【Question】
会社を経営していた父が、病気で亡くなりました。
役員死亡退職金については、退職金規程にもとづいて、役員会の決議後に5,000万円が支給されました。
しかし、そのほかに会社から『弔慰金』として600万円が支給され、『花輪代』も100万円支給されています。
会社の説明によれば、弔慰金は会社の弔慰金規程に基づいて支給したもので、役員会などの決議は必要ないとのことでした。
会社の人の話では、「最後の給料が月額100万円だったのでそうなりました」という説明でした。
死亡退職金がみなし相続財産として相続税の対象になることはわかりますが、これらの弔慰金や花輪代はどのように考えるのでしょうか。
【Answer】
退職手当等とは別に、弔慰金や花輪代を受け取った場合、その一部については非課税とされます。
業務外の死亡であれば死亡時の普通給与の6ヶ月分までは非課税となります。
最終給与が月額100万円ならば、100万円×6ヶ月=600万円は非課税です。
支給された弔慰金がちょうどこの金額になっているということは、きっとこの非課税枠を意識しているのでしょう。
ただし、この非課税枠を超えた金額については、退職手当金として相続税の対象になります。花輪代の100万円は、相続税の計算上は退職手当金等に含めて計算することになるでしょう。
【Reference】
役員や従業員が死亡した場合に会社から支給される金銭(現物支給含む)には、名目上は『死亡退職金』『退職手当金』『弔慰金』『花輪代』『葬祭料』などいろいろありますが、名目がどうであれ、実質的に被相続人の退職金であれば相続税の対象になります(相続税基本通達3-18)。
しかし、会社の役員などが死亡すると、死亡退職金を支給するには株主総会や取締役会の決議が必要になります。
そこで『弔慰金』などという名目で、退職金とは別に金品を支給することがあります(規則があれば、弔慰金の支給には原則として決議不要)。
このような弔慰金や花輪代には、遺族への見舞いという側面があります。一般的にお香典は贈与税が非課税とされていますから、弔慰金や花輪代もある程度は非課税としても良いのではないか・・・とも考えられます。もっとも、どこで区別するのか、現実的には難しい部分があります。
そこで、相続税での取り扱いについては、次のようになりました(相続税基本通達3-20)
弔慰金・花輪代・葬祭料等、退職手当金とは別に支給されたものについて、
1.実質的に退職金ならば、それは相続税の対象にする。
2.実質的に退職金ではないものについては、次に掲げる金額を上限として、相続税の対象にしない。 その金額を超える部分に相当する金額は、退職手当金等として相続税の対象とする。
(1) 業務上の死亡の場合 :被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額
(2) 業務外の死亡 の場合:被相続人の死亡当時の普通給与の6ヶ月分に相当する額
(注 普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。)
税法上の退職手当金等に該当しない弔慰金など
なお、ご質問とは関係ありませんが、以下の法律等の規定により遺族が受ける弔慰金等については、相続税の課税対象には含めません(相続税基本通達3-23)。
(1) 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第12条の8第1項第4号及び第5号((業務災害に関する保険給付))に掲げる遺族補償給付及び葬祭料並びに同法第21条第4号及び第5号((通勤災害に関する保険給付))に掲げる遺族給付及び葬祭給付
(2) 国家公務員災害補償法(昭和26年法律第191号)第15条((遺族補償))及び第18条((葬祭補償))に規定する遺族補償及び葬祭補償
(3) 労働基準法(昭和22年法律第49号)第79条((遺族補償))及び第80条((葬祭料))に規定する遺族補償及び葬祭料
(4) 国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)第63条((埋葬料及び家族埋葬料))、第64条及び第70条((弔慰金及び家族弔慰金))に規定する埋葬料及び弔慰金
(5) 地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)第65条((埋葬料及び家族埋葬料))、第66条及び第72条((弔慰金及び家族弔慰金))に規定する埋葬料及び弔慰金
(6) 私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)第25条((国家公務員共済組合法の準用))の規定において準用する国家公務員共済組合法第63条、第64条及び第70条に規定する埋葬料及び弔慰金
(7) 健康保険法(大正11年法律第70号)第100条((埋葬料))に規定する埋葬料
(8) 船員保険法(昭和14年法律第73号)第72条((葬祭料))に規定する葬祭料
(9) 船員法(昭和22年法律第100号)第93条((遺族手当))及び第94条((葬祭料))に規定する遺族手当及び葬祭料
(10) 国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(昭和22年法律第80号)第12条((弔慰金))及び第12条の2((特別弔慰金))に規定する弔慰金及び特別弔慰金
(11) 地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)第31条((遺族補償))及び第42条((葬祭補償))に規定する遺族補償及び葬祭補償
(12) 消防組織法(昭和22年法律第226号)第24条((非常勤消防団員に対する公務災害補償))の規定に基づく条例の定めにより支給される消防団員の公務災害補償
(13) 従業員(役員を除く。以下この(13)において同じ。)の業務上の死亡に伴い、雇用主から当該従業員の遺族に支給された退職手当金等のほかに、労働協約、就業規則等に基づき支給される災害補償金、遺族見舞金、その他の弔慰金等の遺族給付金(当該従業員に支給されるべきであった退職手当金等に代えて支給される部分を除く。)で、(1)から(12)までに掲げる弔慰金等に準ずるもの
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