Q029 遺産分割協議の前に、相続財産の不動産を売却したい

【Question】

父の遺産についての遺産分割協議は、これからです。
私は、父の面倒をみるために父の家で同居していたのですが、今後はこの家も必要がないので、早く売却してしまいたいと考えています。もちろん売却代金は兄弟で公平に分けるつもりです。
弟たちには相談しないで、父と同居していた私がこの家を売却しても、かまわないのでしょうか。

 

【Answer】

まず、遺言が無く、2人以上の相続人がいる場合には、相続人全員が相続財産を共有(共同所有)することになります。
ご尊父のお住まいについても、同居していたか同居していなかったかに関係なく、相続人全員の共有となりますので、相続人1人で売却することはできません。
お1人で売却するには、ごきょうだいでの遺産分割協議をすることが欠かせません。

もし売却をお急ぎならば、共有のまま共同で売却します。
この場合には不動産登記も、いったん相続人全員で共有名義にしてからでなければ、第三者に所有権を移転できない仕組みになっています。

なお、相続税が課税されるようなケースでは、被相続人の自宅の敷地については、相続開始前から同居していた親族は『小規模宅地の特例』によって一定面積まで80%の評価減を受けることができます。ただし、相続税の申告期限まで居住し所有を継続することが適用条件(配偶者を除く)となっていますので、申告期限前に転居・売却してしまうと、この特例を受けることができません。ご注意ください。

 

【Reference】

相続人が2人以上いる場合のことを共同相続といい、この場合には相続財産はいったん相続人全員の共有となり(民法898条)、遺産分割の手続きをしてようやく、最終的に個々の相続財産を各相続人の単独所有にすることができます。

 

共同相続した相続財産の変更行為・処分行為

遺産分割が終わるまでは相続財産は共有になるわけですが、共有財産について形や性質を変える行為をするには、他の共有者全員の同意を得なければ、することができません(民法251条)。

家を例にするならば、増改築のような変更行為や、売却取り壊し担保に入れるなどの処分行為をする場合(売却も、「お金に変える」という点で、性質を変える行為です)には、他の共有者全員の同意を必要とします。

裏を返せば、他の共有者が全員同意してくれれば、共有物の変更行為・処分行為をすることはできるわけですから、共有状態の相続財産も、相続人全員が同意すれば、売却したり壊してしまったりすることができます。
相続人が1人でこのような行為するには、遺産分割協議によって共有状態を解消するほかありません。
また、多数決で決めてもダメで、必ず相続人全員の同意が必要です。

 

相続税における『小規模宅地の特例』

相続や遺贈によって取得した、被相続人等の自宅や事業用建物・事業用構築物の敷地については、一定面積までの部分については財産評価額が安くなります。これは『小規模宅地等の特例』などと呼ばれ、評価額が80%減となる大きな特例です。

なぜこのような特例があるかといえば、自宅や事業用敷地にドカンと多額な相続税がかかると、そこに住み続けたり、そこで事業を継続したりすることが、できなくなってしまうからです。

ところが税制改正により、2010年(平成22年)4月1日以降に発生した相続については、相続開始前から同居している相続人等が相続税の申告期限まで居住・事業継続をし、かつ、継続所有しなければ、本特例の適用対象から除外されてしまいました。(ただし、配偶者に対しては継続居住・継続所有の条件はなく、すぐに売却しても特例を受けられます)

そのため、小規模宅地の特例を利用して相続税を抑える必要がある場合には、このような土地をあわてて売却してしまうと特例を受けられなくなってしまいますので注意が必要です。

小規模宅地の特例については、相続税のところであらためて触れます。

 

なお、相続財産を売却し、その売却代金を分割することを『換価分割』といいます。換価分割についてはQ037をご覧ください。

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Q030 遺産を分けるにはどうすればいいか

【Question】

3ヶ月前に父が亡くなりました。相続人全員で父の遺産を分けたいと思いますが、どのような手順で進めればいいのでしょうか?

