Q106 受遺者が先に亡くなった場合、遺言の効力は?

【Question】

私は、長年お世話になったAさんに預貯金の一部を遺贈することにして、3年前に遺言書を書きました。

ところが、つい最近、急な病で受遺者のAさんが亡くなったと聞き、大変おどろきました。

この場合、私は遺言書を書き直す必要があるのでしょうか?

 

【Answer】

受遺者Aさんに遺贈するはずだった財産について、万が一Aさんのほうが先に亡くなった場合にどうするかをあらかじめ遺言書の中で定めていないならば、遺言書のうちAさんへの遺贈に関する部分については効力がなくなります。

Aさんのご遺族に財産を遺贈するお気持ちがあるのならば、遺言の書き直しが必要です。

 

【Reference】

遺言は、原則として遺言者が死亡した時から効力が発生します(民法985条1項)。

しかし、遺言に書かれている内容のうち『遺贈』という行為は、遺贈者(あげる人)が受遺者(もらう人) との間に強い関係があるからこそなされるわけですから、受遺者のほうが先に亡くなると遺贈は効力を失い、受遺者の相続人はその地位を承継しないものとされています(民法994条1項)。

つまり、『遺贈』の場合には、代襲相続にあたる制度が存在しないのです。

遺贈が効力を失ってしまうと、遺贈されるはずだった財産は遺贈者の相続人のものとなります。相続人が複数いる場合には、遺産分割協議によって相続する人が決まります。これを避ける必要があるのならば、遺言の作り直しが必要です。

ただし、遺言書の中であらかじめ、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合には受遺者の相続人に遺贈すると定めたり、まったく別の人に遺贈すると決めておいたりした場合には、その定めは有効です。

 

それでは、遺言書の内容が、ある人への『遺贈』ではなく、相続人の中の誰かに『相続させる』という遺言であった場合に、その相続人が先に亡くなった場合にはどうなるのでしょうか。亡くなった相続人の子が代襲相続するのでしょうか?
これについては比較的新しい最高裁判例があるので、次の Q107 で説明します。

 

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2014年6月30日 | カテゴリー :