取得し、夫がローンを組んで注文住宅を建てた場合には、建物に妻の持分がないので本特例を受けることができません。この場合には夫の住宅ローンを減らして妻の自己資金の一部を建物の請負代金に充当すれば、妻の持分を建物に入れることができます。

ただし、もらった人の一定の親族など、受贈者と特別の関係がある人との請負契約等によって新築や増改築等をする場合や、このような人から取得する場合には、この特例の適用を受けることはできません。受贈者の一定の親族など受贈者と特別の関係がある人とは、次のような人をいいます。

(1) 受贈者の配偶者及び直系血族
(2) 受贈者の親族((1)以外の人)で受贈者と生計を一にしている人
(3) 受贈者と内縁関係にある者及びその者の親族でその者と生計を一にしている人
(4) (1)から(3)に掲げる者以外の者人で受贈者から受ける金銭等によって生計を維持している人、およびその人の親族でその人と生計を一にしている人

 

居住用家屋の新築・取得、および増改築の要件

(1)  居住用の家屋の要件
居住用の家屋とは、次のイ・ロ・ハのすべての要件を満たす日本国内にある家屋をいいます。
(なお、居住用の家屋が2つ以上ある場合には、受贈者が主として居住用としている1つの家屋だけです。)

イ 家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下であること。

ロ 購入する家屋が中古の場合は、家屋の構造によって次のような制限があります。(a) 耐火建築物である家屋の場合は、その家屋の取得の日以前25年以内に建築されたものであること。
(b) 耐火建築物以外の家屋の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内に建築されたものであること。ただし、地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、一定の「耐震基準適合証明書」、「住宅性能評価書の写し」又は既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類により証明されたものについては、建築年数の制限はありません。

ハ 床面積の2分の1以上に相当する部分が居住専用であること。

(2)  増改築等の要件
特例の対象となる増改築等とは、受贈者が日本国内に所有し、かつ、自己の居住の用に供している家屋について行われる増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替その他の工事のうち一定のもので次のイ・ロ・ハのすべての要件を満たすものをいいます。

イ 増改築等の工事に要した費用が100万円以上であること。なお居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上でなければなりません。

ロ 増改築等後の家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が居住専用に供されること。

ハ 増改築等後の家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下であること。

 

 

居住要件

新築、取得又は増改築等のどの場合であっても、住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日までに、資金受贈者(もらった人)が住宅用家屋等を居住していることか、または、住宅用家屋等に居住することが確実であると見込まれることが要件となります。
ただし、転勤のようなやむをえない事情がある場合には、家族などの同一生計者がその住宅に居住していれば大丈夫です。

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2015年2月5日 | カテゴリー :

Q134 母が遺言を書いてくれないのですが (死因贈与契約)

【Question】

私と同居している母は今年で90歳になります。
自宅の敷地は母が所有しており、建物は私が所有しています。
私は長男で、妹が2人います。

相続でもめたくないので、母に遺言書を書いてほしいと頼んでいるのですが、
「縁起でもない。今は元気なので必要ない」
「公証人なんて会いたくない」
などと言い、どうしても聞き入れてくれません。

せめて自宅の敷地だけは、私に名義が書き換わるようにしておきたいのですが、なにか方法はありますか?

 

【Answer】

どうしても公正証書遺言を書いてもらえないのならば、次善の策として『死因贈与契約』を利用する方法があります。

死因贈与契約は、公証人が作成する公正証書にしておくのが望ましいです。
しかし、ご高齢の方の中には、知らない人と話したり、面倒な手続きをしたりすることを避けたがる方も少なくありません。

このような場合、一般の私製契約書(私署証書)で死因贈与契約を締結する方法が考えられます。

ただし、不動産の死因贈与契約を私製契約書によって行う場合、下記のような点に注意が必要です。
(1)死因贈与契約執行者を決めておく。
(2)死因贈与契約書にはお母様に実印を押印してもらい、お母様の印鑑証明書・登記済権利証(登記識別情報)とともに大切に保管しておく。

この(1)(2)両方をきちんとやっておけば、万一の際でも、他の相続人である妹さんの関与を最小限にすることができます。

ただし死因贈与契約は、不動産登記手続きの際の登録免許税が遺言を利用したケースより高く・不動産取得税がかかるなど、コスト的には不利になります。また、登記簿上の地目が農地(田・畑)である土地を死因贈与する場合、登記手続きに際して農業委員会の届出・許可を必要とします。