 

【Answer】

亡くなられたお父様の遺言があるかどうかによって、手続きが違います。
遺言が無ければ、戸籍謄本によって誰が相続するかを確定し、遺産の内容を特定したうえで、相続人全員の話し合いによって遺産を分けます。

 

【Reference】

まず、次の場合には相続人間で話し合うことを省略して遺産を分けることができます。

法的に有効な遺言書があって、遺言書の中で誰がどの財産を引き継ぐのかが決まっている場合

この場合には、基本的にその内容に従って遺産を分けて名義変更等の手続きに進みます。
ただし、この場合でも遺留分を侵害された相続人が権利を主張してきた場合には、相続人間の話し合いが必要になることもあります。

また、遺言書に記載されていない財産については、相続人間で話し合って遺産を分けることになります。

 

反対に、次の場合には相続人全員で話し合って、遺産を分けることになります。これが『遺産分割協議』です。

遺言書がない場合
遺言書の内容が相続分の割合を指定しているだけのもの(たとえば「Aの相続分を何分の何とする」というようなもの)である場合

 

遺産分割協議を進めるには、以下のような手順で進めるのが理想的です。

(1)相続人を確定する:故人の出生から死亡にいたるまですべての履歴が記載された戸籍謄本を集める

(2)遺産を確定する:(1)と平行して、故人の遺産を特定する。遺産目録を作ればベスト

(3)相続人全員で、遺産分割協議を行う

(4)遺産分割協議書を作る

(5)遺産の名義変更や、預貯金等の解約・分配を行う

遺産分割協議をいつまでに終わらせなければいけないかということは、法律上には定めがありません。 しかし、あまり時間をかけすぎると、遺産が散逸したり、相続人の側の事情が変わって話し合いがまとまらなくなったりすることが多いですので、できるだけすみやかに済ませたほうがいいでしょう。

また、相続税の申告を必要とする場合には、相続開始時から10ヶ月以内に申告しなければならず、遺産分割協議がまとまらないと各種の控除を受けることができなくなることがありますので、特に注意が必要です。

なお、相続人を一人でも欠いた遺産分割協議は無効です。
特定の相続人を除外して遺産分割協議をしても無意味ですので、(1)の戸籍謄本を集める作業は大事です。
全員参加したとしても、多数決で決めることはできません。必ず全員一致しなければ有効な遺産分割協議にはなりません。

また、相続人の中に未成年者がいたり、認知症などで判断能力が弱い方がいる場合には、家庭裁判所での手続きが必要になることがあります。

もしも遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所での遺産分割調停・審判という形で、裁判所の関与を受けながら遺産を分けます。

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Q031 法定相続分と異なる遺産分割協議はできるか

【Question】

先日、父が亡くなりました。
父の遺産は、すべて母が引き継いでくれればいいと考えていますが、法律では配偶者である母の相続分が2分の1、子の相続分が2分の1と決まっていると聞きました。
母に全部相続してもらうと法律違反になるのですか?

 

【Answer】

大丈夫です。法律違反にはなりません。そのような遺産分割協議も有効です。

 

【Reference】

たしかに民法900条に法定相続分についての定めがありますが、遺産分割についての一般的な基準を定めた民法906条には、次のような規定もおかれています。

『遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。』

遺産そのものを考えた場合、たとえば自宅や田畑などについては特定の相続人が引き継いだほうがいいケースが大半でしょう。住む予定もないのに自宅を承継したり、耕作しないのに田畑を引き継いだりしても仕方ありません。

また、相続人のほうを考えた場合には、老いた親の生活や介護を考えて遺産を配分すべきだったり、経済状況の苦しい相続人に遺産を重点的に配分したりするようなことが望ましいこともあるでしょう。

そこで、遺産分割については、形式的・機械的ではなく、遺産の種類などや各相続人の側の事情に応じて柔軟に決めることができるようになっています。

このようなわけで、相続人の誰がどのような遺産を引き継ぐかは、遺産分割協議で自由に決めることができますので、民法で決められている法定相続分とは異なる割合での遺産分割協議も有効です。
もっとも、いくら自由と言っても、詐欺や強迫のような取り消し原因があるような場合などは別です。

なお、借金などの債務について、相続人の中から誰が引き継ぐかを遺産分割協議で決めることは可能ですが、このような取り決めを債権者に認めてもらうには、債権者の同意を取りつける必要があります。
債務の遺産分割については、Q016  ローンなどの金銭債務は遺産分割協議で分けられる?で詳しく解説しています。

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Q032 遺言の内容と異なる遺産分割協議は可能か?

【Question】

昨年、母が亡くなりました。相続人は兄(長男)、私(長女)、妹(二女)の3名です。
母は遺言を書いており、その内容は次のようなものでした。
・長男に自宅の土地建物を相続させる
・長女と二女には預金を2分の1ずつ相続させる

ところが、長男である兄から、家は持っているのでいらない、私に引き継いでほしい、と言われました。
母が書いた遺言の内容とは違ってしまいますが、きょうだいで話し合って、私が自宅不動産を相続し、兄と妹が預金を相続するという内容の遺産分割協議書を作ってもいいのでしょうか?

