Q045 遺産分割後に被相続人の子が認知されたらどうなるか?

【Question】

亡父の相続について、子である私たち兄弟による遺産分割協議はすでに終了したのですが、亡父の子であると主張して認知の訴えを提起した人がおり、これが裁判上認められました。認知された子から遺産分割のやり直しを求められたら、これに応じなければならないのでしょうか。

 

【Answer】

遺産分割協議の後に認知された子が現れた場合には、遺産分割協議をやり直す必要はありませんが、認知された子の請求に応じて相続分にあたる額を価額賠償しなければなりません。なお、価額を計算する場合は請求時の時価によります。

 

【Reference】

相続が発生した後に子が認知される場合には、次のようなケースがあります。
(1)遺言で認知された場合
(2)父の生存中から認知の訴えが起こしていて、父の死後に認められた場合
(3)父の死亡後に認知の訴えを起こして、これが認められた場合

認知の効果は子の出生時までさかのぼって発生します(民法784条)から、認知された子は父親の死亡時に相続人であったことになります。

相続人を一人でも欠いた遺産分割協議は無効ですから、子が認知された時点で遺産分割協議が終わってしまっているならば、本来は協議をやり直さなければならないはずです(Q043)。
しかし、認知の訴えは父の死亡後3年以内なら提起することができ、その訴えが確定するまでにはさらに時間がかかることが考えられます。この間に遺産分割協議が成立して遺産を分配し、場合によっては引き継いだ遺産を売却などしなければならないかもしれず、それが認知の確定によってやり直しを迫られるとすれば、非常にやっかいです。

そこで、民法は特例を設けました。
婚姻外で生まれた子が父親の死後に認知された場合には、その子も遺産分割に参加できることはもちろんですが、認知される前に他の共同相続人が遺産分割を済ませていたり、遺産を処分したりしていた場合には、自己の相続分に相当する金額の支払いを他の共同相続人に請求できるだけにとどめたのです(民法910条)。

認知された子が請求できる金額は、請求時の時価によることになります。
また、認知された子も相続人には違いありませんから、相続債務についてはその相続分に応じて負担することになります。

 

なお、被相続人である父に子がいないものとして被相続人の父母や兄弟姉妹が遺産を相続した後に、認知された子が現れた場合には、認知された子が相続人となり被相続人の父母や兄弟姉妹は相続人とはなれなかったはずですから、認知された子は民法884条の『相続回復請求権』を行使できることになり、被相続人の父母や兄弟姉妹は相続した遺産を認知された子に返さなければなりません。この場合には金銭賠償というわけにはいかないのです。

 

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