【Question】
先週、父が他界しました。
母はすでに亡くなっており、相続人は私一人だけです。
父は事業をしていたので、その結果かかえた負債を分割して支払っていました。
父の居宅を売却すれば負債の大半を一気に清算することができるので、名義変更をして売却したいと思います。
不動産の相続登記をしないと売却できないと聞いたので、大至急、相続登記をお願いしたいのですが。
なお、私は親元からは自立しているので、実家がなくなっても困ることはありません。
【Answer】
お父様の居宅を売却して借金返済にあて、それでも負債が残るくらいであれば、家庭裁判所での相続放棄手続きをすることをおすすめします。
家裁で相続放棄するだけで、お父様の借金はもちろん、遺産の売却などの様々な義務からさっぱり免れることができます。固定資産税や譲渡所得税もいっさい支払う必要はありません。
もしも遺産を売却してしまうと相続を承認したことになり、相続放棄できません。
なお、あなたが相続放棄すれば、初めからあなたは相続人でなかったことになり、お父様のご両親が相続人に繰り上がります
お父様のご両親がすでに他界されていれば、お父様のごきょうだいが相続人に繰り上がります(Q078をご参照ください)。
そのため、あなたが相続放棄が家庭裁判所で受理されたら、繰り上がった相続人にすみやかに相続放棄の手続きをするようにうながすといいでしょう。
【Reference】
法定単純承認 ~相続を承認したものとみなされてしまうケース~
自分から「相続を承認します」という意思を明らかにしなくても、他人から見たら相続を承認したような事実があれば、相続人は単純承認したものとみなされます。これを法定単純承認といい、次のような場合がこれにあてはまります(民法921条)。
(1)相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき
・「処分」には、相続財産の事実上の処分(例:取り壊し)と、法律上の処分(例:譲渡)の両方を含みます(したがって、遺産を売却すると相続を承認したとみなされます)。
・単に建物の修理のような遺産の値打ちを維持するだけの行為や、短期の賃貸借契約(たとえば土地なら5年、建物なら2年以内の期間の賃貸借契約)は除きます。
(2)相続人が相続放棄や限定承認の手続きを取らず、3ヶ月の熟慮期間(Q079)を過ぎたとき
(3)たとえ相続放棄や限定承認をした後でも、相続財産の全部または一部を、(a)隠したり、(b)債権者に隠れてこっそり消費したり、(c)隠すつもりで限定承認をしたときに作成する財産目録に載せなかったりしたとき
このようなケースにあてはまって法定単純承認が成立すれば、もはやその後に相続放棄することはできません。 たとえ熟慮期間中であったとしても、法定単純承認を生じさせた行為を撤回することは原則としてできず(民法919条1項)、相続人は無限に被相続人の権利義務を承継することになります(民法920条)。
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