 

【Answer】

いくつか注意点はありますが、相続人全員(相続人以外の受遺者を含む)が合意の上で、遺言書と異なる内容の遺産分割協議を成立させることは可能です。

子供たちが相続でもめないように、お母様が配慮して遺言を書かれたのですから、結果的にごきょうだいでもめることなく遺産分割協議がまとまるのならば、お母様の意思は十分伝わったと言えるのではないでしょうか。

 

【Reference】

本来、遺言と異なる遺産分割はできません。
とはいえ、『受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる』と民法で定められています(986条)。
遺言を書いた人の意思が優先されるとはいえ、遺贈を受けることまで強制することは、さすがにできないわけです。

遺贈の放棄があると、遺贈ははじめからなかったものとみなされ、原則どおり、その財産は相続財産として相続人全員が共有するものとなります。受遺者全員が遺贈を放棄すれば、すべての相続財産は共同相続人全員のものになるので、結果として遺言がなかったのと同じことになります。

こうして、相続人全員で遺言とは異なる内容の遺産分割協議を行うことができるようになります。現実的にもけっこう行われています。
ただし、下記のように、いくつか注意点があります。

 

遺言で、遺言執行者が定められている場合

この場合、遺言と異なる遺産分割協議を行うには、遺言執行者の同意が必要です。

遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持っています(民法1012条1項)。
そして、遺言執行者がいる場合、相続人は、遺言の対象となった相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる一切の行為が禁止されます(民法1013条)。

遺言執行者は、遺言内容を粛々と実現することが職務です。そのため、相続人全員が同意して遺言内容と異なる遺産分割協議をしても、遺言執行者の職務執行をさまたげることはできません。

 

遺言で、遺言と異なる遺産分割が禁止されている場合

この場合、遺言と異なる遺産分割協議を行うことはできません。

遺言で、最大5年間は遺産分割を禁止することができるようになっています(民法908条後)。
また、特段の事由がある場合には、家庭裁判所の審判で遺産分割を禁止されることがあります。

 

すでに遺言に従って遺産を分けてしまっている場合

この場合、課税の問題があります。

被相続人の死亡により、遺言はただちに効力を有し、受遺者に対し権利が移転します。不動産の名義変更(登記)や預貯金の払い戻しも可能になります。

あとから相続人全員が話し合って遺言と異なる内容の遺産分割協議を成立させた場合には、すでに受遺者に権利移転の効力が生じている以上、新たに受遺者から交換・贈与されたものとして贈与税・所得税などの課税が発生します。

遺言と異なる遺産分割協議を成立させるには、遺贈を放棄した上で行うようにしてください。

 

相続人の一部が遺言を隠していた場合

相続人の一部が遺言を隠していた場合、相続人間で遺産分割協議を成立させても、遺言書の存在を知らなかった相続人に錯誤があるので遺産分割協議は無効となります。そして、遺言を隠していた相続人は相続欠格となり、相続権を失います。

遺言書と異なる内容の遺産分割協議を行うには、まず相続人全員が遺言の存在と内容を知っている事が大前提になります。

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Q033 遺産分割をする前の、遺産の管理はどうするか

【Question】

遺産の中に賃貸アパートがあるのですが、遺産分割協議をするまでの間、私が代表してアパートを管理するように兄弟たちから頼まれています。新しい入居者との賃貸借契約や退去時の精算、修繕費や火災保険料の負担など、アパートの管理はどのようにすればいいのでしょうか?

 

【Answer】

まず、遺産分割協議がまとまるまでの間は、相続財産(遺産)は共同相続人の共有財産であり、相続人が共同で管理するのが原則です。
しかし、ご相談のように、相続人全員の合意によって、相続人の中から管理人を決めて管理をすることも可能ですし、相続人以外の第三者を遺産の管理人に選んで、管理してもらうことも可能です。

修繕費や火災保険料の負担など、遺産の管理にあたって発生した費用は、遺産の中から支出するのが法律上のタテマエですが、とりあえず遺産の管理を任された人が立て替えて支払い、遺産分割協議のときに清算するケースが多いと思われます。

 

【Reference】

相続人全員で遺産を共同管理する場合

相続人が2人以上いる場合、遺産分割協議が成立する前の段階では、相続人全員が、その法定相続分(遺言による相続分の指定がある場合にはその指定相続分)の割合に応じて、相続財産を共有することになります(Q029)。
この間、共同相続人は、相続財産を自分の固有財産(相続によって取得した財産ではなく、元来自分の持っていた財産)と同じような注意をもって管理しなければなりません(民法918条1項)。相続放棄や限定承認をする場合でも同様です。

