Q118 会社に遺贈する場合、税金はどうなる?

【Question】

私は、自分が経営している会社に、工場用地を貸しています。

遺言で、この工場用地を会社に遺贈したいと考えていますが、どのような税負担が発生することになるのでしょうか。

 

【Answer】

遺言で会社や法人に財産を遺贈することについて、法律上の制限は何もありません。

ただし、次のような点に注意が必要です。

1)もらった会社・あげた人の両方に、課税される可能性があります。
さらに、同族会社の場合には、他の株主課税が発生することもあります。

2)不動産の名義変更があるので、登記申請時に登録免許税も課せられます。会社への遺贈の場合には、相続人への遺贈の場合と異なり軽減措置がないため、不動産を会社に遺贈した場合の登録免許税は、固定資産税評価額の2%となります。
さらに、不動産を相続人以外の第三者が遺贈によって取得する場合には、地方税として不動産取得税がかかります。
これらのコストは受遺者である会社の負担となりますので、注意が必要です。

3)税金とは別の話になりますが、遺留分を侵害するような遺贈は、受遺者と相続人との間で紛争化する危険があります。

このように、 会社に遺贈すると思わぬ税金がかかることがありますので、遺言作成の際にはくれぐれもご注意を。

 

【Reference】

個人から個人への遺贈の場合には、受遺者(もらった人)に相続税がかかります。

いっぽう、個人から会社・法人への遺贈の場合には、『相続税』こそかかりませんが、次のように課税のトリプルパンチを食らうおそれがあります。

もらった会社法人・・・・・・・法人税・住民税等(時価を益金算入)
あげた人・・・・・・・・・・・譲渡所得税(みなし譲渡所得課税)・住民税
同族会社の場合の他の株主・・・相続税

ただし、もらった法人が国税庁長官の承認を受けた公益法人等である場合には、あげた人に譲渡所得税はかかりません(租税特別措置法40条)。これは一般的には「寄付」と呼ばれます。

 

(1)もらった法人への課税

法人・法人が個人から遺贈を受けた場合、もらった会社・法人のほうでは、そのときの時価受贈益として収益に計上します(法人税法22条2項)。

そして、他の事業収益と通算して、法人税や住民税・事業税の対象になります。もっとも、法人税の繰越欠損金があるなら、受贈益が繰越欠損金以内の金額であれば、法人税は課税されずにすみます。

なお、遺贈の内容が不動産であるならば、もらった会社・法人は、不動産登記時の登録免許税や地方税である不動産取得税を負担しなければなりません。こちらは赤字会社でも必ず発生するコストです。

 

(2)あげた個人への課税

みなし譲渡所得課税』が適用されます。

個人が、土地や建物などの資産を会社・法人に遺贈した場合には、これらの資産は遺贈の効力発生時(相続開始時)の時価で譲渡があったものとみなされ、これらの資産の取得時から相続開始時までの値上がり益に対して所得税が課税されます(所得税法59条1項1号)。これに伴い住民税も課税されます。

もっとも、遺贈した当の本人は死亡していますから、納付の手続きは相続人がすることになります。
具体的には、相続人が被相続人の所得について準確定申告(相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内)を行い、申告期限までに譲渡所得税を納税します(所得税法124条)。この所得税は被相続人の債務となりますから、相続税の計算においては、被相続人の相続財産から控除することができます

譲渡所得税は他の所得とは区分して申告分離課税となり、長期譲渡所得の場合、所得税は15%、住民税は5%となります。

タダで財産をあげたのに税金も支払わなければならないとは、なんとも納得がいかない話ですが、これは法人を利用した税金逃れを防止するために、財産を移転するときには含み益の部分を精算するという税法上の考え方によるものなのです。

時価の2分の1未満の金額で譲渡した場合も同様に、みなし譲渡所得課税が行われます(所得税法59条1項2号、所得税法施行令169条)。

もちろん、みなし譲渡所得課税が適用されるのは『含み益がある財産』ですから、含み益がない財産(含み損がある資産や現金資産)には譲渡所得税はかかりません。

なお、、もらった法人が国税庁長官の承認を受けた公益法人等である場合には、あげた人に譲渡所得税はかかりません(租税特別措置法40条)。いわゆる「寄付」のことです。

 

(3)同族会社の場合、他の株主に課税される

同族会社とは、簡単にいえば、株式の大半を親族によって保有されている会社のことです。

ある株主が同族会社に資産を遺贈すると、株価が上がります。
すると、上がった株価の分だけ、同族会社の他の株主はトクをします。これは見方を変えれば、財産を同族会社にあげた人は、他の株主に対しても、上昇した株価の分だけ財産を遺贈したのと同じことです。

そこで、株価の上昇分に相当する金額について遺贈により取得したものとして、同族会社の他の株主に相続税がかかることがあるのです(相続税法9条、相続税基本通達9-2)。

 
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2014年8月19日 | カテゴリー :