新聞報道によれば、自民党の中で、相続税に「遺言控除」を新設する動きがあるようです。
以下は、2015/7/9 日本経済新聞からの引用です(下線は当事務所で追加)。
「遺言控除」で相続トラブル防止 自民特命委が新設要望へ
自民党の「家族の絆を守る特命委員会」(古川俊治委員長)は8日、遺言に基づいて遺産を相続すれば残された家族の相続税の負担を減らせる「遺言控除」の新設を要望する方針を固めた。遺言による遺産分割を促し、相続をめぐるトラブルを防ぐ狙いだ。党税制調査会に提案し、2018年までの導入をめざす。
亡くなった人から相続した土地や現金などの財産にかかる相続税は、遺産の総額から基礎控除額を差し引き、残りの額に税率をかけて算出する。基礎控除額は今年1月から「3千万円+法定相続人の数×600万円」。遺言控除はこの基礎控除に上乗せする形で導入し、課税対象となる遺産の額を減らせるため税負担を軽くできる。
8日の会合で葉梨康弘法務副大臣が制度の概要を説明した。出席者から導入に異論はなかったという。ただ、控除を受けるために有効な遺言の形式など制度設計に課題は残る。
日本では財産を残す人が遺言を用意するなど相続対策を十分に取っていないことが多く、取り分をめぐり遺族の間でもめ事になりやすい。遺言控除の新設で遺言の普及を後押ししたい考えだ。
__以上ここまで引用。
税額控除ではなく、「基礎控除の上乗せ」という形で検討されているのですね。
どーんと1,000万円くらい上乗せしてくれると、遺言を作成する方が増えるかもしれませんが…
実際のところ、国民の大多数は、遺産総額がそもそも基礎控除に達していない(相続税がかからない)のですから、「遺言控除」の恩恵を受けられるケースというのは、はたしてどのくらいあるのでしょうか。若干疑問ではあります。
相続争いは、遺産が決して多くないケースのほうが、深刻化することが多いのです(詳しくは、相続対策って本当に必要? )。私たちのように相続実務に取り組んでいる者からすれば、相続税がかからない方にこそ、遺言作成を後押しするような施策を考えていただきたいと思うのです。
しかし、「遺言控除」の新設によって、遺言が相続争いを予防する手段として有効であるということが認知されるならば、悪くないかもしれません。
それにしてもこの特命委員会の名称、何なのですかね…