このように、遺産分割までの間、相続財産は共有の状態ですから、その管理は民法249条以下の共有の一般規定に従います。アパートの管理を例にとれば、具体的には以下のようになります。

1 共有物の保存行為は、各相続人が単独でできる
(例)建物の修繕や点検、火災保険料の支払い、不法占拠者に対する妨害排除と明け渡しの請求、など

2 共有物の管理行為は、相続分の過半数の同意でできる
(例)賃貸借の契約、賃貸借契約の解除、など

3 共有物の変更行為(処分行為)
(例)売却、取り壊し、増改築、など(Q029もご参照ください)

 

管理人を選任しても良い

遺産の共同管理が困難であったり、面倒であったりする場合には、相続人全員の合意によって、相続人の中から管理人を決めて管理をすることができます。

また、相続人全員の合意によって、相続人以外の第三者から管理人を決めて遺産の管理を任せることもできます。
余談ですが、弁護士や司法書士は、法律によってこのような財産管理を業として行うことが認められています。

管理する人が見つからない場合や、管理の方法に問題がある場合には、家庭裁判所に管理人の選任を求めることができ、この場合には、家庭裁判所はいつでも相続財産の保存に必要な処分を命令することができます(民法918条2項)。

なお、管理人を置いた場合、各相続人と管理人との間に準委任関係が成立します。
そのため、管理人に課せられた責任は各相続人が共同で管理する場合よりも重く、管理人は相続財産について善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)を負います。
また、管理人は、委任者である相続人に対しては報告義務や受取物の引渡義務を負いますが、いっぽうで委任の事務処理に必要な費用の前払いを委任者である相続人に前払いを求めることが可能です。

 
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Q034 遺産の管理や清算のためにかかった諸費用はどうするか

【Question】

遺産分割協議までに時間がかかり、その間に様々な費用がかかっています。
たとえば家の固定資産税や火災保険料、戸籍や残高証明の取り寄せの費用や、財産目録の作成を専門家に依頼した費用などがあります。
全部合わせると結構な金額になるのですが、これらは遺産から支出してもかまわないのでしょうか。

 

【Answer】

遺産の管理や清算にかかった費用は、遺産の中から支出してかまいません。
ただし、領収書をきちんと整理し、多額の出費をする場合には他の相続人の同意を得ておくことが重要です。

 

【Reference】

相続財産の維持・管理や清算のための手続きには、いろいろと費用がかかります。
たとえば一般的な不動産では固定資産税や借地料、水道光熱費、火災保険料などが、金融関係では口座維持管理料や貸金庫料などがかかります。

また、登記簿謄本や残高証明書などを取り寄せたり、戸籍謄本などを集めたりするのにも、積み重ねると結構な費用がかかっていることがあります。
財産目録や遺産分割協議書の作成を専門家に依頼すれば、その費用もかかっていることでしょう。

これらのうち、故人の生前にすでに発生していた固定資産税などの費用については、『相続債務』として相続財産に含まれます。

反対に、遺産分割協議がまとまって、個々の財産の取得者が決まった後に発生した費用については、財産を取得した人が負担することになりますから、問題になりません。

問題になるのは、『被相続人の死亡から、遺産分割協議が成立するまでに発生した費用を、誰が負担するのか』という点です。

 

遺産の管理・清算に関する費用は、遺産から支出しても良い

もちろん、これらの費用を「私が払うよ」と言ってくれる相続人がいれば、それはそれでかまいませんが、「諸費用は相続人みんなで負担しよう」というケースが多いと思います。

一応、法律上は、遺産の管理や清算のために使った費用は、遺産の中から支出することになっています(民法885条1項)。
遺産に現金があればそこから支出してもかまいませんし、相続人全員で合意して預貯金を解約し、そこから支払ってもかまいません。 相続人の中の誰かが立て替えて支払っておき、遺産分割の際に精算してもかまいません。
トラブルを防ぐため、きちんと領収書は残しておくことと、多額の出費をする場合には相続人全員の了解を取ることが大切です(注1)。

最終的にどのように精算するか、その方法については見解がわかれていて、決まった方法があるわけではありません(いかにも日本的で、あいまいです)。
現実的には、次のいずれかの方法が取られることが多いです。

(1)プラスの相続財産から、これらの諸費用を差し引いた上で、残りを遺産分割で分ける
(2)遺産分割協議の中で、費用の負担者や負担割合を決める
(3)遺産分割協議書では特に明記しないが、別途、相続人間で費用の負担者や負担割合を決める(金融資産を多く取得した人が、暗黙のうちに負担することも多い)