なお、遺言と同様、遺留分等に対する配慮は避けることができません。

 

 

【Reference】

 

遺言を書いてもらえなくても死因贈与なら…

最近は遺言の効用が少しずつ認知されてきましたが、まだまだ『遺言を書く』という行為に抵抗を持つ方が大半です。
一般的には、『遺言』は人生の最後に作るもの、というイメージが強いのだと思います。

そのような場合に、『死因贈与契約』という方法なら、意外と抵抗なく受け入れてもらえるケースがあります。
『死因贈与契約』は、贈与者の存命中に「私が死んだらこの財産をあげる」という約束だけをしておき、贈与者が死亡してはじめて効力が生じる贈与契約のことを言います。

遺贈と死因贈与の違い等については、Q119もごらんください。

 

死因贈与契約を利用する場合の注意点

不動産についての死因贈与契約においては、次の点にご注意ください。

(1)できるだけ公正証書で行う。公正証書によらない場合は下記を参照。
(2)死因贈与契約執行者を定めておく(他の相続人の協力が不要になるので)。
(3)遺言による場合と異なり、受贈者が贈与者の相続人であっても不動産取得税がかかる
(4)登記の際の登録免許税が高い(税率は固定資産税評価額の2%)。
(5)登記簿上の地目が農地の場合、農業委員会の許可・届出を要する。

 

私製契約書(私署証書)で不動産の死因贈与契約を締結する場合のポイント

私製契約書(私署証書)で不動産の死因贈与契約を締結し、その中で死因贈与契約執行者が指定されている場合、その不動産登記手続きは、もらった人(受贈者)と執行者の共同申請で行います(登記研究322・73、447・83)。

この場合、契約の当事者である贈与者はすでに死亡しています。そこで、契約が真正なものであることを証しだてるために、贈与者の相続人全員の印鑑証明書付き承諾書を添付する扱いになっています(!!)。
しかし、もう一つ方法があり、死因贈与契約書に贈与者が押印した印鑑につき贈与者の印鑑証明書を添付すれば、相続人側の印鑑証明書付き承諾書は不要になります。この印鑑証明書は、もちろん3ヶ月以内という制限はありません(登研566・131、566・132)。

死亡届が提出されると故人の印鑑証明書は取得できなくなりますから、契約時に印鑑証明書を用意してもらい、死因贈与契約書・登記済権利証(登記識別情報)の3点セットで大切に保管しておくことが、重要なポイントです。

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年12月11日 | カテゴリー :

Q133 配偶者に住み慣れた家を贈与するには

【Question】

妻から、長年住み慣れたこの家にこれからも住み続けたいので、自分の名義にしてもらえないかと相談されました。

私には、別れた元妻との間に子がいます。
そのため、妻が相続でもめるのは嫌だという気持ちは、よくわかります。

妻の願いをかなえるには、どのような手続きをすればいいのでしょうか。

 

【Answer】

すぐに名義を変えたいならば、配偶者にご自宅を生前贈与し、その登記手続きを行うのが基本です。

生前贈与は非常に税率の高い贈与税がかかるのですが、配偶者との婚姻期間が20年以上(内縁期間は除く)あるならば、居住用不動産を配偶者に贈与しても、相続税評価額(土地ならば路線価等)で2,000万円まで控除することができ、その年の基礎控除額110万円とあわせて2,110万円相当まで、贈与税がかからずに贈与することができます。これを贈与税の配偶者控除といいます。

ただし、不動産取得税・登録免許税はかかります。

2,110万円を超える自宅を生前贈与する場合は、超えた額に対してだけ贈与税がかかります。たとえば2,500万円の自宅を贈与する場合、2,500万円-2,110万円=390万円が課税対象となり、これに対する贈与税は53万円です(390万円×税率20%-速算表の控除額25万円。計算方法はQ116)。
自宅全部を生前贈与するのではなく、一部を贈与することもできますから、2,500万円のうち2,110万円相当だけを非課税で生前贈与して、夫婦共有にする方法もあります。

贈与税の配偶者控除を利用するには、贈与を受けた人が翌年2月1日~3月15日までに贈与税の申告をしなければなりません。たとえ贈与税が非課税になる場合でも、必ず申告する必要があります

