Q023 遺言のメリットとデメリットは?

【Question】

定年退職した会社のOB会に出席したときに、同期の友人が「遺言書を作ったので、とても安心しているよ」と話していました。遺言書を作ることにはどのような意味があるのですか?

 

【Answer】

『遺言』は、いつやってくるかわからない自分の万一のときに備えて、財産の分け方や認知などの身分事項について自分の希望が実現できるように、民法の決まりにしたがって作成しておくものです。

自分の心情を書き記しておく”遺書”とはちがい、遺言に書き記したことが法律的に有効になって、遺族や第三者が遺言書の内容に拘束されます。

具体的には、次のようなメリットがあります。
1) 家族の実情にふさわしい財産の配分ができる
2) お世話になった人や団体に、財産を分け与えることができる
3) 残された家族・親族の手続き上の負担を軽くすることができる

ただし、遺言は法律上の形式に従って適切に作成しなければ、かえってデメリットを生み出すこともあります。
たとえば、
1) 遺言の記載があいまいだったことが原因で、かえって争いの元になってしまうことがあります。
2) 法律の決まりに従って書かれていないと、希望どおりにならないことがあります。
3) いくら自分の希望が優先するといっても、あまりに実情を無視した内容では大きな紛争を引き起こします。

なお、余計なことかもしれませんが、法律家は『遺言』を『いごん』、『遺言書』を『いごんしょ』と呼びます。一般の方は『ゆいごん』『ゆいごんしょ』と呼ばれることが多いと思いますが、もちろん決して間違いではありません。ちなみに筆者は、専門用語が大キライなので、一般の方と同じく『ゆいごん』『ゆいごんしょ』と呼んでいます。

 

【Reference】

遺言を書いておくことの利点を、もう少しくわしく見てみましょう。

 

・家族の実情にふさわしい財産の配分ができる

「自宅は妻に残して生活の場を確保しておきたい」
「経営している会社の株式は、後継者である長男にすべて与えたい」
「介護に尽くしてくれた長女に財産を多く残したい」
「障がいのある子には、生活できるだけの資産を残したい」

このような希望を実現するための方法の1つが、『遺言』です。

万一のことがあったとき、故人が遺言をのこしていなければ、遺産は法定相続人全員による話し合いで、だれがどのように引き継ぐかを決めます。これが『遺産分割協議』です。
遺産分割協議には、すでに天国にいる故人が口をはさむことは、もちろんできません。

遺言をのこしておけば、基本的には遺言の記載内容が優先され、遺言の内容によっては遺産分割協議そのものが省略されることになり、遺言を作った人の希望が達成されるのです。

また、遺産分割協議がまとまらなければ、家庭裁判所での調停・審判となり、家族の間で骨肉の争いになることもあります。
適切な遺言書を残して財産の分割方法を指定しておけば、このような相続争いを防いで円満な家族関係を保つことができるという効用もあります。

 

・お世話になった人や団体に、財産を分け与えることができる

「苦労して世話をしてくれた息子の嫁にも財産をのこしたい」
「内縁の妻にも遺産を渡したい」

遺言がなければ、故人の財産はすべて相続人が承継することになりますが、遺言があれば、遺言者の意思にもとづいて相続人ではない人に財産を残す(遺贈)ことができます。
遺贈の場合は、生前贈与に比べて税負担などのコストが大幅に少なくなることもメリットになります。

また、団体に対して財産を残すことも可能ですので、「遺産を寄付して世の中に役立てたい」という希望もかなえることができます(ただしもらった法人には法人税、あげた遺贈者にはみなし譲渡所得課税の問題があります)。

 

・相続人の負担を軽減できる

相続手続きを経験されたことがある方でしたら、遺産分割とは大変面倒で、相当な量の事務作業を必要とするものであると痛感されたのではないでしょうか。

遺産を分割するには、まず前提として故人の遺産を調査してまとめ、故人の出生から死亡までの戸籍謄本を揃えて相続人を確定するという作業を行う必要があります。遺産分割協議が成立するまでの間、故人の銀行口座は凍結され、自由に引き出すこともできません。

ところが、法的に間違いのない遺言書があれば、相続人が行うこのような作業を大幅に軽減することができます(公正証書遺言の場合)。
たとえば戸籍謄本については、故人の死亡記載のある最終の戸籍謄本と、実際に財産を引き継ぐ相続人の方の戸籍謄本があれば足り、預金口座についてもすぐに凍結を解除することが可能になります。

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2013年11月16日 | カテゴリー :