Q033 遺産分割をする前の、遺産の管理はどうするか

【Question】

遺産の中に賃貸アパートがあるのですが、遺産分割協議をするまでの間、私が代表してアパートを管理するように兄弟たちから頼まれています。新しい入居者との賃貸借契約や退去時の精算、修繕費や火災保険料の負担など、アパートの管理はどのようにすればいいのでしょうか?

 

【Answer】

まず、遺産分割協議がまとまるまでの間は、相続財産(遺産)は共同相続人の共有財産であり、相続人が共同で管理するのが原則です。
しかし、ご相談のように、相続人全員の合意によって、相続人の中から管理人を決めて管理をすることも可能ですし、相続人以外の第三者を遺産の管理人に選んで、管理してもらうことも可能です。

修繕費や火災保険料の負担など、遺産の管理にあたって発生した費用は、遺産の中から支出するのが法律上のタテマエですが、とりあえず遺産の管理を任された人が立て替えて支払い、遺産分割協議のときに清算するケースが多いと思われます。

 

【Reference】

相続人全員で遺産を共同管理する場合

相続人が2人以上いる場合、遺産分割協議が成立する前の段階では、相続人全員が、その法定相続分(遺言による相続分の指定がある場合にはその指定相続分)の割合に応じて、相続財産を共有することになります(Q029)。
この間、共同相続人は、相続財産を自分の固有財産(相続によって取得した財産ではなく、元来自分の持っていた財産)と同じような注意をもって管理しなければなりません(民法918条1項)。相続放棄や限定承認をする場合でも同様です。

このように、遺産分割までの間、相続財産は共有の状態ですから、その管理は民法249条以下の共有の一般規定に従います。アパートの管理を例にとれば、具体的には以下のようになります。

1 共有物の保存行為は、各相続人が単独でできる
(例)建物の修繕や点検、火災保険料の支払い、不法占拠者に対する妨害排除と明け渡しの請求、など

2 共有物の管理行為は、相続分の過半数の同意でできる
(例)賃貸借の契約、賃貸借契約の解除、など

3 共有物の変更行為(処分行為)
(例)売却、取り壊し、増改築、など(Q029もご参照ください)

 

管理人を選任しても良い

遺産の共同管理が困難であったり、面倒であったりする場合には、相続人全員の合意によって、相続人の中から管理人を決めて管理をすることができます。

また、相続人全員の合意によって、相続人以外の第三者から管理人を決めて遺産の管理を任せることもできます。
余談ですが、弁護士や司法書士は、法律によってこのような財産管理を業として行うことが認められています。

管理する人が見つからない場合や、管理の方法に問題がある場合には、家庭裁判所に管理人の選任を求めることができ、この場合には、家庭裁判所はいつでも相続財産の保存に必要な処分を命令することができます(民法918条2項)。

なお、管理人を置いた場合、各相続人と管理人との間に準委任関係が成立します。
そのため、管理人に課せられた責任は各相続人が共同で管理する場合よりも重く、管理人は相続財産について善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)を負います。
また、管理人は、委任者である相続人に対しては報告義務や受取物の引渡義務を負いますが、いっぽうで委任の事務処理に必要な費用の前払いを委任者である相続人に前払いを求めることが可能です。

 
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