また、本特例は同じ配偶者との間では1回限りで、贈与した家が2,000万円未満でも、あまった枠を翌年以降に繰り越すことはできません。

婚姻期間が20年未満の場合は、すぐに名義を移すと多額の贈与税がかかります。次善の策として、公正証書遺言等を検討しましょう。

なお、将来の相続争いが予想される場合、「特別受益」や「遺留分」に対する配慮も欠かせません(Q125)。

 

 

【Reference】

 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

たとえ相手が配偶者であっても、贈与税の基礎控除額(年間110万円)を超える生前贈与をすると、通常は贈与税がかかります。

しかし、居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭を、配偶者に生前贈与した場合には、一定の条件下で最高2,000万円(贈与された居住用不動産等の価格が上限)までを控除することができます。これが贈与税の配偶者控除です。基礎控除額110万円とあわせて2,110万円相当までは、贈与税がかかることなく配偶者に贈与できます。

夫から妻でも、妻から夫でも、どちらでも適用を受けることができます。
この特例を利用できるのは、同一配偶者からは1回限りです。

「相続税の配偶者控除」とは関係がありません。混同しないようにしてください。

 

【適用要件】
(1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
(戸籍上の婚姻期間を指します。内縁の期間は含みません)

(2) 配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であること、または居住用不動産を取得するための金銭であること

(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

(4) 同じ配偶者からの贈与について、過去にこの特例の適用を受けていないこと(注)

(5) 一定の書類を添付の上、贈与税の申告をすること

(注) 同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。

 

【注意点】

(1)3年以内に亡くなっても、相続税の対象にならない

生前贈与の後、3年以内に贈与者が亡くなった場合には、通常は贈与財産の価額が相続財産に加算され、贈与税ではなく相続税の対象になります(Q052)。
しかし、この特例を利用した贈与については、その後3年以内に贈与者が亡くなっても、相続財産に加算されません

つまり、相続税評価で2,000万円以下ならば、贈与税も相続税も課税されずに移転できます

 

(2)コストがかかる

たしかに相続税評価額で2,000万円まで贈与税はかからないのですが、次の税金はかかります。

不動産取得税(地方税。納付書で納める)
・登録免許税(登記の際にかかる)

既に所有している居住用不動産を贈与するような場合には、不動産取得税も登録免許税も特例がないため、結構な額の税金を納めること(数十万円になることもある)になります。

なお、既存不動産を贈与するのではなく、資金を贈与して新築住宅を購入すれば(夫婦共有でも良い)、これらの税金についても特例があるほか、マイホーム購入に認められている各種の税制特例も活用することができます。

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年12月5日 | カテゴリー :

Q132 遺産としての土地はどうやって評価するのか

【Question】

母の遺産を、姉と私の2人で分割します。
相続人は私たち2人しかおらず、相続税もかからないので、なるべく等しくなるように分けようと話しています。
ただ、遺産の中に土地があります。土地の価格はどうやって求めればいいのでしょうか。

 

【Answer】

土地の価格については、実勢価格、公示価格、相続税評価額(路線価方式・倍率方式)、固定資産税評価額等、いろいろあります。

お二人で話し合いができるのであれば、これらの価格のうちどれかを使ってもかまいません。
また、これらを参考にして、お二人で話し合って決めていただいても結構です。

 

【Reference】

「遺産相続イコール路線価」という誤解

上のAnswerを見て、意外に思われたかもしれません。
「遺産相続イコール路線価」と誤解されている方が、大勢いらっしゃるので…

路線価が利用されるのは、相続”税”に関して、申告が必要かどうかの判定や税額の算出を行うために過ぎません。本来、遺産は”時価”で評価するのです。「いつの時点の時価なのか」いう点に違いはあっても、時価であるという点に争いはありません。

実は、相続”税”の法律でも、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により…」と規定されており(相続税法22条)、時価で評価することが明記されています。路線価を使いなさい、とは書かれていません。

そもそも路線価方式・倍率方式は、税務署の職員が仕事をしやすくなるように作られたものです。誰かが亡くなって相続が起きるたびに遺産の時価を調べていては、税務署の職員は大変です。基準がなければ、時価がいくらかをめぐって税務署と納税者との間でトラブルが続発するでしょう。そこで、税務署の職員がいろいろな財産を簡単かつ画一的に評価できるように、中央官庁(国税庁)が出したのが『財産評価基本通達』です。これは税務署の職員向けのマニュアルみたいなもので、その中で土地評価の指針として、路線価方式・倍率方式が示されているのです。