ただし、たとえば相続財産の中に被相続人の自宅があって、相続人の中の一人がそこに住み続けている場合、遺産分割が成立するまでの間はその自宅は相続人全員の共同財産ですから、そこに住み続けている相続人は、他の相続人からタダで借りているのと同じことになります。
タダで借りることを、法律用語で『使用貸借』といいますが、この場合、必要経費はタダで借りている人が負担するのが原則ですので、自宅に関する固定資産税や火災保険料は、そこに住み続けている相続人が負担するべきでしょう。

なお、相続人が不注意であったために必要となってしまった費用は、その相続人が負担しなければならなくなります(民法885条2項)。
また、遺留分減殺請求によって取り戻した財産からは、遺産の管理や清算のために使った費用を支出する必要はありません(同3項)。

 

遺産の中から支出できる費用、できない費用

遺産の管理や清算のために使った費用として遺産の中から支出できる費用には、以下のようなものがありますが、ここに含まれないものでも遺産の管理や清算に関する費用は、ほとんど一切が含まれます(参考 昭和61年1月28日東京地裁判決)。諸手続きのための交通費なども含まれると考えてよいでしょう。

(1)管理人の選任費用
(2)遺産分割の前提として必要となる、遺産の保存に必要な費用(例:建物の表題登記や保存登記など)
(3)鑑定・換価・弁済などの清算に必要な費用
(4)財産目録の調製に必要な費用
(5)管理・清算のための訴訟費用
(6)遺留分減殺請求によって生じた費用
(7)破産管財人が遺産についてなすべき管理処分に必要な費用、など。

ただし、相続税は、日本では遺産を取得した人が負担する制度になっているため、管理の費用として遺産から差し引くことはできません(参考 昭和58年6月20日大阪高裁決定)。
また、上記のような費用は、遺産から支出することはかまいませんが、相続税を計算する上で必要経費として控除することもできません

 

葬儀費用は遺産の中から支出できるか

葬儀費用を、民法885条にいう『相続財産に関する費用』ということができるかどうか、見解はバラバラです。 この点については、あらためて別の機会に記事を書きます。

 

(注1)相続に関する諸費用がトラブルになる原因の大半は、「領収書が残っていないので信用できない」パターンか、「相談もなく多額の出費をされた」パターンかの、どちらかです。ここでもめてしまうと、最悪の場合には民事訴訟の場で決着をつけるほかありません。どうしてもまとまらなければ、相続債務に準じて、相続分に応じて負担する形になるでしょう。

 

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Q037 わけにくい遺産はどうやって分割するか(現物分割・代償分割・換価分割)

【Question】

亡くなった母の遺産は、母が住んでいた家の他にはわずかな預金しかありません。相続人は私と姉の2人だけで、母の遺言は見つかっていません。
私は年老いた母と同居して面倒を見ておりましたので、できることならばこの家を継いでいきたいと考えているのですが、他家に嫁いだ姉からは、この家を売却してその現金を分割したいと言われています。姉の言う通りにするしかないのでしょうか。

 

【Answer】

遺産分割にはいくつかの方法がありますが、実質的な相続財産が家しかない以上、お姉様が現金による分割を求めて譲らないのであれば、家を売却してその代金を分割するか、あなたが家の所有権を取得する代わりにあなたご自身の財産からお姉様にその分の現金を渡すか、どちらかの方法しかないと考えられます。

亡くなられたお母様の面倒を見ていたとのことですから、現金の分割にあたってはお姉様にその点を考慮してくれるように頼んでみてもいいかもしれません。しかし、裁判上の争いになった場合には、お母様と同居して面倒を見ていただけでは法定相続分の上乗せ(『寄与分』という法定相続分の調整)を認めてもらうことは難しいのが実情です。

 

【Reference】

相続人の誰がどのような遺産を引き継ぐかは、相続人全員が合意する限り、遺産分割協議で自由に決めることができます(Q031 法定相続分と異なる遺産分割協議はできるか)。とはいえ、上記のご相談のように遺産をそのままの形で分割することが困難な場合も多いため、現実の遺産分割では主に次の3つの方法を利用します。

(1)現物分割(げんぶつぶんかつ)

文字通り、個々の相続財産をそのままの形で分割する方法です。
ある特定の相続財産について、相続人のうちの1人が単独で取得する場合もあれば、法定相続分や遺産分割協議でまとまった相続分に応じて共有で取得する場合(共有分割)もあり、遺産分割協議で自由に決めてかまいません。

