【Question】
母の遺産を、姉と私の2人で分割します。
相続人は私たち2人しかおらず、相続税もかからないので、なるべく等しくなるように分けようと話しています。
ただ、遺産の中に土地があります。土地の価格はどうやって求めればいいのでしょうか。
【Answer】
土地の価格については、実勢価格、公示価格、相続税評価額(路線価方式・倍率方式)、固定資産税評価額等、いろいろあります。
お二人で話し合いができるのであれば、これらの価格のうちどれかを使ってもかまいません。
また、これらを参考にして、お二人で話し合って決めていただいても結構です。
【Reference】
「遺産相続イコール路線価」という誤解
上のAnswerを見て、意外に思われたかもしれません。
「遺産相続イコール路線価」と誤解されている方が、大勢いらっしゃるので…
路線価が利用されるのは、相続”税”に関して、申告が必要かどうかの判定や税額の算出を行うために過ぎません。本来、遺産は”時価”で評価するのです。「いつの時点の時価なのか」いう点に違いはあっても、時価であるという点に争いはありません。
実は、相続”税”の法律でも、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により…」と規定されており(相続税法22条)、時価で評価することが明記されています。路線価を使いなさい、とは書かれていません。
そもそも路線価方式・倍率方式は、税務署の職員が仕事をしやすくなるように作られたものです。誰かが亡くなって相続が起きるたびに遺産の時価を調べていては、税務署の職員は大変です。基準がなければ、時価がいくらかをめぐって税務署と納税者との間でトラブルが続発するでしょう。そこで、税務署の職員がいろいろな財産を簡単かつ画一的に評価できるように、中央官庁(国税庁)が出したのが『財産評価基本通達』です。これは税務署の職員向けのマニュアルみたいなもので、その中で土地評価の指針として、路線価方式・倍率方式が示されているのです。
相続税申告で路線価方式等が使われることが多いのは、税務署が土地評価の指針として使っている以上、納税者にとって無難だからです。また、路線価方式で求めた価格は実際の取引価格を下回っていることが多く、相続税の納税者にとって有利だったという側面もあります(右肩上がりに地価が上昇していた時代は、特にそうでした)。
相続税の申告は、相続人による自己申告であり、相続人みずからが遺産を時価評価するのが『本来の』姿です。相続人が土地を時価評価した結果、それが路線価方式による評価額よりも低くても、税務署に対して合理的に説明できるかぎり、その時価で堂々と相続税申告をしてかまわないわけです。
あくまでも、遺産は時価で評価するのです。
時価は結局『合意』で決まる
故人が遺した財産の中に、土地のような「いくらであるかがはっきりしない財産」が含まれていたとしても、遺産総額が相続税の基礎控除額を大幅に下回ることが確実であり、かつ、ある一人の相続人がすべての遺産を承継するような場合には、面倒な財産評価を行う実益は、ほとんどありません。
しかし、上記Questionのように、二人以上の相続人が遺産をあるていど公平にわけようとするケースでは、相続税の申告があるとないとにかかわらず、「いくらであるかがはっきりしない財産」を、何らかの形で時価評価する必要がでてきます。
それでは、どのように時価を求めるのでしょうか?
土地について言えば、不動産業者に査定してもらう、ということがまず頭に浮かびます。『時価』というコトバからすれば、不動産市場の取引価格がもっともイメージに近いからです(実際、このように実勢価格を基準として、公示価格等を参考にしながら時価を算定するのが本来の姿です)。
しかし、この方法にはいくつか問題があります。
まず、実際に売りに出さないことには、査定額が適切なのかどうか検証できません。査定額が2,000万円であっても、実際には1,500万円でしか売れないかもしれません。
また、売却の予定がないならば、査定額で評価することが適切なのか、という点も問題です。
加えて、そもそも売却の意思もないならば、不動産業者に査定を依頼しずらいという難点もあります。不動産業者は売買を成立させて手数料を得るのですから、売る気もない客など、内心は迷惑に思われているかもしれません。
裁判によらず話し合いによって遺産分割を成立させようとするならば、相続人全員が合意した価格をもって『時価』と考えるしかありません。土地の場合、査定額でも路線価でも固定資産税評価額でも、合意さえ整えばそれで行くほかなく、合意できなければ裁判手続きしか道はないのです。。
では、「不動産鑑定士」という専門家に鑑定料を支払って、鑑定評価額を出してもらったらどうでしょうか。
不動産鑑定士は国家資格者ですから、その鑑定評価は税務署も裁判所も尊重します。
しかし、遺産分割協議の段階では、相続人の一人が「その鑑定評価額は安すぎる」と言い出せば、やはり話し合いはまとまりません。
この場合でも、結局は相続人全員が鑑定評価額を採用することに『合意』しなければ、土地の価格は決まらない、と言う点では同じなのです(もっとも、鑑定評価額に論理的な反論をするのは難しいと思いますが)。
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