相続税申告で路線価方式等が使われることが多いのは、税務署が土地評価の指針として使っている以上、納税者にとって無難だからです。また、路線価方式で求めた価格は実際の取引価格を下回っていることが多く、相続税の納税者にとって有利だったという側面もあります(右肩上がりに地価が上昇していた時代は、特にそうでした)。

相続税の申告は、相続人による自己申告であり、相続人みずからが遺産を時価評価するのが『本来の』姿です。相続人が土地を時価評価した結果、それが路線価方式による評価額よりも低くても、税務署に対して合理的に説明できるかぎり、その時価で堂々と相続税申告をしてかまわないわけです。

あくまでも、遺産は時価で評価するのです。

 

時価は結局『合意』で決まる

故人が遺した財産の中に、土地のような「いくらであるかがはっきりしない財産」が含まれていたとしても、遺産総額が相続税の基礎控除額を大幅に下回ることが確実であり、かつ、ある一人の相続人がすべての遺産を承継するような場合には、面倒な財産評価を行う実益は、ほとんどありません。

しかし、上記Questionのように、二人以上の相続人が遺産をあるていど公平にわけようとするケースでは、相続税の申告があるとないとにかかわらず、「いくらであるかがはっきりしない財産」を、何らかの形で時価評価する必要がでてきます。
それでは、どのように時価を求めるのでしょうか?

土地について言えば、不動産業者に査定してもらう、ということがまず頭に浮かびます。『時価』というコトバからすれば、不動産市場の取引価格がもっともイメージに近いからです(実際、このように実勢価格を基準として、公示価格等を参考にしながら時価を算定するのが本来の姿です)。

しかし、この方法にはいくつか問題があります。
まず、実際に売りに出さないことには、査定額が適切なのかどうか検証できません。査定額が2,000万円であっても、実際には1,500万円でしか売れないかもしれません。
また、売却の予定がないならば、査定額で評価することが適切なのか、という点も問題です。
加えて、そもそも売却の意思もないならば、不動産業者に査定を依頼しずらいという難点もあります。不動産業者は売買を成立させて手数料を得るのですから、売る気もない客など、内心は迷惑に思われているかもしれません。

裁判によらず話し合いによって遺産分割を成立させようとするならば、相続人全員が合意した価格をもって『時価』と考えるしかありません。土地の場合、査定額でも路線価でも固定資産税評価額でも、合意さえ整えばそれで行くほかなく、合意できなければ裁判手続きしか道はないのです。。

では、「不動産鑑定士」という専門家に鑑定料を支払って、鑑定評価額を出してもらったらどうでしょうか。
不動産鑑定士は国家資格者ですから、その鑑定評価は税務署も裁判所も尊重します。
しかし、遺産分割協議の段階では、相続人の一人が「その鑑定評価額は安すぎる」と言い出せば、やはり話し合いはまとまりません。
この場合でも、結局は相続人全員が鑑定評価額を採用することに『合意』しなければ、土地の価格は決まらない、と言う点では同じなのです(もっとも、鑑定評価額に論理的な反論をするのは難しいと思いますが)。

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

Q131 相続時精算課税の住宅取得等資金特例とは(改正版 2015.1~2019.6)

【Question】

2014年の11月に、一人息子が住宅を購入します。
住宅取得資金ならば、2014年は500万円まで無税で贈与できる(一般住宅の場合)と聞いています。

もう少し贈与金額を多くしたいのですが、増やすと贈与税は避けれられませんか?

 

【Answer】

「2014年に500万円まで贈与税が無税」というのは、『直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例』のことだと思います。

非課税限度額を超えた場合には、暦年課税制度との併用が可能なので、500万円+110万円=610万円まで非課税です。

また、相続時精算課税制度と併用することもできるので、この場合には最大で500万円+2500万円=3000万円までは、贈与税がかからずに贈与できます(2500万円については相続税で精算)。贈与者の年齢制限もありません。

 

【Reference】

(「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例」は、2014年まで段階的に縮小され、終了する予定でした。しかし、経済界の後押しを受けた国土交通省からの強い要望もあって、2019年6月30日までの期間延長のほか、非課税限度額の大幅拡大、適用対象の見直しなどがすでに固まっています(平成27年税制改正大綱、2015年1月14日閣議決定)。
この「非課税特例」については、後日、詳細をお知らせいたします。)

 

