【Question】
今月、私は喜寿を迎えました。この機に、遺言書を書きたいと思います。
まずは自筆で書こうと思いますが、どのような点に気を付ければいいでしょうか。
【Answer】
遺言者が内容の「全文」と「日付」・「氏名」を自筆で書き、印を押して作成するタイプの遺言書のことを、自筆証書遺言といいます。
遺言の形式は民法で定められており、形式違反があると無効になってしまいます。
また、内容が不明瞭・あいまいだと、書かれている内容をどのように解釈するかで争いが生じたり、登記所や銀行で手続きができず役に立たなかったりすることが大変に多いです。
自筆証書遺言は、保管方法が難しい・家庭裁判所の検認が必要など、多くの欠点があります(詳しくは、Q092 遺言を書くにはどうすればいいの? )。
なるべくなら、公正証書遺言をお作りいただきたいと思います。
どうしても自筆で、ということでしたら、以下の点にご注意ください。
【Reference】
(1)ご夫婦で作る場合、それぞれ別に作る必要があります。夫婦共同の遺言は無効です。
(2)「全文」・「日付」・「氏名」を、必ず自筆で書いてください。
そしてなるべく、氏名に「住所」も併記してください。
次のようなものは無効で、法律上は何の効力もありません。
・代筆による遺言
・パソコンで作って印刷した遺言
・ビデオや録音による遺言
(3)日付は、和暦でも西暦でもかまいませんが、作成日をカレンダーで特定できる必要があります。
「吉日」というふうに書いてしまうと、作成日を特定できないので無効になります。
(4)氏名の後に必ず印鑑を押してください。印鑑は三文判で大丈夫ですが、シャチハタは消えるので不可です。
(5)訂正する場合にも決まりがあります。間違えた場合には、書きなおしたほうが無難です。
訂正方法は、別の記事で説明します。
(6)必ずしも封筒に入れる必要はありませんが、改ざん・変造を防ぐため、封筒に入れて封印したほうが望ましいです。
封印の仕方は、別の記事で説明します(Q099 遺言書の封印と保管はどうするか)。
(7)「財産を残したい相手」が親族であるならば、「妻○○」「長女××」のように記載すれば、自筆証書遺言では十分です。
親族でないならば、少なくとも相手の方の氏名・住所・生年月日を記載しておかないと、相手が特定できないおそれがあります。
(8)財産を残したい相手が先に亡くなってしまったときに、誰に残すかを書いておくほうが望ましいです(予備的遺言)。
(9)財産を残すときは、なるべく財産を特定すべきです。
「3分の2は妻に、3分の1は長男に相続させる」という内容でも無効ではありません。しかしこれでは、個々の財産を実際にどう分けるか、残された側が話し合わなければならないので、遺言のメリットが活かされません。
なお、特定の仕方ですが、不動産については登記簿の記載どおり、金融機関については少なくとも銀行名・支店名で記載するとのがセオリーです。
(10)遺言に含まれていない財産についてはどうするか、記載しておくべきです。
(11)遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。
(12)財産を配分した理由や経緯なども書いておくと紛争防止になります。
以上が、自筆証書遺言を作成する場合に注意すべき点です。自筆ではこれくらいが限界だと思います。
なお、財産が増えたり変わったりした場合には、すみやかに書きなおしをするようにしてください。
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