Q122 小さい孫に贈与するには?

【Question】

孫が一人だけおり、今年8歳になります。
この孫の将来のために、ある程度まとまった額の財産を今のうちに渡しておきたいと、以前から考えていました。

教育資金に関しては期限付きで非課税制度ができたようですが、相続時精算課税制度の対象が平成27年から孫にも拡大されると聞いて、この制度の利用も考えています。

そこで質問ですが、
(1)小さい孫に財産を贈与する場合、誰と契約をすればいいのでしょうか。
(2)孫の親である私の息子は浪費家なので、孫に贈与した財産を管理させたくありません。どうすれば良いですか。

 

【Answer】

お孫さんが現在、『未成年者』であることを前提に、お答えします。

(1)について

贈与は『契約』である以上、受贈者(もらう人)の承諾を要します。しかし。受贈者が8歳では内容を理解できませんから、契約を締結することができず、財産管理義務(民法824、827条)を負う親権者との間で、契約を締結する必要があります。

なお、親権者が父母である場合、親権は父母が共同で行使するのが原則であり、父母の双方が未成年者を代理して契約します。

 

(2)について

第三者が無償で未成年の子に財産を与える場合その財産について、親権者である父または母の財産管理を禁止できます。この場合、財産管理者を指定することが可能です。

 

 

【Reference】

未成年者を当事者とする契約は、親権者が代理する

贈与に限ったことではありませんが、未成年者が契約の当事者になる場合、財産管理者であり法定代理権を有する親権者が代わりに行います(民法824条)。

なお、親権者については、民法818条に規定されています。

【参考 民法818条 赤字は筆者】

  1. 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
  2. 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
  3. 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

 

第三者が未成年者に与えた財産は、両親による管理を禁止できる

第三者が無償で未成年者の子に財産を与える場合、親権を行う父または母にその贈与財産の管理をさせないという意思を表示すれば、贈与財産について、親権者による財産管理自体を禁止することができます(民法830条)。

この場合、信頼できる人を代わりの財産管理者に指定することができます。弁護士や司法書士でもかまいません。また、父母のうち父だけ財産の管理を禁止し、母だけを単独の管理者に指定することも可能です(それで実効性があればですが)。

管理者の指定は贈与契約の際にしても、後からしてもかまいません。管理者を指定しなければ、家庭裁判所に選任してもらいます。

なお財産管理者に贈与者自身を指定することもできます。なんだか「代打、俺」を思い出しますが(なつかしい)、これはやめておいたほうが無難です。
なぜかと言うと、生前贈与の場合、財産の管理権を贈与者から切り離し、これを受贈者に完全にゆだねてしまわないと、税務上では贈与の成立を否認されてしまい、相続税対策としては失敗するおそれがあるからです(Q121)。相続時精算課税制度を利用せずに通常の暦年課税制度で行く場合には、これは絶対に避けるべきです。

 

【補足】

もしも「孫へ贈与した事実は息子に知られたくない」「息子が契約に同意しない」というのであれば、次善の策として、遺言を書いてお孫さんに遺贈(特定遺贈)することになるでしょう。遺贈ならば『契約』ではなく『単独行為』なので、親権者の承諾は不要だからです。

この場合の遺言書は、遺言執行者を指定した公正証書とし、信頼できる人に遺言公正証書謄本を預けておくとよいでしょう。

さらに、上記の民法830条の規定は遺贈の場合にも適用があるので、親権者の財産管理を禁止した上で財産管理者を明示しておけば、遺言の効力発生時(相続開始時)に受贈者が成年に達していなくても安全確実です。

 

【参考 民法830条】

  1. 無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。
  2. 前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。
  3. 第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。
  4. 第27条から第29条までの規定は、前二項の場合について準用する。

 

 

(注)本ページで取り上げた民法の規定は、受贈者・受遺者が『未成年者』である場合のみ適用があります。

 

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2014年9月6日 | カテゴリー :