ただし、家・土地などの不動産を共有の形で分割することは、おすすめしません。権利関係がややこしくなるばかりか、一度不動産を共有名義にしてしまうとこれを単独名義に直すのはなかなか厄介で、『売買』『贈与』『共有物分割』のような形で共有持分権を譲り渡す必要があるのです。そうするとどうしても当事者間での金銭の授受やさまざまな課税、手続き費用を避けることができません。繰り返しますが、不動産の遺産分割をする場合には、共有は避けるようにしてください。

(2)代償分割(だいしょうぶんかつ)

遺産分割によって価値の高い相続財産を取得した相続人が、その他の相続人に対して、その取得した財産の価額と相続分との差額を現金などの自己の資産で支払う分割方法です。
当然のことながら、この方法を使うには、価値の高い相続財産を取得した相続人が差額を支払えるだけの自己資金があることが必要です。現金の代わりに物や権利などを給付してもかまいません。

代償分割は、 特定の相続人が事業用資産を承継する必要があるような場合に利用されることが多いです。

なお、代償金はトラブルを避けるためにも一括払いにするべきですが、分割払いにすることも可能です。ただし、高額な代償金を分割払いにすると代償金を受け取る側の相続人は不安定な立場に置かれますから、代償金の支払いを担保するために不動産担保や連帯保証人による保全措置を検討することも考えられます。

代償分割では、価値の高い相続財産を取得した相続人が支払った代償金は、当然、相続税の計算上は控除の対象とされます。ただし、取得した相続財産を将来売却し、その財産が土地などの譲渡所得を発生させる財産である場合には、譲渡所得税の金額を計算する上では取得費として控除することはできません。

(3)換価分割(かんかぶんかつ)

相続財産を第三者に売却し、現金化して相続人で分けあう方法です。
(1)の現物分割や(2)の代償分割が困難である場合や、高級車のように維持コストが高い相続財産を分割する場合に使いやすい分割方法ですが、売却に伴う仲介手数料などの諸経費や、譲渡所得に対する課税などのコストを慎重に検討する必要があります。

遺産分割協議で相続人全員が合意するならば、換価代金を必ずしも法定相続分で分配する必要はありません。遺産分割の内容をどうするかは相続人の自由ですから、法定相続分とは異なる割合で換価代金を分配しても問題はなく、それによって課税の問題も生じません。

なお、家や土地などの不動産を売却して換価分割する場合には、次のような注意点があります。


(a)不動産登記の決まりによって、
被相続人名義のままでは不動産を売却することができません!

売却する前提として、いったん相続登記をする必要があります。相続登記の方法は次のいずれかの方法によります。

①法定相続分とは異なる割合で換価代金を配分することが遺産分割協議で決まっている場合
→この場合、換価代金の配分割合で共有による相続登記をするのが原則

②法定相続分に応じて換価代金を配分することが遺産分割協議で決まっている場合
→この場合、法定相続分で共有による相続登記をするのが原則

③換価代金の配分については、売却後に決める場合
→この場合、法定相続分で共有による相続登記をするのが原則

④上記①②③いずれの場合でも、便宜的に共同相続人のうち1人の名義としてもかまわない
→共有名義にすると、売却の際の契約や残金決済について共有者全員が関与しなければならず、手続きが面倒です。
そのため、とりあえず共同相続人の1人名義とし、売却に伴う手続きをその相続人だけで執り行わせることができます。
対価を伴わずに不動産の名義変更をすると贈与税の問題が生じるのが一般的ですが、共同相続人ののうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません国税庁質疑応答事例「遺産の換価のための相続登記と贈与税」)。

なお、便宜的に共同相続人のうち1人の名義とした場合、その人だけに譲渡所得税が課税されます。
また、便宜的に共同相続人の1人の名義とするにも、相続登記の際には遺産分割協議書をつけることになりますが、あくまでも『便宜的に』1人の名義にしたという形にしないと税務署から贈与税を指摘されるおそれがあります。遺産分割協議書の記載内容については登記を専門とする司法書士にご相談ください。

 

(b)換価分割では税理士にも相談を!

不動産の換価分割では、売却に際し必ず譲渡所得税の問題が発生します。
もしも相続税がかかる場合には、まず相続財産の評価額で相続税が課税され、次いで売却について譲渡所得税の問題となります(二重課税になりますが、『相続税の取得費加算』によって調整される)。
換価分割は課税関係が複雑であり、譲渡や遺産分割のタイミングによって大きな差が生じる可能性があります。換価分割を行う場合には税理士の支援が不可欠です。

 

(c)小規模宅地特例を受ける場合には、相続税の申告期限まで居住・所有することが要件です!

