Q099 遺言書の封印と保管はどうするか

【Question】

自筆で遺言書を書きました。

書きあげた遺言書は、封筒に入れておくのが一般的なのでしょうか。

また、保管場所は、どこにすればいいでしょうか。

 

【Answer】

遺言書は、封筒に入れなくても有効です。無効ではありません。
しかし、自筆証書遺言の場合には、封筒に入れて封印することをおすすめします。
変造や改ざんを防止するためです。
方法は下記をごらんください。

遺言書は、(特に自筆証書遺言の場合には)保管場所をどうするか、頭を悩ませるところです。

誰にもわからない場所では、見つけてもらえないので意味がなくなってしまいますし、反対に誰にでもわかる場所では、何者かに破棄されたり変造されたりするおそれがあります。

遺言書の保管方法としては、

「自宅の金庫に保管しておき、信頼できる人に保管場所を伝えておく」

か、または

「信頼のおける第三者に遺言書自体を預け、保管を依頼する」

などの方法が考えられます。
信頼のおける弁護士・司法書士などに預けておくと、守秘義務もあるのでさらに安心です。

なお、遺言書は、銀行の貸金庫に保管してはいけません(重要)

あなたに万一のことがあると、銀行はあなたの預金口座を凍結し、貸金庫もひらけないようにしてしまいます。
いつでも貸金庫を開けられるよう、家族等に代理人カード・代理人鍵が発行されている場合でも、契約者が死亡した場合は開けなくなります。

このようにして 閉鎖された貸金庫を開いて遺言書を取りだすには、相続人全員の同意が必要になってしまい、大変面倒なことになります。

しかも、面倒な手続きをしてようやく貸金庫を開いて遺言書を見つけたとしても、それが自筆証書遺言ならば、さらに家庭裁判所の検認を受けなければなりません。これはもう悲劇です。

自筆証書でも公正証書でも、遺言は、銀行の貸金庫には入れないでください。

 

 

【Reference】

 

遺言書の封印

遺言書を封筒に入れるか入れないかは、遺言者の自由です。

しかし、遺言書が自筆証書遺言である場合には、他の人が手を加えて改ざんするおそれがあります。そのため、できるだけ封筒に入れて、下記のように封印しておくと良いです。
遺言書の封印表側遺言書の封印裏側

なお、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、開封することができません(民法1004条第3項)。
もしも家庭裁判所ではないところで開封してしまったら、遺言が無効になるわけではありませんが、5万円以下の過料という罰則があります(民法1005条)。
そのため、相続人が遺言書を開封してしまわないように、上図のような注意書きを入れておくと良いでしょう。

 

遺言書の保管

公正証書遺言ならば、公証役場から受け取った遺言書の「正本」「謄本」を紛失しても、再発行してもらうことが可能です。公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているからです。
改ざんされるおそれもないので、公正証書遺言を作ったことだけを相続人に伝えておけば、それほど保管場所に神経を使わなくても大丈夫です。
(遺言者が存命中は、公証役場が推定相続人に遺言の内容を開示することはありません。公正証書遺言を書いたことを相続人に伝えても、内容が漏れることはありませんのでご安心ください。)

いっぽう、自筆証書遺言の場合には、次のような点から、保管場所は大きな問題です。
(1)原本は1通しかないので、紛失・棄損すると取り返しがつかない。
(2)誰も見つけることができなければ、遺言の意味がない。
(3)誰にでもわかるようなところに保管しておくと、何者かが破棄・改ざんする危険性がある

そこで、金庫に保管するか、信頼のおける第三者に預けておいて、保管場所を相続人に教えておくことが多いようです。

 

遺言書を貸金庫に保管してはいけない

ところで、「遺言書を銀行の貸金庫に保管しておく」というのが安心のようにも思われますし、そのようにすすめている書籍も少なくないのですが、遺言書を遺言者ご自身の貸金庫に保管することは避けましょう!

貸金庫の借主が亡くなった場合、相続人全員が借主の地位を承継することになり、貸金庫の中身は相続財産になります。

相続が発生したことを察知すれば、銀行は、預金口座と同様に貸金庫も凍結します

こうなると、相続人の一人だけで貸金庫を開けることは困難です。
理由は、銀行が相続人個別の預金払い戻し請求に応じないのと同じ理由です(Q039)。
中身を見せてくれることがあっても、中身を取り出すことまで認めてくれる可能性は低いとお考えください。

凍結された貸金庫を開けるには、相続人全員で、あるいは相続人全員が特定の代理人を選任して、貸金庫の相続手続きをする必要があります(遺言執行者が指定されていれば、執行者が単独で貸金庫を開けれられます。しかし、遺言執行者を指定した肝心の遺言書が貸金庫の中ですから…)。

家族が貸金庫を開けられるように、代理人カード・代理人鍵が交付されている場合でも、故人が契約していた貸金庫は開けられないことが多いので注意が必要です。
これは、契約者本人が死亡した場合には代理人の権限も消滅するという規定が、民法にあるためです(民法111条)。

自筆証書でも公正証書でも、遺言は、銀行の貸金庫には入れないでください。

 

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2014年6月5日 | カテゴリー :