ここでは「非課税特例」と併用が可能なもうひとつの特例、『相続時精算課税制度の住宅取得等資金の特例』に触れます。

贈与者に年齢制限がない

相続時精算課税制度には、贈与者(あげる人)に年齢制限がある通常のものと、年齢制限がない『住宅取得資金等の特例』との2つがあります。

通常、相続時精算課税制度を利用するには、贈与者たる親は贈与した年の1月1日現在で65歳以上(2015年からは60歳以上)であることが必要です。

しかし、子が住宅を建てるような場合に親から資金贈与を受けるならば、あげる親の側は何歳でもかまわないという特例が設けられています。2019年6月30日までの期限延長が、ほぼ固まっています(平成27年税制改正大綱、2015年1月14日閣議決定)。
相続時精算課税制度の適用要件

なお、建物のほうにも床面積などの要件があります。詳しくは税務署にご確認ください。
(上記の税制改正大綱で、適用対象となる増改築等の範囲に「一定の省エネ改修工事、バリアフリー改修工事」「給排水管又は雨水の浸入を防止する部分に係る工事」が加わりました。)

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2015年1月23日 | カテゴリー :

Q130 相続登記の申請が2件以上になる場合とは

【Question】

(1)父の遺産として、A市とB市に単独所有の土地があり、どちらも私の名義にするために相続登記(名義変更)をします。A市の物件とB市の物件は、1回でまとめて登記申請できますか。

(2)C市にも父名義の土地建物があり、土地は父の単独所有で、建物は父母で共有になっていました。こちらは妹の名義にします。この土地建物は、1回でまとめて相続登記できますか。

 

【Answer】

(1)市区町村が違う場合でも、法務局(登記所)の管轄が同じであれば、一括して相続登記を申請できる可能性があります。管轄が違えばできません。

(2)法律の条文からすれば、一括して相続登記することはできませんが、一括して相続登記できるという有力な見解もあります。ただし、この見解は法務省による公式な登記先例ではなく、すべての法務局で通用するわけではありません。

 

【Reference】

2個以上の不動産について登記申請する場合、次のすべてが同一ならば、1回でまとめて申請することが認められています(不動産登記令4条)。これを一括申請といいます。

1)管轄登記所
2)登記の目的
3)登記原因およびその日付
4)当事者(申請人)・・・条文には明記されないが、当然とされる

これらがすべて同一ならば、物件が50個でも100個でも、一括申請できます。

登記申請の件数は、司法書士に支払う報酬に影響します。
当事務所では、できるだけ申請件数が少なくなるように配慮しています。

(なお、法律の世界では「土地」と「建物」は別の物と考え、原則として登記簿も別々になっています(敷地権付きマンションは例外)。そこで、単純に『家』の名義変更をするというケースでも、建物とその敷地の両方とも名義変更をするならば、一括申請できるかどうか検討する余地があるのです。)

 

事例1 市区町村が異なる場合

一括申請1

このように市区町村が異なる不動産については、他の条件をクリアしていたとしても、原則として一括して相続登記はできません。申請する先の法務局(登記所)が違うからです。
ただし、申請する登記所が同一ならば、一括してできます。法務局の統合が進んでいるので、ホームページで登記所の管轄を確認してみましょう。

 

事例2 申請人が異なる場合

一括申請2

この場合、建物については妻Yさん、敷地については子Zさんが申請人となって相続登記を行います。当事者(申請人)が異なる場合には一括申請できませんので、申請は2件になります。
建物を妻Yさんの単独所有、敷地を妻Yさんと子Zさんの共有にする場合も同じです。

 

事例3 共有持分の相続が混在する場合

一括申請3一括申請4

このように、申請人が同じでも、単独名義の物件と同時に『共有持分』を相続するというケースが少なくありません。
この場合は、不動産登記の申請のときに、『登記の目的』を「所有権移転」と「共有者X持分全部移転」とに分けます。すると、『登記の目的』が異なる場合は一括申請できませんから、申請が2件に分かれることになります。

ただし、専門家向けの雑誌の中で「一括申請できる」という見解が出されたことがあり、実際にこれが通用したケースもあります。しかし、この見解は公式な登記通達(先例)として出されたものではなく、すべての登記所で通用するものではありません。

このようなケースでは、法解釈の基本原則に戻って、条文の文理解釈により「一括申請できない」いうのが原則です(登記官と折衝する余地はありますが)。

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂
厂               無断転載禁止

2014年10月22日 | カテゴリー :