相続税の申告を要する場合、小規模宅地特例を利用して不動産の評価減を受けることが多いと思います。
この特例を受けるには、相続税の申告期限まで居住・事業継続し、かつ、継続所有することが要件です(配偶者を除く)。
そのため、相続税の申告期限(10ヶ月)を経過するまでは売却できません。

 

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Q038 相続財産の一部だけ遺産分割協議を先行しても良い?

【Question】

父の遺産は主に不動産と預金です。私も含めて兄弟全員が「不動産は後回しにして預金だけでも先に分けたい」と考えているのですが、預金についての遺産分割を先に行い、不動産についての遺産分割を後に行ってもかまわないのでしょうか。

 

【Answer】

相続財産の調査に時間がかかる場合や一部の相続財産を売却して相続税の支払いにあてる場合など、一部の相続財産についてだけ先行して遺産分割すべき合理的理由がある場合には、遺産分割協議を何回かに分けて一部の相続財産についてだけ遺産分割協議をすることが可能です。
このような一部分割は、裁判所の調停・審判手続きでも実際に行われています。

【Reference】

全ての相続財産を一度の遺産分割協議で分割するのが理想ですが、現実には困難なケースもあります。
そこで、遺産分割を2回以上の複数回に分け、特定の財産についてだけの遺産分割を先行させることが判例によって認められています(一部分割)。
相続税の申告が必要な場合や相続人間で意見の食い違いがある場合を除けば、現実の相続手続きでも『自動車だけ』『不動産だけ』の遺産分割協議をし、遺産分割協議書を作成して名義変更手続きをするということは数多く行われています。

相続財産の一部分割によって相続人間に不公平が生じ、それによってもめてしまう可能性があるならば、残りの財産についての遺産分割でその不公平感を調整する必要があります。
遺産分割の内容をどうするかは相続人間で自由に決められますので、この不公平感をどのように解消するかは結局のところ話し合いで解決する他ありません。
ひとつの方法としては、遺産分割の際の財産評価は分割協議時点での時価(実勢価格)でするのが原則ですから、先行して分割した相続財産が残余財産の遺産分割の時点でもなお存在するものとして相続財産全体の評価額を算出して遺産分割協議を行い、一部分割によって配分済みの相続財産評価額を控除して残余財産を分配する、という方法があります。

紛争を回避するため、一部分割を行う際に相続人間で了解した約束事があるならば、一部分割の際の遺産分割協議書にその内容を明記しておくべきです。

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Q039 遺産分割協議の前に、預金の払い戻しはできる?

【Question】

遺産分割協議がまとまるまでには、しばらく時間がかかりそうです。
そこで、預貯金については、私の相続分だけでも先に払い戻しを受けたいと考えているのですが、このような手続きは可能なのでしょうか。

 

【Answer】

歯切れの悪い回答で恐縮ですが、遺産である預貯金について、相続人が金融機関に対してその相続分に応じて個別に払い戻しを請求することは”法律的”には可能でも、現実には金融機関が応じてくれないケースが多いです。

遺産分割協議前に預金を払い戻すには、金融機関所定の依頼書様式に相続人全員で署名捺印し、戸籍謄本・印鑑証明書などの必要書類を添付して請求する必要があります。

もっとも金融機関によっては個別請求に応じてくれるところもありますので(少額な場合など、金額によって応じてくれるところもある)、まずは窓口で確認してみることをおすすめします。

なお、ゆうちょ銀行(郵便局)の場合は相続人からの個別請求に応じてくれています(一部例外あり)。

2016年12月19日補足:最高裁において、預貯金を遺産分割の対象とする判例変更があり、今後個別請求は困難になると思われます。判決内容と実務の運用を確認のうえ、本記事の内容を変更する予定です。

 

【Reference】

※2016年12月19日の最高裁判決により、今後内容の修正を行います。

法律的には預貯金は当然に分割される。しかし・・・

ある人が他の人に対して対して一定の行為をするよう要求できる権利のことを、法律用語で『債権』と言います。
銀行預金がある場合には、預けている人が銀行から預金を払い戻してもらう権利があるので、『預金債権』と言います。

この預金債権は、数量的に分けることができるので『可分債権』である、とされています(反対語は『不可分債権』)。
そして、共同相続される場合には、このような可分債権である預金債権は「相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となる」というのが判例の考え方です(大正9年12月22日大審院判決,昭和29年4月8日最高裁判決,平成16年4月20日最高裁判決等)。

判例の考え方によれば、遺産分割協議前に、相続人が各自の相続分に応じた払い戻しができそうです。
ところが、現実にはこれが大変難しいのです。

 

