Q031 法定相続分と異なる遺産分割協議はできるか

【Question】

先日、父が亡くなりました。
父の遺産は、すべて母が引き継いでくれればいいと考えていますが、法律では配偶者である母の相続分が2分の1、子の相続分が2分の1と決まっていると聞きました。
母に全部相続してもらうと法律違反になるのですか?

 

【Answer】

大丈夫です。法律違反にはなりません。そのような遺産分割協議も有効です。

 

【Reference】

たしかに民法900条に法定相続分についての定めがありますが、遺産分割についての一般的な基準を定めた民法906条には、次のような規定もおかれています。

『遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。』

遺産そのものを考えた場合、たとえば自宅や田畑などについては特定の相続人が引き継いだほうがいいケースが大半でしょう。住む予定もないのに自宅を承継したり、耕作しないのに田畑を引き継いだりしても仕方ありません。

また、相続人のほうを考えた場合には、老いた親の生活や介護を考えて遺産を配分すべきだったり、経済状況の苦しい相続人に遺産を重点的に配分したりするようなことが望ましいこともあるでしょう。

そこで、遺産分割については、形式的・機械的ではなく、遺産の種類などや各相続人の側の事情に応じて柔軟に決めることができるようになっています。

このようなわけで、相続人の誰がどのような遺産を引き継ぐかは、遺産分割協議で自由に決めることができますので、民法で決められている法定相続分とは異なる割合での遺産分割協議も有効です。
もっとも、いくら自由と言っても、詐欺や強迫のような取り消し原因があるような場合などは別です。

なお、借金などの債務について、相続人の中から誰が引き継ぐかを遺産分割協議で決めることは可能ですが、このような取り決めを債権者に認めてもらうには、債権者の同意を取りつける必要があります。
債務の遺産分割については、Q016  ローンなどの金銭債務は遺産分割協議で分けられる?で詳しく解説しています。

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