Q091 受理された相続放棄がひっくり返ることはないのか

【Question】

弊社は一年前、X氏に対し350万円を貸し付けました。

ところが分割返済が始まって間もなく、半年前にX氏は亡くなってしまいました。

そこで、X氏の子ら相続人に対し、電話や郵便などによって貸付金の返済を求めていたのですが、つい先週、相続放棄が家庭裁判所で受理されたとの文書が送られてきました。受理されたのは最近の日付になっています。

X氏の相続人に対して弊社から継続的に支払いを請求していたにもかかわらず、亡くなってから半年もたって相続放棄が受理されたのは、納得がいきません。しかし、家庭裁判所が受理した以上、相続放棄について今から争うことはできないのでしょうか。

 

【Answer】

相続放棄の申述を家庭裁判所が受理したとしても、その相続放棄が法律上の要件を満たした適切なものであるかどうか、確定したわけではありません。3ヶ月の熟慮期間が経過していることや法定単純承認にあたる事実が存在することを、民事訴訟を提起して争うことは可能です。

訴訟の結果、受理された相続放棄が無効になることもあるのです

(訴訟を提起するかどうかは、相続人の熟慮期間を伸長する審判があったのかどうか、御社の請求の態様、次順位の相続人から回収できる可能性や訴訟を提起した場合のコストなど、総合的に判断して決めることになるでしょう)

 

【Reference】

相続放棄の申述がなされた場合、家庭裁判所はこれをすぐに受理するわけではありません。申述の形式が法律に沿ったものかどうか、申述が相続人の真意に基づいているか、申述が熟慮期間内になされているか、法定単純承認事由に該当しないか等、一通り家庭裁判所が審理したうえで、相続放棄申述の受理・不受理について審判をします。

相続放棄の受理・不受理にあたって家庭裁判所が行う審理は厳密なものではなく、一応の審理で足りるとされています。なぜかというと、もしも相続放棄の『不受理』が確定してしまうと相続人の不利益が非常に大きいので、却下すべきことが明らかでないかぎり、広く相続放棄の申述を受理する方向で家庭裁判所が運用しているからです。

その代わり、債権者等の利害関係人が、相続放棄が無効であるとして別の訴訟手続きの中で争うことは自由です。家庭裁判所が相続人による相続放棄の申述を受理したからと言って、それが絶対的な効力を持つわけではないのです。

 
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