金融機関が相続人個別の払い戻し請求に応じることはあまりない

「判例でこうなっているのだから、私の相続分だけ預貯金を払い戻してください」と言っても、応じてくれることはほとんどありません。
共同相続の場合個別請求には応じないという特約があるケースもあり、慣行的に相続人個別の払い戻し請求に応じていないケースもあります。
また、払い戻し請求をした相続人が相続欠格によって相続人の地位を失っている可能性や、遺言書によってその預貯金が他の相続人に帰属している可能性もあり、このような場合に払い戻しをしてしまうとあとで問題になりかねません。金融機関が相続人からの個別請求に応じないのは、このようにきちんとした理由があるのです。

したがって、遺産分割協議前に預貯金の払い戻しを求めるには、
(1)金融機関所定の様式に相続人全員で署名捺印して払い戻す
か、または
(2)訴訟を提起する
か、どちらかの方法をとることになります。

もっとも、金融機関によっては、融通を効かせてくれるところもあります。過去の経験では「葬儀費用相当分」とか「50万円以内」などの条件付きで、払い戻しに応じてくれる金融機関がありました。

 

ゆうちょ(郵便局)は、原則として相続人個別の払い戻しに応じてくれる

ゆうちょ銀行(郵便局)の場合はやや特殊で、原則として相続人個別の払い戻しに応じてくれます。
ただし、相続人の一部から個別の払い戻し請求を受けた場合には、他の相続人に通知する仕組みになっています。

ただし、『平成19年10月1日より前に預け入れた定額郵便貯金』については、旧郵便貯金法の規定によって据置期間中は分割払い戻しをすることはできません(参考 平成22年10月8日最高裁判決)。平成19年10月1日とは、いわゆる郵政民営化が始まった日で、この日以降に預け入れた定額郵便貯金ならば分割払い戻しの対象になります。

 

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Q040 遺産分割協議のために相続人全員が集まる必要があるか

【Question】

遺産分割協議をしなければならないのですが、きょうだいが皆遠方に住んでおり、全員集まるのが大変です。
そうは言っても法律の決まりですから、やはり皆で顔を合わせて話し合わないといけないのでしょうか。できれば電話で済ませられるとありがたいのですが。

 

【Answer】

遺産分割協議は、もちろん相続人全員で集まって腹を割って話し合えれば、それに越したことはありません。

しかし、相続人が遠方にいる場合には全員が一度に集まるというのは難しいかもしれません。その場合には何度かに分けて集まっても、電話を利用して話をまとめても、問題はありません。

ただし、集合しなくても相続人全員の意見が一致することが必要で、相続人を一人でも欠いた遺産分割協議は無効です。

 

【Reference】

遺産分割協議と言うと相続人全員が一堂に会して話し合いをしなければならないようなイメージがありますが、一度に全員が集まれないのであれば何度かに分けても良く、電話で話し合っても方法として問題はありません。
(協議がまとまらない場合に利用される家庭裁判所の遺産分割調停手続きでも、新しい家事事件手続法によって電話による調停が可能になりました)

ただし、遺産分割協議の結果を書面にまとめ、相続人全員が署名捺印(実印)したうえ印鑑証明書をつけなければ、不動産の名義変更などができません(注1)。

そのため、電話で遺産分割協議をする場合には、
(1)1通の遺産分割協議書を郵送でやり取りして、持ち回りで署名捺印をする
か、または
(2)『遺産分割協議証明書』という全員同じ内容の書面を人数分用意して、相続人それぞれに郵送して署名捺印してもらう
か、どちらかの方法で書面をととのえる必要があります。

これらの書面への捺印はそれぞれの実印であり、印鑑証明書をつけてもらいますので、郵送で紛失してしまうと大変です。書類の受け渡しを行う際には書留扱いとし、取り扱いに十分注意してください。

また、遺産の中に預貯金があると、その手続きにあたって金融機関所定の様式に相続人全員の署名捺印を求められるケースが少なくありません。
何度も書類のやり取りをするのは面倒ですから、遺産分割協議書(または遺産分割協議証明書)を郵送でやり取りするときには、このような金融機関所定の用紙も一緒に同封しておくようにすれば楽です。

(注1)ワープロソフトなどで遺産分割協議書(または遺産分割協議証明書)を作るときに相続人の住所氏名まで入力してから印刷し、相続人本人に捺印(実印)だけをしてもらう方法でも有効であり、手続き自体は可能です。
ただし紛争の原因になることがありますので、なるべく自筆署名のほうが望ましいと言えます。

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